第269話 dream in dream

「おやすみ、めぐ」

「おやすみ、リサ」


リサのお部屋で、なかよく眠るふたり。

もちろん、めぐも

眠ったまま、夢の中でリサに会うのだ。



それは、もちろん魔法で。



疲れていたから、ふたりとも

すやすやと眠る。


めぐは、もちろんリサの記憶と、おじいちゃんの事を考えて。




そうすると、そこの部位の神経細胞が

起きてて。


NONーREM睡眠になった時、記憶を解放しはじめる。



リサは、もちろんおじいちゃんの事を

気にしていて



よく眠れないと言うから、その神経は

起きてる。



それで、夢を見る。





めぐは、リサの夢にお邪魔して。

おじいちゃんの記憶を見た。



おじいちゃんは、白髪で短い髪。



黒い制服、衿の詰まった服で

機関車、燃え盛る炎を湛えた蒸気機関車に

乗っていた。


たぶん、それは

おじいちゃんが一番、好きだった頃の記憶。




リサの夢では、そのおじいちゃんが


後継ぎがいなくなって、淋しい思いをしていると


そう言う結末になって。


それが、無限ループになっている。




つまり、思い込んでいるので


その記憶が強化されてしまっている。






「そっか」めぐは、リサに

天国のおじいちゃんに、会いに行ってもらう事にした。



それが一番いいと思って。




もし、会っても「夢」だから

魔法だとは気づかない。




天国はもちろん異なる世界だから


実体を持ってれば、入れない。


でも、心だけで通じる事はできる。




心は無限に自由なので、思い合っていれば。




天国も時空間、つまり11次元隣接宇宙の

ひとつ。




イメージで、それを呼び寄せる。





意識はもともと0次元の存在、自由に

飛び回ってゆけるけれど



飛び方を、ふつう知らない。



たまたま飛んでしまった人が

天国を見たとか、そんな事を言うけれど



構造は、そんなものだ。





「あたしも、おじいちゃんに会いたいけど」めぐはでも

今は、リサの事が大事。



リサの夢を、天国のおじいちゃんの夢と


接続した。












「リサ」おじいちゃんは、優しく

リサに微笑む。




「おじいちゃん、会いたかった。

ごめん、ごめんなさい。

わたし、レールの上を決まった人生なんて

嫌、なんて言って。

ばかだったの。わたし」リサは泣く。



おじいちゃんに縋って。




そのひとことを言いたくても

言えないから。



それで、リサはおじいちゃんのために。

そう思って路面電車の運転手さんに

なろうと必死。

でも、うまくできない。




「リサ、わしはわかっている。

悲しいなんて思ってない。

リサが、辛い思いをするほうが

わしは、辛い。」おじいちゃんは

優しく微笑んで、リサを抱き寄せた。




「わたし、わたし......。」リサは

子供に戻ってしまって、泣きじゃくる。




よしよし、と

おじいちゃんは、リサを抱き上げ、

機関車に乗せた。



「ブレーキを握ってみろ。わしが教えてやる。」おじいちゃんは、機関車をゆっくりと走らせる。



逆転機を少し回し、スロットルを開く。



すぐに、スロットルを戻す。


逆転機を解放すると、機関車は

重い客車に押されて、レールの上を滑る。



「いいか、ブレーキを掛けた時の遅れを

考えるんじゃなくて、重さを感じるんだ。

少し掛ける、効き具合がわかる。

毎日違うぞ、天気でも違う。

最初は、そうして覚える。



そのうち、同じ場所なら

感じがわかる。そういうものだ。




おじいちゃんは、リサの手に自分の手を添えて

ブレーキハンドルを回した。



少し回す、空気が漏れる音がする。


減速が体に伝わる。





「この感じなの?」リサに笑顔が。




「そうだ。それを、ブレーキ・ノッチ毎に

感じ取るんだ。電車の方が楽だから

この機関車でできれば、絶対出来る。

わしがついている。できないはずはない。

わしの孫だ。」



リサの頬を、涙が伝った。

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