第324話 んだ

友里絵は、理沙に尋ねる「国鉄に入りたーい!って

ずっと思ってたの?」



理沙は「そうでもないんだけど・・・おじいちゃんが機関士だったから。

なんとなくね。後継ぎみたいな感じで」


ジェットバスから離れて。


友里絵は「男の子いなかったんだ」


少し、水流の弱いジェットバスに当たって。



理沙は「弟が居るけど・・・機関士向きじゃない、って

おじいちゃんが言って」



友里絵は「向き不向き、あるからね。」




理沙は「そう。弟は、ルールに沿うよりも、ルール作る方だから」



友里絵「自分ルールとか」(^^)。



理沙は、笑って。笑顔になると、まんまるで。


「そういうのじゃなくて。理系なのかな」



友里絵「うんうん。意味は解ってたけど」(^^)。



理沙「あたしもね。高校の頃は反発してたから。そういうものだと思うけど。


「レールの上を走る人生なんてイヤ」

って言ったり。


そしたら、おじいちゃんは、それから言わなくなって。私に。何も。」


友里絵は「それも淋しいね」



理沙は、明るく「それでもあたしは、国鉄に入ろうとは思ってたんだけど。


叔父がね、国鉄に居て。

「大学出て管理職になった方がいい」って。


そうかなぁ、と思ってたら・・・・。おじいちゃんが定年になって。

すぐ死んじゃって」と、明るく言う。



友里絵は「・・・・そうなんだ、なんか、ごめんね。思い出させちゃって」


理沙は「ううん、あたしこそ。誰かに言いたかったの。

だから。大学行くの止めて。国鉄のね。手職から入って。」



友里絵「手?」



理沙「そう。手が付くのは、一番軽い仕事なの。アルバイトみたいなものね。

踏み切り警手とか、庫内手とか。

その上が、掛職。

出札掛とか、改札掛とか。」




友里絵は「ふつーの就職じゃなくて?」




理沙は「ホラ、学区があって。推薦枠があるから。高卒って。

高校3年の秋になって、あたしが割り込むわけにも行かなかったから。」




友里絵は「ふーん。じゃ、機関車を磨いてたりとか?」



理沙は「そう。でもね。女の子だから大事にされて。

お洗濯とか、お掃除とか。ご飯作ってあげたり。

そういう仕事してあげると喜んでくれて。機関助手さんとか、機関士さんとか。

それで登用試験受けて。」


友里絵は「機関助手になったの?」



理沙は「そのつもりだったけど・・・・蒸気機関車は無理だろうって

区長の判断で。一旦は駅務に回されて。」



友里絵は「ふーん。愛紗と似てるな」



理沙は「ああ、その・・・ドライバーの子?」


友里絵「そう。可愛い子だから危ないって。会社が」



理沙「あるね。わたしも車掌やったけど・・・そういう話も聞いた事ある。

都会の方ね。青森じゃなかったけど・・・その、愛紗ちゃんと似てるかな」




友里絵「そーなんだよね。思ったとおりに行かないよ。仕事って」



理沙「そう!だから、あたしも、どうしても機関車乗りたい!って思ってた。

ホラ、おじいちゃんのことがあったから。後を継いであげなきゃ。って」



友里絵「それで、どうしたの?」


理沙は「そのまま、気動車の運転士になっても良かったけど・・・やっぱり

機関車、って思って。


その頃はもう、青森もディーゼルだったから。


機関区長も「ジーゼルだば、へいきだべ」

(^^)」



友里絵「いいね。その・・・「だべ」 」(^^)。


理沙「んだんだ。」


友里絵も「んだなー」と、合わせて。



ふたり、笑った。


木曜のKKR由布院。大浴場は静か。


女の人で、木曜から温泉に来てる人は少ないみたい。



出張のおじさんは多いけど。




友里絵は「それで、九州に?」


理沙「一旦は、青森で機関士になったんだけど・・・ディーゼルカーの乗務が多くて。

時々ね、客車列車の牽引があったけど。

貨物はやっぱり、乗せてくれないの。女の貨物機関士って前例ないから」



友里絵「そうなんだ」




理沙は「それで・・・・奥羽線も電車になる事が決まって。

電気は免許が違うから、取り直さないと行けないし。

九州はディーゼルがまだまだあるから。それでこっちに来たの」

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