第306話 ふたりは友達だもの

一緒に河原を歩きながら、さかまゆちゃんは思い出していた。




「最初に、まゆまゆとあったのは・・・。」




そう、国鉄の採用試験だった。






学区別推薦、と言って


高校別に振り分けられた枠だったから


まず、落ちる事は無い試験。


それでも結構緊張していて。






「ともちゃんと一緒だったから、そんなに・・・は。」




緊張していなかったけど。




熊本駅の近くの、鉄道管理局の建物は


お城に近かったので




時々、通学しながら眺めてはいた。




石造りのふるーい建物で


「博物館かな?」なんて思いながら


路面電車から眺めたり。








いざ試験となると、それでもちょっと・・・・。




制服、しわじゃないかな?


髪の毛、きちんとしてるかな?




そんなことを気にしていたり。




ともちゃんもやっぱり、いつもより口数が少なくて。




その、石造りの門をくぐろうとした時、


まゆまゆちゃんに会ったんだっけ(^^)。






いまより、すこしちいさく見えたけど。




にこにこしてて「あの・・・受験ですか?」






わたしは「はい!」と、いつも、バレーの練習の時みたいに


大きな声で言ったんで。




まゆまゆちゃんは、ちょっと驚いて、くすっ、と笑って。




わたしも、ともちゃんも、一緒に笑ったの。






まばゆいくらい、可愛かったな・・。






管理局の建物は、天井が高くて、大きくて。




博物館、みたいだと思ってた通りだったっけ。






扉は、おもーい木の扉で。柿渋色、みたいに塗られていて。






「採用試験会場」とだけ、書かれた紙が張ってあったっけ。






受付の職員さんが「おはようございます。高校の推薦状と内申書を」と言うので




私は「はい」と、渡して。






「坂倉真由美さん」と言われて。お返事。




そのあと、ともが渡して。


「鈴木朋恵さん」と。


ともは、きれいな声でお返事。




まゆまゆが渡して。


「日光真由美さん」と、言ったので






私、「あ、おんなじだね!」と、言ってしまって。






受付のお姉さん、にっこり。「皆さんは、この廊下を行って奥のお部屋で


待っていて下さい。順番に面接を致します」と。






「はい」と、私達は・・・・。


しずしずと廊下を歩いて行って。




緑深い、お城のようなその建物の中を行ったんだっけ。






朝早かったから、受験生はそんなに居なくて。




その、奥の方、窓際の席に


後ろから座って。




学校みたいな机と椅子があって、なんとなくホッとして。






まゆまゆとわたしは、並んで座って。




静かにお話。


わたしは「ね、日光さんも真由美さんなのね」




まゆまゆは「おんなじ」と、にっこり。




それだけで、なんだか、和めたな・・・・。






ともちゃんは「じゃ、呼ぶときに間違えるね」と、にっこり。




ほんと、と。わたしたちはにっこり(^^)・・・・。












・・・そんな、出会いを思い出していて。




白滝川の畔を歩いていて。




友里絵ちゃんが、ももちゃんと遊んで(^^)。






ふんわり、していたさかまゆちゃんだった。






友里絵が、いきなり「あ、お馬さん!」と言うので


さかまゆちゃんは、我に帰って。






「え?」と・・・。見ると。




辻馬車のお馬さんが、これから牧場に帰るところで


馬車を外してもらって、お馬さん用の車に乗るところだった。






友里絵を見つけて、お馬さんは近くに来て。




ぱかぱか。




かがんで。


大きなお口で、友里絵の肩を、ぱくっ。






友里絵は「これ!だめー。草じゃない」




友里絵の着てたシャツは、青かった(^^)。






由香は「美味しそうだったのかな」






お馬さんは、笑ってるみたいに。


口を離して。






友里絵は、大きなお顔をなでなで。「よーしよし、いいこいいこ」






愛紗は「お馬さんも好きなのね」






菜由は「自然児だなぁ」






パティは「乗っけてもらえばいいですね」






友里絵は、またごうとしたけど「ちょっとムリー」




由香は「そりゃそうだよ。鞍がないもん」と。笑った。






お馬さんは、首をかがめて


友里絵になでなでしてもらってると


嬉しいみたい。






友里絵は「ニンジンないよ」















「やっぱりデンワしてみよう。ともちゃん、先行ってて」と、さかまゆちゃん。




ともちゃん「わかった。ロビーで待ってるね」








さかまゆちゃんは、バッグから電話を取り出して


まゆまゆちゃんに電話を掛けた。








♪call.......


♪call.......


♪call.......




かちゃり。















人吉・日光家。


まゆまゆは、自分の部屋で


涙しながら眠ってしまっていた。








♪ハイケンスのセレナーデ♪


♪ハイケンスのセレナーデ♪




電話が鳴っているのに気づいて、起きた。




「あ、もしもし・・・さかまゆー。どこ?いま?」


と、元気なふりをしたまゆまゆだったけど。








さかまゆちゃんは「うん、今由布院。友里絵さんたちと一緒にごはんなの。


ねえ、まゆまゆ・・・・泣いてたの?」






まゆまゆは、瞼を擦って「ううん、大丈夫。わたしの事は、心配しないで?」


と、明るい声を出したけど、その、親友の気遣いが


何より嬉しくて。




また、涙・・・・。






さかまゆちゃんは「・・・どんなこと、あったって。わたしは


あなたの友達だから。つらい事あったら、言ってね。


いつだって、飛んで行く。あなたのところに。


だから、ね。だいじょうぶだよ。それだけ。


あ、そうそう。あとでメールするね。わたしの気持、みたいな曲だから。


じゃね。ゆっくり寝てね。」






まゆまゆちゃんは「ありがと」と、電話を切った。








♪カノン♪




さかまゆちゃんから、メール。






ーーこれ。聞いてね(^^)---。






さかまゆちゃんが示したのは


you've got a friend /Carole king だった。




音楽が好きな、まゆまゆちゃんだから。




その気持はよくつたわる・・・かな?・・・。








まゆまゆちゃんは、携帯電話を胸に抱いて




「ありがと・・・・さかまゆ・・・(^^)。」


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