第202話 にこにこ









坊やは、平然とにこにこしていて


とりあえずルーフィの、と言うかMegの家のおばあちゃんに

懐いているので、めぐのおばあちゃんは

安心して、元の世界に戻れそうだった。






丘の上温泉行きのバスは、12時。


バス停に、のこのこと歩いていく。




センター・ラインの引かれた道路、丘を登ってきて

緩いカーブに、並木道。


バス停に、ゆらゆらと

緑のバスが到着。



おばあちゃんは、ゆっくりと開いたドア、バスのステップに

よっこいしょ、と登る。



今度は、わりと新しいノンステップのバスで

フロアにあがるだけで済んだ。




でも、エンジンのあるリアシートへは

結局階段を昇らないと、乗れない構造だったりした。



フロアにあるシートは10席ほどで

幸い空いていたので、座れたけれど。




ドアが閉まり、運転手が白い手袋で2速ギアにニューマチック・シフト。


圧搾空気の音がして、ギアが切り替わり

6000ccターボ・ディーゼルのエンジンが少し、回転を上げた。


走り出すと、タービンの金属的な風切り音が、ちょっと未来的な

雰囲気を醸す。



圧力の上がった空気がエンジンに供給され、その分だけ

爆発力が高まる。


PV=nRTの通りである。


初めからnが多いので、PもTも大きいのだ。




小さなエンジンから、大きなパワー。




ゆったりとした雰囲気で、バスは坂を登る....。








リゾートホテルの部屋に戻ると、めぐは

もう普通の顔に戻って、にこにこ元気だった。




案外そんなものね、と

おばあちゃんは、自分の少女時代を思い出して

微笑む。




帰り支度、と言っても

おばあちゃんは、あのハロウィンの魔女の衣装(笑)に

着替えて戻るだけ。


めぐは、あのステージ衣装(笑)を貰って帰ろうか、なんて思ったり。




それはそれで、楽しい思い出だったような。


めぐは、思い返して。





終わった恋を引き摺る女の子は少ない。

それは、元々哺乳類なので

現実的に母になる性質があるせい、である。



比較的早い時期から、母になる宿命を負わされている為で

恋、つまり生物学的パートナーを得る行動を始めるのも

早い。

めぐのように性急に行動するのも、そういった生理的理由のせい、である。


恋は、男女とも生理的な内分泌の変化によって齎される。


例えば胸が痛むのも、そこに内分泌器官があるからである。



それから、逃れる事ができれば

自由に恋する事ができると言うのが、ルーフィの考えのようだ。







恋と言う行為を、生物学的な生殖機能と関係なく

楽しむ、永遠に。


それは、神の領域に近い快楽である筈なのだと

彼は思う。



例えば天使、クリスタさんは

その領域を知っている。


天使なのだから当然だが



それでも、天使を捨てて地上に舞い降りた。




ルーフィの主人は、なぜか全能の魔法使いなのに

長い眠りについてしまった。



果てのない極楽には、やはり黄昏る時が来るのだろうか.....?














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