第329話 qualtett

白い、SuperExpressは

もうホームに入っていて。

滑らかな先頭は、白鳥のように

優美だった。



大きいので、近くで見ると

迫力のあるスタイル。




「乗ろう?」と

リサ。



「そだね。凄いね。これに乗れるって

結構贅沢かも」Naomi。



ナチュラルな感覚は、やっぱり

庶民的。




「かーっこいいぃ!」と、

にこにこ、お弁当下げて(笑)れーみぃ。





めぐは、ホームの

土曜日の夕暮れ、その雰囲気を

楽しんでいる。




ふたつ向こうのホームに、北に向かう

オリエント・エクスプレス。




うやうやしく、食堂車のクルーが


車両に乗り込んでいる。




旅っていいなぁ、と



やっぱり、あっちの方が

旅、って言葉に似合うかな、なんて

文学的(笑)。





白い、プラグドアが開いて



めぐたちは、先頭車両の


デッキに乗る。





すると、運転席の後ろに

4人掛けのボックスシートが、壁で隔てられて

通路を挟んで、4つ。





「ここでいい?」と

リサは、そのシートを示す。





「これ、いいの?」と、Naomi。



リサは、「指定席じゃないから、大丈夫。

」と。

そのあたりはさすがに詳しい。




時々、指定席にする事もあるらしいけど。


今日は、大丈夫らしい。




そういう列車がいくつもあって、

特急列車に使う電車を、普通に乗れる事も

よくあるらしい。



「田舎のおじさんが教えてくれるの」と、リサは楽しそう。





「おじさん?ああ、車掌さんの。」と

めぐは気づく。





「おじさんも安心だろね、後継ぎが増えて。

次は、ミシェルかなー。」と、れーみぃは

お弁当が気になってて(笑)。


4人掛け個室の、テーブルに

置いたお弁当を、早く食べたいよー、って



わんこみたいに。





「ミシェルも、やっぱり特待生になるのかなあ」と、めぐ。


リサは[うーん、だいたいミシェルは国鉄じゃ勤まらないんじゃない?」と、厳しい。




「めぐお姉ちゃんのそばにいたいから、って

図書館で働く、なんて言ってるくらいだし」と

リサは、また困った事を言うので(笑)




また、れーみぃが思い出す「あ、そっかぁ、

じゃあ、いつかリサはめぐのお姉ちゃんになるのかぁ」ははは、と屈託なく笑うので

めぐも、そんなに悪い気はしない。




賑やかな女子高生4人は、やっぱり個室でよかった(笑)。


もちろん、個室と言っても

座席指定じゃないから

鍵は掛かってない。


「でも、お弁当食べるんなら

やっぱり向かい合わせで、おいしくたべないと。

まわりに、おいしそうな香りが漂うのも、ちょっと、ね。」って

リサは、さすがに車掌のおじさんの姪である(笑)


けっこう、食べ物の匂いって気になる人もいるけど


まあ、おいしい洋食なら嫌、って人は少ない...と、思う。




「それよっか、JKうるさい、って言われそうで」とはNaomi(笑)。



「マナーモードにしろ、とか言われそうね」と、めぐ。



「そうそう、個室なら大丈夫ね。マージャンしても」って

れーみぃは、なんかアジアン(笑)。



「おっさーん。」と、Naomiが言うと



「おやじ仲間じゃーん。」って、リサ(笑)。



そっか、ってNaomiも笑う。



和やかな笑顔。



個室っていいなぁ。と、めぐは思う。


気兼ねしなくていいし。





そうしているうち、SuperExpressは

プラグドアを、空気の音と一緒に閉じた。



「けっこ、大きい音するね」と、Naomiが言う。



「あれは、ドアをね、はめ込むのね、ボディに。300km/hで走るから」と

リサは、詳しい。



「すごいねー300km、あ、それじゃ、早く食べよ、オムレツ。しちゅー。」と

れーみぃは楽しそう。




テーブルに置いた、包みを開くと

まだ熱々の、ハッシュド・ビーフ。

とろとろオムレツ、チーズいり。




わぁ、と歓声、みんな。


湯気で窓ガラスが曇るくらい、あったかい。



「すごいなぁ。お料理って。」と、めぐは言う。



「そーだね。うんうん。食べようよ。」と、れーみぃは


フォークで、ひょい、と

オムレツのはじっこを拾い上げて、かわいい

お口に運ぶ。


とろっとしたチーズが、とってもおいしそう。



「うーん、美味でござる」と、れーみぃ。



「どこのお侍さんよ」と、Naomi(w)。




SuperExpressは、静かに走り出した。


少し、曲がってる駅のホームから、音も無く。



「もう、300km?」と、めぐが聞くと、リサは


「構内だからまだ、75km。」と、言うと



「75kmでも速いよね。」とNaomiは車窓を見ると


カーブを傾きながら進んでるけど、結構なスピードが出ている。



「旅は馬の速さくらい....か。」と、めぐは、レオナルド・ダ・ヴィンチの

言葉を思い出す。



「馬って何キロくらいなの?」と、リサ。



「40kmくらいじゃない?」と、れーみぃは言う。



「40kgでしょ?」と、Naomi。



あ、ひどーい。38kg!って、れーみぃは言うけど




あんまり食べると、40kgになっちゃうよ、と、リサ(笑)。





......2kgしか変わらないけど(笑)。




「みんなで太ろうね。(w)」とか言いながら

ちゃんと、4つあるフォークとスプーンを回した、れーみぃ。



Naomiは、ハッシュド・ビーフをスプーンですくって

デミグラス・ソースを、嬉しそうに味わった。

こってり系、好きらしい。


「やっぱ、ビールよっか、スパークリングかなぁ」とか言いながら。





リサは、オムレツのチーズ、とろけたところの

塩味を楽しんでいる。




めぐは、ジンジャーエールの栓を開けようとして

でも、開かなくて。ふと、窓の外を見た。




カーブを過ぎると、車体を真っ直ぐにして

SuperExpressは加速を始めた。



けっこう、遊園地のジェットコースターくらい

速いかな、って

めぐは思う。



それでも、時間旅行する時、空から舞い降りる速度

よりはゆっくりだけど、とも。

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