第316話 superexpress

「スーパー・エクスプレスで行かないの?」って、Naomiは、子供っぽく笑う。



「近いもの」と、リサは、にこにこしながら。




スーパーエクスプレスは、時速300kmで走る

飛行機みたいな特急列車。

でも、100kmかそこらに行くにはちょっともったいない(笑)。




「普通切符しかくれないの?と、れーみぃも


列車を待ちながら。


長い髪が、列車の風に吹かれて。




右手で、それを抑えて。






うん、と頷きながら、リサは



「だって、近いもん。

遠くの人は、寝台列車の券とか

くれるんだって。」と。




「いいなー、夜行列車乗れるんだ。


オリエント急行みたいの?と




めぐは喜ぶ。




ふつうのよ、とリサはさすがに、詳しい。





オリエント急行は、豪華に旅を楽しむ列車だけど


さすがに、100kmでは短い。




遠い、国境に近い町からでも


豪華列車を無料で乗れるほど、国鉄も

豊かではないらしい(笑)。





ふつうの、とは言っても

個室寝台にも乗れる切符だそうだ。




電車が近づいてくる。





銀のボディは、お日様の光に輝いている。


ステンレス・スチール。




お台所の流し、みたいなピカピカのボディ。


傷が目立たないように、最初から細かいラインを金属の表面に付けている。


ヘアライン仕上げ、と言うらしいけれど。



いかにも実用的で、機能的な

日常に使う列車のボディに似合う。




そのヘアラインの前に、髪のきれいな

れーみぃが立っていると、

よく似合う。


よく整った、規則的な細かいラインって

幾何学的な、美しさがあるって

めぐも思う。


機能美。



同じように見えるラインも、微細に見ると

でこぼこで、その規則性は

同じ数式で表される。



とか、数学の先生が楽しそうに話したっけ、と

めぐは思う。



細かい傷をヘアライン、なんて言うけど

最初から傷を付けておくと、後から傷つきにくいって

面白い発想。





ひとの心も、それに似ていて

生まれたままの時から、最初に

何かで、少しづつ傷が付いて行って。



それで、大きな傷が付かないようになる。



それを、防衛機制と、旧い研究者は言う。

例えば、ジーグムント・フロイドのような考えの人。





そんなことを、めぐが意識しているわけでもない。




その、生まれてから最初の傷、も

めぐは、魔法で癒してあげる事もできる。



時間を動かす事ができるんだもの。


それで、未来が変わってしまったとしても.......。

誰が困るだろう?




何があったって、傷ついたままでいいってことない。



そんなふうに、友達を思うめぐ。




....でも、正義の味方じゃないから(笑)。

友達だけで精一杯。



それはそれでいい、と思う。



なかよくなれればみんな友達だもの。





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