第282話 魔法少女めぐ(笑)

「元気ね、リサ」と、めぐが言う。


「なーに?おばあちゃんみたいに。ねね、がっこ終わったらプール行こう?」と


リサは、楽しそう。

はじけるスパーリングみたいに。





めぐは、リサと一緒に居ると


なんとなく、元気になれそう。




めぐの、元気を減らしてる理由は


もちろん、リサの未来に起こる事のせいだけど。




ほんとうは、めぐも元気な女の子なんだ。





時間旅行をする事で

ひとの未来を知る事が



だんだん、なんとなく


おばあちゃんみたいな気持ちに

なっちゃうのかなぁ、なんて

思ったり。



でも、その魔法のおかげで


リサは、おじいちゃんの本心を知る事が


できたんだけど。



もし、それがなかったら


リサは、ずっと悩み続けたかもしれない。





友達の為だもん、と

めぐは、自分のささやかな暗鬱など

振り払おうと思う。





それで「プール、ね。


学校の?」と



言うと




リサは

大きく首を振って。(笑)。



「あの、ほら、めぐのお家の裏山温泉にある。



流れるプール。



」と、リサは楽しそう。





「なんで、そこなのよー。」と、めぐは


リサの真似してはしゃいで見せて。




「うん。あのさぁめぐ。弟がね。


めぐお姉ちゃんと

一緒に泳ぎたいんだって。



いいでしょ?」と



リサにそう言われると、

まあ、いっか、って気持ちになって来る。




ミシェルかぁ。


めぐは思った。


あんまり印象になかったけど

こんなふうに、ミシェルは

あたしにアプローチしてたんだ。





リサお姉ちゃんに頼んで。





リサも優しいお姉ちゃんだね。





めぐは、なんとなく微笑む。



「いいよ。行こう?登校日だから

授業もないもん。」と



めぐは言って、授業ないのに

なんで学校あるのかなぁ(笑)なんて

思いながら。





白いカーテン越しに輝く夏休みの

太陽、それが



なーんとなくだけど、陰りを見せているような気がして。


夏の雲も、少し高くなってきて


空気が澄んできたような、そんな青空を

見上げて。





少しずつ、そんなふうに

季節は巡って行くのだろう。





その、時間を

めぐは飛び越える事ができるし。



夢のなかなら、誰かの時間を飛び越える

お手伝いもできる。






少しずつ、ひと、誰かの為になれる。



それが、嬉しい、おとなになったような

気がして。





今は、それでいいと思う

めぐだった。



夏の暑さも少し、和らいでくるような

8月の終わり。


エネルギーが失せてくるような、その感じは

どことなく、ペーソス。



めぐは、7月が好きだった。

夏休みに入る前。



始まる前が好きなの。



日曜日より、土曜が好き。





たぶん、限りある命の

ひと、だから


終わりを自然に意識している、そんなせいも

あるのかもしれないけれど




それは、生物行動学のような

お年寄りっぽい学者さんの意見(笑)で




楽しい事は、始まる前の期待の方が楽しくて


それだけに、終わったときはさびしいって


そう思うのは、ふつう。





恋もそうかも。



ミシェルみたいに、遠い存在の

お姉さんのお友達を、憧れるのは

ファンタジー。


夢の中。



心の中で、恋したいって思う。




ほんとうの恋が始まる前の、少年の微睡み。



その時間を、大切にね。って

めぐは思う。



「イメージを壊さないように、しないと」(笑)と

注意注意。




なので、一緒にプールで泳ぐ、なんてのも

ちょっと、怖かったりして(笑)



かわいいミシェルの想いを壊さないようにしないと。






なんたって14歳だもん。



めぐは、自身の14歳の頃を思い返すと

あんまり今と変わらなかったような気もするけれど(笑)

女の子って、そうなのかもしれない。



絵本を読んでたのが、字の多い本になったくらいで

幼い頃と、あんまり変わってないような気、もする。




めぐが、他の人と大きく違ってるのは

17歳までの人生が2回あった、って事くらいで





天使さんと、神様くらいしか

そのことを覚えてる人はいない。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る