第101話 560A、西鹿児島、場内進行!

ワゴン・サービスが、楽しい旅をしている4人の間を

通りすぎる。


「ごめんください」と、にこやかなCA。


ふんわりしていて、モデルさんふうではなく

親しみのある感じ。



車掌さんと同じ黒いスーツのスラックスで、エプロンに替えて

ジャケットは、乗務員室にあるのだろうか。




通りすぎたあと、由香は友里絵に「ふつうの子もいるね」



友里絵は、「うん。あたしにも出来るかも」



婦人は「みんな、とてもかわいいわ。ガイドさんらしい」



菜由は「そうですか?」


婦人はにこにこ、頷く。



「うれしいな」と、友里絵もにこにこ。



つばめ560号は、速度を上げる。




「タマちゃんが辞めちゃっても、バス会社に残ってるのね。」と、婦人。



友里絵は「それは・・・なんとなく。時々遊びに来るし、タマちゃん。」



愛紗も、見覚えがある。


楽器を持って、バスの駐車場で吹いたり。

オートバイに乗ってきたり。


ラジコンカーを持って、走らせたり。


楽しそうで、運転手さん仲間の休憩時間にお話ししたり。



細川は「おお、タマ、帰ってきたかー。」


なんて言って、にこにこ。


有馬も「いつ帰ってくる」



ただ、野田だけは「オマエは戻ってくるな。そっちで頑張れ」




そんな情景を、遠くで見ていた愛紗であった。ほんの、少し前の事だけれども。




温かい、職場。




そういう人たちと一緒に居たい。 と言う気持だったのかも。






右手の車窓には、きらきら光る海辺の風景が見え隠れ。




「あと何分くらい?」と、友里絵は愛紗に聞く。



物思いに耽っていた愛紗は、「え、あ、30分くらいじゃない?」



由香は「まーた、オトメちゃんしてたの?」と、にこにこ。



愛紗は「ううん、なんとなく・・・大岡山の事を思い出してたの」




菜由は「いい人たちだもんね。有馬さんも、野田さんも。みんなも。」



友里絵は「うん。ほんと。それで辞めないのかな、あたしも。」





ほんの30分。




ーーまもなく、終点、西鹿児島ですーー。と、きれいな女声で

アナウンス。




ladies and gentlemen, we will arrive "nishi-kagoshima"terminal soon.

preese change to "kagoshima-line" , "ibusuki-makurazaki-line". thank you.



「あ、もう着いちゃうね。」と、友里絵。


婦人は「これから指宿ね。5時には着くかしら。何か、こちらで困った事があったら

いらっしゃいね」と、電話番号を友里絵に伝えた。


友里絵は、ストラップにマスコットがいっぱいついている携帯から、電話を掛けて。


「それ、あたしの番号ー。」と、にこにこ。







列車は、ゆっくりゆっくり、終着駅に着く。

駅は高架になっていて、行き止まり。

真下が鹿児島本線のホーム。


窓から桜島が見える。ふわふわと煙がたなびいていて。

のどかな雰囲気。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る