第4話 現場の声

「ありがとうございます!」と、愛紗は自然に。


車掌さんは「ありがとうね。大分までよろしく。わしも

大分で終わり。休めるよ。」と、車掌さんもにこにこ。


愛紗は「いつも、そうなんですか?」


車掌さんは「いろいろあるなー。この行路は、大分で乗って、東京まで行って

中休み。折り返しで帰る。中休み。なんてのね。」


愛紗は「大分ー>東京は夜行ですね。」


車掌さんは「そうそう。詳しいね。」


愛紗は「はい。鉄道の仕事に興味あって」と、言うと


車掌さんは「九州でもいろいろ出てるな。最近。まあ、寝台特急は無いけどね。

ワゴンさんとか、昼間特急の客室サービスとか。そうそう。新幹線の駅員とか。」



愛紗は「そういうのあるんですね」



車掌さんは「うん、運転は危ないし、男でも気が弱いのはダメだね。

車掌もそうだよ。事故処理もあるし、万が一。

だから、九州はいないんじゃないかなー。本当の車掌って。

切符売るとか、ワゴンくらいで。

それでも結構ね、事故あると。辞めたりするね。

ほら、鉄道って避けられないから。レールで。」



愛紗は意外だった。そういえば、そうかもしれない。

バスはハンドルで避けられるし、列車よりは急ブレーキが利く。


そういう意味では怖くないのかな?


なんて。



ひとりで考えると、偏るな、なんて。




「あれも、そうだよ」と、車掌さんは


ホームドアを指差して。


「混雑してる時に危ないのもあるけど、後ろから押す奴が居るんだよ。

それで、あれが出来たし、監視カメラもついた」



愛紗は「そうなんですね。鉄道は安全の為に、そこまで」



車掌さんは「そう。まあ、九州にはないね。そんな話。

おっと、出発7分前。それじゃ。もう、乗ってたほうがいいよ。」

と、車掌さんは、乗務員室に戻った。



車内アナウンスは、専務さん、A寝台の隣の車掌室から

放送をしていた。


ー寝台特急、富士号、日豊線経由です。

あと5分ほどで発車致します。

お見送りの方、ホームからお願い致しますー。


軽快なオルゴールの音を聞くと、これから旅、と思うけれど


春の16時30分は、およそ旅の雰囲気には遠い。


これで、大分には12時少し前に着く。明日の昼、であるから

のんびりと20時間くらいの旅。



その、長閑さが好きな人、乗り換えが面倒な人。


元々は、この列車が一番早かったのだけど。


時代の移り変わり、だろうか。

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