第144話 パリじゃん?

銀行の前にスーパーがあって。

そこに入ってみる。


中は結構広い。入り口のそばにエプロンとか、調理小物とかのアウトレット。

奥の方、右手から青果、ウェット食料品、お惣菜、奥がお魚、お肉。

ぐるっと回って左手に飲み物、お弁当、などなど。

真ん中にパン。


「パリジャン?」横須賀弁かなー。と、友里絵。


「どして。」と、菜由。


「パリじゃん」と、友里絵。


なるほど、と。由香。


「フランス語かしら。」と、愛紗。「男の人、みたいな意味だったかな」


「さっすがー。やっぱり違うなぁ」と、友里絵。


愛紗は「そんなことないよ、一緒」と。


菜由は「麻里恵さんと似てる感じ。」


愛紗は

「そんなことないって。」


由香は「麻里恵さん、シングルかなぁ。」


友里絵「みたいね。あの人なら、タマちゃんとも釣り合うね。」


菜由も「そだね。年もだいたい近いし。」




愛紗もそう思う。別に・・・・その話題が嫌ではなかったから




・・・・・私は別に、深町さんに恋しているのではないのかな・・・・。




なんてふうにも、思った。気持って面白い。そう思う。

風向きみたいによく変わる。




・・・友里絵ちゃんはどうなのかな?なんて思ったりもしたけれど

気にしても仕方ないから、ヤメタ(笑)。





スーパーで、いろいろ、各々買ってきて。


友里絵は、さっきの「パリジャン」をひとつ。



由香が「なんで、フランスパンなんて買うんだよー。これからご飯じゃん。」



「うん、日持ちするからね、いいんだって、旅に。お水とね」と、友里絵。



菜由が「誰に聞いたの?」


友里絵「タマちゃん」


由香「キミの話しはタマちゃん絡みが多いなー。」


友里絵はにこにこ「うん。思い出多いし。」


由香「そっかー。あの頃楽しかったもんねー。」



友里絵「そーだよねー。あの、クリスマスの時も。

みんなでサンタさんの格好して。」



菜由「楽しそう」



「タマちゃんが、間違えてあたしの衣装を着ちゃって『それ、あたしのー』って。

ごめんごめん、って変えてくれたんだけど。

でも、なんとなく、着られちゃった衣装だけど、嫌じゃなかったなー。」



と、友里絵。




「気持ってそうだよね」と、愛紗。



「うん、そうかも。クリスマスになる随分前にね、タマちゃんに聞いたんだ。

『あたしからね、マフラー貰ったら嬉しいと思うかな』って。」


と、友里絵、ちょっと恥ずかしそうに想い出。



「かわいいね」と、菜由。「で、なんて言われた?」




「嬉しいと思うよ、きっと。」だって。 と、友里絵。



「わかってないなー。」と、由香。「でも、なんか可愛いね。」




友里絵は「だからね、『もし、貰ってくれなかったら、マフラー。

貰ってくれる?」って。」




愛紗「友里絵ちゃんかわいい。」





友里絵「えへへ。」と、ちょっと頬染めて。「楽しかった。ずーっとあのままで良かった。」





そういうものだね、と、愛紗も思う。

お金とか、そういうのはどうでもいいんだよね。

すてきな瞬間が、あれば。




「麻里恵さんがタマちゃんと結婚したらさ、深町麻里恵になるのかな?」と、由香。

「お婿さんだったりして」と、友里絵。



「ありそうだね。財閥だもんね」と、菜由。

「学生の頃、やらなかった?好きな人の苗字と自分の名前、書いたり。」と、愛紗。



「あー、やったやった。なつかしー。」と、友里絵。

「誰かに見られちゃったりして」と、由香。



「愛紗って可愛い苗字だからさ、変わるの嫌でしょ?」と、由香。


愛紗は「考えた事もなかった」 実際、そうだった。(笑)。

あんまり、ロマンティックな人でもなかったりする。最近は。


バスのような、大きな機械をひとりで動かす、達成感。

それは独特なものだし、乗り心地も独特。

雲に乗っているかのようでもあり、とても強い味方が

自分を護ってくれている、そんな幻想。


それは、バス・ドライバーにだけある、気持だったりする。

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