第403話 Lonely Boy

でも、ひとり部屋に入って

妙に寂しくなってしまったミシェル、

まだ15歳である。



その淋しい気持ちのいくらかは、

生き物としてのNaomiを求める気持ちだったりもして



めぐへの愛を想う、文学的なイメージを

美しいと思い込んでいるミシェルにとって

それは、矛盾するものであったりもして。



止む無く、ひとり部屋の扉を閉じて

階段を上り、ロフトになっている

2階のベッドでひとり、眠る事になる。




並列世界の向こう側では、めぐに相当するMegに

弟がいて。



それは、ひょっとしてミシェルのような

存在であるかもしれない。




そのイメージが、どこかしら

こちらのめぐに、弟がほしいと言う

気持ちを生んでしまったりして。



魔法使いのMeg、向こうの世界の彼女と

こちらのめぐ、との心には交流があるから



どことなく、めぐにとってのミシェルは


弟っぽい近親性を感じさせるし

親友リサの弟なので



殊更、恋しい象徴にはなりにくかったりしたのも


ミシェルにとって不幸であったり。





そんな構造は、ミシェル少年に理解されるはずもなく



ただ、彼は時の流れに堪えるしかなかった。

でも、夢でなら

ミシェルも、どんなスーパーマンにもなれたりするから

結構彼は、眠るのが好きだったりする。


もともと、文学少年だったわけじゃなくて

めぐお姉さんが図書館勤務だったから

図書館に行くうち、本が好きになったとは言うものの

文学が好きなのは、空想的な、ファンタジックな性質が

もともとミシェルにあったのだろう、と

彼自身も思っているようだ。


空想、つまり

記憶をいくつもつないで、類推したりするうちに

あたらしいイメージを生む、そんな作業。


構造学的には、頭の中の記憶の接点が

複数、ツナガル事だし


神経内分泌、と言う

ケミカルな物質との関連でいえば、ドパミンなんかの

影響で、その神経の接続が起こる。



時間も空間も飛び越えてしまうのは、その記憶そのものが

主に事象の一瞬を意味しているからであったりする。




ミシェルは、夜行列車の個室で眠りながら

何を夢見ているのだろう?




Naomiお姉さんとの愛の分かち合いだろうか(笑)



否、彼はそうではなくて



めぐお姉さんとの恋愛の成就を願っていたのだけれども.....。



生物的に、Naomiが未経験なミシェルをわくわくさせたので


でも、文学的なミシェルは、そのわくわく感と


恋しいめぐお姉さんとの愛、を想像上で結びつけてしまって

幸せな夢を見ていた。


少年の夢は、そういうものである。



そして、夢を見ながら心のどこかで、そういう夢を見る自分を

不浄だと蔑んでいたりするのだけど



それは、生き物としてのミシェル自身が未成熟なだけ、なのだけど。



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