第2話 夜行列車

ひとり旅と言っても、個室だし

何も怖い事もない。

寝ていれば着いてしまうし、バスみたいな事故もまあ、ない。



と、愛紗は、安心して絨毯の廊下を静かに歩いて。

自分の部屋へ。

廊下の窓際、天井寄りに

蛍光灯が付いていて。

部屋側は、1階側が開き戸、2階は

その1階の部屋部分にスライドする戸になっていて

そこに、丸い窓がある。


今回は、2階なので

引き戸を、がらがらと開くと

階段が正面。菱形のような模様のカーペットで

階段には、照明がついている。


一番下は、ヒーター。



床からの壁に、鏡があり

階段を

登ると、天井は車体の形に沿っている。


窓も、それに沿って曲がっていて



スライドカーテンが、その形に沿っている。


ベッドが、壁の反対側に。

ベッドの生地は、黒い生地に鮮やかな色の


アクセントがある、かわいいもの。


廊下の上は、物入れになっていて

結構広い。



窓際には、自動車電球のような

明るさ調整のある読書灯。



その隣の壁には、スピーカーと

切替スイッチがある。


ラジオと、オーディオで

BGMが6chほど。


クラシックと、ポップス、日本のポップス、ジャズ。


上品で、好ましいものが選ばれていて。

これは、ロビーカーに放送局がある

有線放送になっている。


勿論、スイッチを切っても案内放送は流れる。



♪軽い音楽。


ハイケンス、と言う作曲家の

セレナーデである。



それが、オルゴールで流れる。




ーこの列車は、寝台特急、富士号。

西鹿児島行きです。

東海道線、山陽線、日豊線経由です。

お乗り間違いのないようお願い致します。


16時30分の発車です。ホームにてお買い物などなさる際はお手回り品、ご注意下さい。


あと20分で発車致します。


お見送りの方、ご注意下さいー








いかにものんびりしている口調なのは、故郷の人なのだろうか。



これから、長い旅をして、帰るのだろう。




この声を

聞くと、もう帰ったような気分になってしまう。


仕事から解放された気分も、勿論あるだろう。




「いいなぁ、旅って。」



愛紗は元々、鉄道の運転士の制服を見て

着てみたい、と思ったくらいだったので(笑)



「もう、いっか。」



似てる制服を着れたから、いいのかな。

なんて、軽く考えたら明るくなった。



「とりあえず、帰ってのんびりしよう。」




荷物を棚に入れて、ベッドの上にある毛布、シーツに包まれた清潔そうな、それと

浴衣。ちょっと短い目だけど、女の子には

ちょうど。



工の字、の組み合わせ。

レールの形らしい。



お洗濯タグがあって、[九鉄リネン]と、書いてある。



九州、と言う文字を見るだけで涙ぐみそうになる愛紗は


やっぱり、きつかったんだな。と



今、思った。





浴衣の下に、キーホルダーについた鍵。



部屋の、普通のシリンダ鍵で


一流ホテルみたいに、レリーフのアクリルで



星のマークが掘られている、シルバー。


SOLO COMPARTMENT CAR

と。



高級感があって、とてもいいな、と思う。



その鍵を持って、部屋の鍵をかけて。


安心でいいので、車内を、見物して歩く事にした。


まだ、20分、15分くらいあるから。


と、廊下に出て。カメラを持って。


旅行作家みたい、なんて思って(笑)。



さっき出た入口からホームに戻る。


ホームが少し曲がっていて、編成がよく見える。



ここは10号車で、後ろに5両、前に9両あるのは時刻表で見て、知っていた。



そのあたりはバスガイドである。

時刻表はお友達。

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