第209話 若草の君
若草の君
めぐは、おばあちゃんの言うように
一体型(笑)の
若草いろのスイムスーツを着てみた。
それも、光学的な変化で
水に濡れたり、光の当たる角度で
虹の七色がきらきらと輝く、不思議なものだった。
微細な化学繊維が、空気のプリズムを
作って
反射させる、そういうものだった。
シンプルな色合いが、それを
彩りに沿える。
さらりとスリムなめぐが
それを
着ると、早春の芽吹きのように
清々しい。
「おばあちゃん?もういい?」
と、めぐは
和室のほうで
、ファッションショー(笑)をしているおばあちゃんに声を掛けた。
おばあちゃんは、のんびりしてるので
着替えに時間かかるんだっけ。
と、めぐは
おばあちゃんのベースを気遣った。
ひとには、それぞれのペースがあるから
めいめいに、好きなペースで生きるのが
いちばんしあわせだ、と
めぐは思う。
めぐ自身も、のんびりしているほうだから
せわしいペースは苦手だった。
誰にも、自分のペースがあって、
心臓の鼓動も、それに沿っている。
たとえばネズミさんは、すごく早いペースで心臓が拍動するし
象さんは、とてもゆっくり。
想像できる通り、ネズミさんの寿命は
象さんよりずっと短い。
その心臓の拍動を決めているのみ
じつは内分泌の化学物質で
その活性を決めているのが
遺伝情報、つまり進化の過程で得られた性質である。
それを生得的性質と言うけれど
つまり、ネズミは体が小さいので、それだけ
沢山の熱が環境に奪われてしまう。
そのせいで代謝が早く、
故に寿命も短い。
象さんはその反対で、温暖なところで
巨体を遊ばせているから
寿命も長い。
環境と、構造への適応なのである。
人間も、おばあちゃんくらいになると
のんびりと
、代謝もゆっくりになるから
時間もゆっくり進んでいるのだろう。
おばあちゃんが、のーんびり着替え済ませたのは、その10分後(笑)だった。
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