第8話 食堂車
7号車は、食堂車で
ロビーカーだけでも随分贅沢な感じなのだけど
食堂車もあるのは、乗車時間が長いから。
とは言え、この列車は
全区間を通して乗る、と言う
よりは
昼間走る区間は普通の特急列車として
使われる事も考えられている。
全国一律管理と言う時代の名残でもある。
その、7号車の引き扉を開くと
真ん中が通路。
一部がキッチンになっていて、カウンター席が車両の半分くらい。
残るはテーブル席だけれども
壁に備えつけの、動かないように
なっている跳ね上げ
テーブルと椅子は
いかにも70年代の食堂、と言う
シンプルな、メラミンのもので
縁が金属のモールで覆われていて
足が金蔵パイプの椅子と合わせて
今見ると懐かしい、かえって文化的に見える。
「いらっしゃいませ」
東京駅で入った、日本食堂の
ウェイトレスと同じ服装の
微笑みが愛紗にも。
乗客は、まだ食事時間でもないので
まばらにテーブル席。
車窓は流れ、横浜駅に到着する。
車内アナウンスが
♪
間もなく、横浜です。
♪
当然だから、降りる人はいないから
出口の案内はない。
それが普通で、特急らしい案内である。
横浜駅は、まだラッシュ前だから
学生や、仕事で移動している自由業ふうが
いるくらい。
東海道線ホームは、普通列車と同じだから
下りを待っているのだろうか。
まだ、この駅にはホームドアがない。
横浜くらいだと、ラッシュもそんなに
怖い事ないのかな、と
愛紗は思う。
テーブル席は空いていたので、ちょっと座って見て
爽やかな飲み物がいいかな、なんて思い
ウェイトレスさんが、やって来る
昔ながらのスタイルがちょっと気恥ずかしい
愛紗は
メニューを見て
「レモンスカッシュをお願いします」と。
愛紗と同じくらいの歳の彼女は、いかにも
嬉しそうな、若々しい笑顔で
「かしこまりました」と
揺れる列車では、結構大変だとも思う。
引き返す足元は、白い上履きのような
運動靴で、ああ、と
愛紗は自分たちもそういえば、そうだったと
思い出したりする。
バスガイドも、ハイヒールなんか履くと
腰がおかしくなるので
禁止されていた。
もちろん、運転手でそんな事をする
人もいない。
そんな事を思っていると、ドアがない
食堂車ではわからなかったが
いつのまにか横浜を出発していた。
魔法の絨毯のようだと、愛紗は思う。
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