第71話 小野屋ー向之原

山間だった線路が、すこしだけ平地になったと思うと


右手に、大きなお米の倉庫がいくつも。



「すごいねー。ぜんぶお米?」と、友里絵はにこにこ。


「そう・・じゃないかしら」と、愛紗。あんまり詳しくはない。



「お米もたくさん採れるんだ」と、由香。



「暖かいから」と、愛紗。



「リッチだね」と、友里絵。



小野屋駅も、建て替えられて綺麗。


「ちょっと前までは、古ーい駅だったの」と。愛紗。「伯母さんが住んでた駅みたいにね

木造で。」



「駅に住んでるって、なんか楽しそう」と、友里絵。



「鉄道ファンはなりたい仕事かな、たぶん。映画にもあったよね、いくつか」

と、由香。



「あ!知ってるー。なんか、JKの幽霊が出るの。TVで見た」と、友里絵。



本当にあった怖い話、の愛読者だけあって(笑)

ホラーっぽいのは好き。



「ああ、あたしも見たな。それ。赤ちゃんの時に死んじゃった子が

成長して出てくる夢、だったんだよね。駅長さんの。

でも、その駅長さんも死に際で。ひょっとするとお迎えに来たのかな、って」と、由香。



愛紗はよくわからない。「いいお話ね」



「いい話なの?」と、友里絵。「怖い話かと」



由香は「怖いって言えば怖いかもね。でさ、駅長さんは最後の旅を自分の駅から

出るんだよね。あのシーンは、なんだか感動したっけ」と、由香。



愛紗は「そうね。鉄道員生涯を全うして・・・。って。」と、ちょっと連想する。


自分は、そういう人生を送りたいのかな。なんて。




「あたしらの会社も、ちょっと似てるよね」と、由香。



友里絵は「うん。タマちゃんも気に入ってて。ほら、あの人って

国鉄に入れなかったから」と。



愛紗は「入れなかったの?」



由香が「それは聞いた事ある。家の事情なんだって。でも、鉄道員になるより

研究者の方がいいよね。」


友里絵は「あたしらはそう思うけどね。本人の気持は別だし」


愛紗は「うん、わたしも。よくわかるな。気持」



由香は「愛紗はさ、かわいいけど、そういうんじゃない自分になりたい」



愛紗は「そうなのかな。そうかも。女じゃなくなりたいっていうか」



友里絵は「じゃーさ、くっつければいいじゃん」


愛紗は「何を?」



友里絵は「ホース」といって、ぎゃはは、と笑う。


由香も笑う。



愛紗は恥かしくなったけど「心が男なのかな」と。




友里絵は「あー、なんかTVであったね、それも。JCなんだけど

心が男で」


由香は「あー、あったあった!。先生がいい人で、頑張ってくれるんだ」



愛紗は「それ、見たことある。結構前だよね」



と、賑やかに話していると、愛紗も落ち込まないで済む。


友達って、やっぱりいい。


そう、愛紗は思った。



列車は、向之原駅に着く。



ほとんど、もう都会みたいな感じ。



友里絵が「あー、なんか御殿場線の駅みたい」


由香が「ほんとだ。山北とか、あのへん」



愛紗も、なんとなくそう思う。



高校があるのか、学生らしい人たちが何人か。


私服なので、大分へ遊びに行くのだろう。



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