第394話 ひためぐりバス、ビール園

「♪たーらったたーららたらった♪」と、友里恵が歌う。


パティは「エノケンさんですか」


友里恵「なにそれ?」


パティ「ハハハ」


由香「タラちゃんかいな」



友里恵「似合わなー」



由香「うるさい」



パティ「車内ではお静かに」



運転手さん「だーれもおらんけん、平気じゃ」と、にこにこ。



友里恵「すみませんねー田舎モノで」



運転手さんもははは、と笑って川沿いを見下ろす橋を越えて。



「あー、これか、迂回の」と、友里恵。



「迂回×鵜飼〇」由香(^^)。


パティ「こまかい」



由香「ハハハ」



大きな交差点、左にウィンカー。手前から・・・・歩道に自転車がいないかをよく観ておく。

バスは長いので。

左ミラーもよく見ないと、ミニバイクが挟まったりする。


まあ、ひためぐりバスは小型なので、そんなに気にしなくてもいいのだけれど。




クラシックカーに似せたフェンダーの上にミラー。


そっと、左に寄せて。


青信号。


結構、前に出してから曲がる。

左の道は狭いので、乗用車がいないと

割と前に出せる。


日田の人はいい人なので、バスが曲がれるように気を使ってくれる。

まあ、だからと言って、譲られるのを待っているような運転×

である。


曲がる前から状況を良く見て、左折する左の間隔を決めるのである。



ベテランのこの運転手さんは、さっ、と曲がる。

道は結構細い、田舎道。




たんぼの中に、新しいメの家が建って。

ふつーの田舎。


その中の停留所を走る。コミュニティバスだけど、丘の上のビール園で終点。

折り返しが40分だから・・・・。


御用のある方は、誰も乗らない(^^)。


まあ、時間が昼下がりだし。



パティは「由布院と似てるね」


友里恵「パティは、由布院で生まれたの?」



パティ「宮崎です。海のそば。ちっちゃいころにこっちへ来て。」



由香は「愛紗と一緒かな、宮崎だと」



パティ「そうかもしれないですね。でもー。赤ちゃんだったから何もみてないんです」






ひためぐりバスは、丘のそばで急に、綺麗な道になったその道を走り

丘を登り始めた。



「あ、こっちがメイン」と、友里恵は左を指差して。



さっきの鵜飼いの川の方から、少し広い道が来ていて

この、綺麗な道につながっている。


由香「なーるほど。路線バスらしいね」と・・・。






その「路線バス」の運転手になったばかりの瀬川千秋は

大岡山の営業所から出て、市民病院前のバスロータリーにバスを付けた。


路線教習で、まだ、表示は「回送」になっていて。

制服ではなく、青い整備服。


お客さんが間違えないようにと。



古参指導員、森が一番前の1人席に座って「そう。ちょっと狭く見えるけど大丈夫」



千秋は、たしかに狭いと思った。

高い、バスの運転台から見ると地上は遠いので狭く見える。

でも実際は、ロータリーはバスが2台通れるだけの幅がある。

ちょっと、こわごわ・・・・と言う感じでいすゞエルガミオ、4762号の左後輪を

道路の左側端につけたまま、前・オーバーハングを出して

左に目一杯、ハンドルを切った。


それでも、後輪はかなり前に出て

大回りしてロータリーに入る。



森は「うん。最初はそれでもいいね。その内慣れれば

もっと手前からゆっくり左に切ればいい。

もう少し、道路の左端から離れてね」



千秋は「はい」と言ってはみたものの

なれない7mバスの大きさを持て余している。

ハンドルを一杯回して、元に戻して。


ロータリーは右に中央があるから、左・オーバーハングが

バス停のある舗道に当たらないように、直進して

そーっと、右に切って。沿わせる。


・・・・のだが、結構、左が開いてしまう。



森は「うん、そのくらいはいいよ。自分のバスならね、慣れれば解るから。

ハンドルを右に切る時、バスの左前がこの歩道を舐めるようにしてあげれば」



千秋は「はい」と言うのが精一杯で。

どこにも当たらないだろうか、バスが。

そう、あちこちを確認しながら前に走らせるだけ、だった。




それでも、一応バス停に付けて。



森は「ホントならね、ドアを開けるんだけど。右手のスイッチで。

その、ステンレスの棒。2本あるけどね。それで。

今は、いいよ。開けると間違えて乗る人がいるから」



と・・・・。バス停についた4762、田村の路線用担当車である。

この所、観光の助っ人ドライブが多い田村である。



この間も、友里恵を乗せて日帰り仕業に行っていた。

ほんの一週間前のこと・・・。

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