第356話 come in ,to especially

その頃のリサはと言うと

SuperExpress-North-East lineの終点に近づき


車内アナウンスを聞いている頃だった。


車窓の右手には、静涼な海岸。

左手には、岩山。


列車は、地上を滑空するように300km/hで走っている。


カーブにさしかかると内側に傾くのが

鳥のようでもあり、飛行機のようでもあり


自然の摂理の共通性を思わせて、楽しくなる。

乗り物に乗ると、気分が変わっていい、と


リサは思う。



携帯電話を公共モードにしてあるので

鳴らなくていい。



ふつう、電車の中ではそうするものだけど、と

リサは国鉄マンの孫である、さすがに。




その「ふつう」の定義はひとそれぞれ、だけど。(笑)




昔はひとつだった。

それは、昔はこの国を建国し、列強に立ち向かうなんて

国だったので、とりあえず国の中は仲間。


外に仮想敵がいる、そういう想定だった。


今は、お金儲けで仲間を作っているひとが多いので


同じ国の中も、味方ばかりじゃないって


そういう妄想に浸るオトナが多かったり。



でも、それは妄想で。




リサのおじいちゃんたちは、みんな、昔のままの国鉄を

愛していた。


この国は変わらない。




それが......。




都会は変わっちゃった。



外国のお金持ちと仲間になって、国鉄を売るなんて。


(と、このときのリサはそう思っていた)。




田舎、Bluemorrisに行けば、温かな心のひとたちに会える。

そんなふうに、疲れたリサの心は思った、のだろう。




アナウンスが流れる。


----Ladies & Gentlemen, We're arrived at "New-BlueMorris" terminal 'bout 10 minutes. please leady truck , thank you .


と、軽快に明るく車掌のアナウンスが流れる。


この車両の担当は若い女性のようだ。



「このひとは、国鉄の民営化をどう思ってるのだろう」と

リサは、まだ思い込みの中にいる。





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