第325話 心構え

友里絵は思う。


そういう・・・「誰かの為に」がある人は、楽だ。


それが「愛」なのかな?なんていう風にも思う。


愛紗にも、自分にもないから、どうでもいいのかな。そんな風にも。


それで「理沙ちゃんは、おじいちゃんが居なくても機関士になった?」


理沙は「うーん、どうだろ・・・・わかんない。でもね。やるからには

事故を絶対に起こさない。くらいの気持で居ないとダメじゃない?

ヘタすると人が死ぬし。

だから、その・・・愛紗さんも。迷ってるくらいなら止めといた方がいいと

思う。

バスの方が危ないよ。人が歩いてるとこ走るんだから」




友里絵は「うん。わたしもね。ドライバーになろうかと思ってたけど・・・

そういわれると、止めた方がいいのかなって」



理沙は、笑顔になって「うん。あたしの言う事なんか気にしないで。

余計な事言ったかもしれない。でも、死亡事故起こしたら

悔やんでも遅い」



友里絵は、思う。そう。あたしも・・・・甘かった。

なってからじゃ遅いんだ。

ガイドが辛いからって、ドライバーに逃げるなんて根性じゃ、ダメだ。


「なんか、いい事聞いたなー。」



理沙は「ううん、いいの。あたしも、バスは知らないもん」と、にっこり。


お風呂でゆっくり浸かりすぎて。「あったまったねー」と。




友里絵も、お風呂からあがって。


タオルで体を拭いて。「女って面倒だな」と。



理沙は「ああ、部品が多いし」と、体を拭きながら。



友里絵は「それもあるけど、男だったら悩まずに一生仕事できるのに」



理沙は「ああ、そっち?そうね。でも・・・女だってさ、いいんじゃない?それで」



髪を、ドライヤーで乾かして。



たっぷりした、茶色の髪。ウエーブが効いていて。女らしい。



友里絵は「そーだよね。男寄ってくるからなぁ」



理沙は「それはー、可愛いからでしょ」と。


さっきの黒いズボンを履いて。

シャツを表にだして。



友里絵は「その服・・・ディーゼルカーに乗る時?」



理沙は「そう。明日もね。「ゆふいんの森」で。11:30かな。」



友里絵は「あー。その列車に乗務する子。一緒。」


理沙は「えー、そうなんだ。偶然」と、にこにこ。



友里絵は「お部屋、来る?」と言ったけど、理沙は


「うん、ちょっとだけ。明日乗務だし。ゆっくり寝ないと。」



木曜の夜。

土曜も日曜もないのは、バスも同じだけど。


運転する人は、やっぱり・・責任感が違うなぁと、そう思う友里絵だったり。



お風呂を上がって。もう9時近い。



理沙は「お部屋寄って、浴衣着てくる」(^^)。



友里絵は「一緒に行くよ。どこ?」




理沙は「303」と・・・。


一緒に、お風呂の前にあるエレベータの△を押して。



エレベータが下りてきて。3・・・2・・・1。



エレベータの扉が開いて。


「あ」降りてきたのは愛紗だった。



友里絵は「あ」(^^)。


愛紗は、理沙に、お辞儀をして。



友里絵「愛紗ー、橋本理沙ちゃん。機関士なんだよー」と、にこにこ。


理沙は「こんばんは。愛紗さん。」と、にっこり。


愛紗も「こんばんは」と、にっこり。



友里絵は「愛紗、お風呂でしょ?」と、言ったら


愛紗は「ううん、友里絵ちゃん遅いから・・・オフロでのぼせてるのかなと思って」

と、にっこり。(^^)。



友里絵はにっこり「だいじょぶだいじょぶ。理沙ちゃんとオハナシしてて。」



愛紗は「そうなんだ、よかった」と。



理沙は、にこにこ「優しいね」と。




みんな、一緒にエレベータで3階へ。



愛紗は「3階?」



友里絵は「うん、理沙ちゃんのお部屋」



愛紗は、あーそっか。と。



エレベータを降りて。回廊は一緒。


お部屋の扉も一緒だけど、玄関を入ると和室になってて。



友里絵は「あー、畳のお部屋、いいね」



理沙は「じゃ、着替えるから、先に行ってて。」



友里絵は「うん、4階。408だから」と言って


303号を出て。



愛紗とふたり、回廊を歩いて。


友里絵は明るく「あの理沙ちゃんねー、苦労人で。高校出てから

国鉄に手職から入って。それで運転士になったんだって」



愛紗は「明るくて、叩き上げっぽくないね」と、にこにこ。



友里絵は、言おうかどうしようかと思ったけど。


「運転って、事故が起きたらタイヘンだから、って

覚悟がある感じ」と・・・。


理沙の言葉はそのまま伝えずに、友里絵自身の印象を伝えた。


愛紗は、なんとなくニュアンスを感じ取り・・・。


「そうね。わたしは・・・そんなのないかも」


自分が、そうしたいから。

そんな事が中心だったような、そんな気もする。



責任、なんて・・・あんまり感じていなかった。




有馬さんや、野田さんの言う事は、もっともなのかも・・・・。



そんな風に、思う愛紗だった。






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