第588話 higgs-environment

ディーゼルカーの床下では、ディーゼルエンジンが

その名の通り、アドルフ・ディーゼルの


想いを辿るように振動しながら

回転している。



理想的原動機を作ろうとして、志半ばにして

自害した彼。



十分立派な功績、圧縮点火エンジンを遺し。




その、シリンダでは



空気が凡そ20分の1に圧縮され



PV=nRTの式の通りに温度をあげ、燃料を爆発させ

ピストンを下ろす。




そう、燃料の分子が分解するときに

熱を発生するのだ。





収斂するとき、熱を吸収する。





安定した状態から、分解される時に

熱を発生するのは、あたかも少年の恋が


家族から遊離し、新たな家族を得るプロセスの

ようで、面白い対比である。


そして、新たな家族を得たら熱は冷める(笑)





熱とはそんなものだ。





分子ではなく、原子を壊すと

その数メガ倍の熱が得られるのは

既に良く知られたエネルギーである。




そして、ヒッグス環境を壊せば

数テラ倍の熱が発生すると考えられている。




ただ、エンジンに使うには

途方のない熱なので


やはり、ディーゼルエンジン程度が

扱い易い。




恋も同じで、ほどほどが良いのだ。

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