第145話 ニッポンのセコ

さっき、偶然乗ることになったバス、いすゞLR。


7mの車体、2.5mの幅。重さ8t。

直列6気筒8Lのディーゼルエンジンの振動。

それらが、運転席の自分の気持とひとつになる。


動いている間は、その大きさ・重さが自分の体になる。


だから、降りて乗用車に乗ると、なんか小さくて変に感じるものだった。



「でもさ、愛紗ってすごいよね。初めて乗ったバスなのに

すいすい走れて。」と、菜由。



「乗ったことあるバスだったし・・・それにね。ちょっと走るだけなら

いいんだけど、仕事だと同じことを一日中するから、

間違えるんだって。」と、愛紗。それは指導運転士の森に聞いた話だ。



「そっかー。それで指差すんだね」と、友里絵。



「そう、でも、あれも習慣ですると、ホントに見てないんだって。」と、由香。



4人は、スーパーから

駅の方へと歩きながら。

月曜だから、静かな町。


そろそろ、学生たちが帰宅し始める頃だ。



旅は、平日がいい。



「事故、あるものね。」と、菜由。



「タマちゃんだって、ドアでおばあちゃんをはさんじゃったって言ってたな」と、友里絵。



その話は聞いた事がある愛紗。



日産の中扉車は、いすゞのような光電管センサーでなく

バスの床、入り口にスイッチがあり

それを踏むとドアが閉じない、そういうインターロックシステムがあったが・・・。


それも、隠しスイッチで

ロックを切る事が出来る。(違法である)。



そのことを知らない深町が、悪戯をされて。

中扉から駆け込み乗車をしてきたおばあさんを挟んでしまった、と言うのだった。



怪我は無かったので、とても優しいおばあちゃんで


許してくれたので、報告をしなかった。



ところが、後日。

岩市の手先になっている勝間田と言う運転手が、その話を知り

おばあさんに「会社に言えばお金が出る」と言ったので


そのおばあさんは、会社に電話をした。



電話を受けたのが野田だったので幸いした。

彼の人柄で。おばあさんはクレーマーにならずに済んだ。


有馬と深町が、おばあさんに謝りに言って、解決したのだが・・・。



画策したのは、その勝間田か岩市だろうと、会社は睨んだ。


結果、勝間田も岩市も、今、会社には居ない。




そういう世界である。私怨で、事故を起こさせるなど

言語道断なのだ。



事故扱いになれば、会社の損失である。



その、隠しスイッチを切ったのも・・・・たぶん、彼らの悪戯なのだろうと。

隠しスイッチを付けたのも、違法なのだから。














「ねね、あのスーパーって麻里恵さんが専務」と、友里絵。


菜由「そうじゃない?」



友里絵「じゃーさ、あの名刺だせばタダになったかも」



由香「せこ」



「瀬古、がんばれ!ニッポンの瀬古!もうすぐだ!」と、友里絵。泳ぐまね。



「オリンピックかいな、水泳とちがうだろ」と、由香。




「あれそうだっけ」と、友里絵。




菜由「マラソンだっけ」



友里絵「いやっ!マラだって」と、恥らう振り(笑)




愛紗「マラってなに?」



由香「あ、いやいや。クラシックの大作曲家」



菜由「マーラーね。鎮魂歌とか」



友里絵「きゃっ、チンこんかん」と、オーバーに恥らうふり。



「恥らう顔かい。それにちがうだろ、ちんこんかんじゃないぞ。鎮魂歌。」と、由香。



「さーすがー、学あるなぁ、高卒芸人」と、友里絵。


「誰が芸人なんだよ」と、由香も笑う。





「いまの愛紗がやったら面白いかも」と、友里絵。



「え?わたしが?」と、愛紗。



「れっつごーミミズ3匹」と、友里絵。


「ミミズはよせって」と、由香。



なんで?と。愛紗は解らない。

菜由もわからない(笑)。





「じゅんでーす」友里絵は愛紗の左に立って。

「ちょうさくでーす」と、由香は右。


真ん中の愛紗は「え?なに?」



友里絵は「みなみはるおでございます、って言うの」


愛紗は「みなみはるおでございます?」



由香は「そうすっと、両側からほっぺたをはたくの」



愛紗は「あ、なんかみたことある」と、にこにこ。



由香「愛紗じゃやっぱ、かわいそうだよ」



友里絵「あたしにはやったくせにー。」



菜由「ああ、なんか・・・小学校だったかな。男の子たちがやってたような」



友里絵「あたしら男かいな」と、笑う。



由香「中身はそうかも」



友里絵「中身?そーかなー」と、スカートめくってパンツの中みたり(笑)



「こら、駅前でそんなことするな!」と、由香。



友里絵は「いいじゃん、ただで見れて嬉しいでしょ、ねー」と。

遠くにいた少年に(笑)。






「どこまで本気なんだか」と、菜由 (笑)。


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