第84話 12D、由布院、定発!

友里絵は、楽しそうに「あそこにね、大きなケージがあるの。ラブラちゃんがいてねー、大き


いの。

吠えるの。


手を振ってあげたけど。しっぽ振ってたねー。


こんど、あそびにいこうね。」





駅の無い方の、住宅の庭に

犬小屋と、大きなケージがあって。


その中から、大きな犬が、列車を見て。


しっぽを振っていた。


舌を出して。




「友里絵、犬好きだもんね」と、由香も笑顔。




「うん」友里絵は、それで犬の看護師免許と、トリマーの資格を持っている。



「猫派なんだけどね」




「猫の美容院ってないものね」と、菜由。



列車が動き出す。



大きな車体をすこし傾けて。由布院駅はカーブしているので

左に曲がりながら、ゆっくり走り出した。



ハイデッカーなので、床下のエンジンの音はそんなに響かない。




高い床だから、立っていると結構傾いているように感じる。



ポイントを通過すると、すこし揺れる。







「お弁当、食べようよ」と、友里絵は

窓際のシートにちょこ、と座って。


白い、プラスティックの手提げから出したのは


つづらがひとつ。



「大分駅で見たね」と、菜由。




ほんとに編んである、竹の葛篭に


おにぎり。ご飯はじゃこめし。

それと、海苔のおにぎり。

とり天、山菜の煮物。



「シブイなあ」と、由香。



「ふつーのもある」と、友里絵が取り出したのは

ハンバーガー・サンド。

これは、よく見かけるボール紙の箱だけど

熱々のハンバーガーが入っていて「食べて」



「それと」じゃこめしのお弁当。「これは愛紗ね」と、友里絵。



愛紗は「ありがとう」と、ちょっと恥かしい。「こんなに一杯、食べられるかな」




「お弁当なら持っていけるでしょ?」と、友里絵。



由香は「あたしのは?」



友里絵は「由香はさ、一緒に食べよ」



由香は「そだね」と、にこにこ。




「ゆふいんの森」は、大きなカーブを曲がって


まっすぐの登り坂。右側には道路、由布岳はもう、後ろに見える。


左側は、大きな木が並木のようになっている。


写真が好きな人たちが、カメラを持って撮影している。




「どこで買ってきたの?」と、菜由。



友里絵は、おにぎりをお箸でつまみながら「ホームに、お弁当を売るおじさんが

来てたの」



1番線は、駅舎側なので

ワゴンで売りに来ていたらしい。



降りて行っても、駅の売店や

駅前のお店くらいには行ける。


そのあたりが、小さな駅の便利なところ。




由布院は、観光地だけれども

そのあたりが人気だ。





列車は、登り購買をゆっくり登りながら

並木を過ぎ、こんどは右カーブ。



トンネルに差し掛かる。





「夜みたいだねー」と、友里絵はお箸を持ったまま

大きな車窓に視線を移す。






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