第307話 KKR由布院

まゆまゆちゃんも、よく知っている曲。


そばにいなくても、いつも友達だよ、

いつだって。


そういう、歌。



思い出・・・。


そう・・・国鉄の試験の時も、

新人研修の時も。

乗務員研修の時も、いつも一緒で。



「ありがとう・・・・。」と。まゆまゆちゃんは思う。




車掌区で、制服を貰って

初めて着替えた、更衣室の時・・・。


あんまり背丈が違うので「同じお名前なのに・・。」と、まゆまゆちゃんが言うと。


さかまゆちゃんは「バレーやれば、大きくなるよ」と。にこにこ。


「でもね、あんまり大きいと男の子にモテないよ」とも。



「そーぉ?すごくモテそうだけど」と、言うと。



ぜんぜん、と手を振って。


黒い制服を着て、バッヂをつけて。

帽子をかぶると、かっこよかったなあ、さかまゆ・・・ちゃん。(^^)。



「ハイヒールいらないね」と、言うと・・・。



「ううん、脚短いから。かっこわるいの」と、にこにこしてる

ひとえまぶた、長いまつげ。

白い頬に掛かる、まっすぐそろった髪。


「綺麗だな」と思ったっけ。





「一緒に乗務できるといいなぁ」と思うけど・・・区が違うし。

2人乗務ってマレ。


でも・・・「遠くにいても、いつも友達」って歌を聞くと

なんとなく、元気になれるなって

まゆまゆは思う。



「あしたも、がんばろ」


そう思えた。





KKR由布院のロビーは、広くて。

プラネタリウムみたいに天井がドームになってて。


エントランスの前、車が入ってくるところまで全部細かいモザイクタイル張りで。



友里絵は「モザイクー」


由香は「興奮すんなよ」



友里絵「するかっ!」


菜由は「ハハハ」


綺麗なガラスの自動ドア・エントランス。



「ハイソー」と、友里絵。



愛紗は「ホント。南阿蘇もそうだったけど・・・ここは、ゴージャスな」



パティが、由布見通りの方から掛けてきて「あー、待ったかなー」



長い脚は白くて。ひざ丈よりちょっと上くらいのスカートは、コットンの薄いブルー。

だけど、ひらひら。


白いブラウス。大きな帽子。



友里絵は「かーわいい!」と、抱きついた。


パティは「ぁん☆」と、ちょっとびっくり。




由香は「いいねー、かわいい。ジーンズも良かったけど」と。



パティは「ハイ。お仕事終わったし」と、にこにこ。


フロンドの髪、ふわふわ、青い瞳は透き通るようで。



愛紗は「女優さんみたいね。ホント」


菜由は「いけいけ」



パティは「イケイケ?レナウンガール?」



由香「それはさすがに・・誰もわからんだろ」



友里絵「ハハハ」




フロントには、黒いスーツに蝶ネクタイのフロントマン。



「いらっしゃいませ」と、スマート。



友里絵は「ディスコみたい」


由香「まあ、キミの連想はそんなトコだろーな」



愛紗は、チェック・インを済ませている。「あの、国鉄の日野です」



フロントマンは「お待ちいたしておりました」



と、静かに。



「お連れ様ですか?」と、フロントマン。



パティと、それと・・・熊本車掌区のふたり。さかまゆちゃんと、ともちゃん。



愛紗は「ハイ。予約は別ですけど・・・・」



さかまゆちゃん「乗務員です、熊本車掌区の、坂倉、鈴木です」


フロントマンは、カウンターの下の予約表を見て「はい。乗務員宿泊ですね」


パティは「大分区、日高です・・・日野さんと一緒に、ステイします」



フロントマンは「かしこまりました・・・それではお部屋をスイッチして。

408、407、406、405で如何でしょうか?

川沿いで、由布岳が良く見えるお部屋です。

日高さまは、いずれかのお部屋にステイなさって下さい。」



みんな「ありがとうございます」。


愛紗は代表して、キーを受け取った。


ブロンズの、重厚そうなキーホルダー。



「さ、いこっか」と、愛紗。



高級ホテルっぽいけれど、部屋の案内はしない。

そこがKKR、会員専用らしいところ。




フロントの隣に廊下があって・・・・全部絨毯敷きなのも高級。


汚れるし、雨の日は手間が掛かるけれど

静粛性の為にそうしている。


国鉄の寝台車と同じ理由である。



木曜とあって、そろそろウィークエンド・・・・と言う雰囲気で

休暇なのか、明け公休なのか


職員ふうのひとたちが、ぱらぱら泊まりに来ている。



寝台車と同じ「工」の字の浴衣。だけど羽織がついていて。



廊下を挟んで、エレベータ。


そのボタンを押すと、扉が開く。

「さ・・・乗れるかな、7人」と、愛紗



友里絵は「大丈夫だよ、定員12人って書いてある」


目がいい。



由香は「友里絵はおこちゃまだから、半分」



パティは「あたしはふたり?」



菜由は「ないない」と、手を振って。



笑顔で、みんな。エレベータに乗った。




エレベータの内装は、なんとなく・・・金箔張りみたいに見える。


友里絵は「ホンモノかな、これ」と、かりかり。


由香「アホ!映ってるぞ」と、セキュリティカメラを指差す。


友里絵はにっこり「ぴーす」と、Vサイン。



菜由は「ははは」。


ともちゃんは「サインはV,ですか?」



友里絵は「ひとりじかんさー」と、エレベータの中で飛び跳ねたので


由香が「どうどう、どう・・・・。」と、肩を抑えた。



友里絵は「お馬さんかいな」



菜由は「お友達でしょ」



ハハハ、と楽しく・・・・4階に着いた。





中庭に面して、回廊になっているこのKKR。

真ん中がお庭。


「贅沢な作りだね」と、菜由。

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