第203話  遠い初恋



遠い初恋



一方のルーフィは、なんとなく寂寥感。



別に、急いで恋人にならなくてもいいのになぁ。




と、男らしく(笑)そう思うのだった。



女の子が契約するように恋人、という


形に落ち着きたがるのは、基本的に

子供を宿すせいでもある。


動物などは父親不在で、母親ー子供の関係がすべてなので



これは誠に不思議な行動様式であり


人間だけにある形態。



それは勿論、人間だけが家族を持ち、食料の分配を

行う種だから、という

特質に沿っているものであると



生物社会学者は説く。



人間は、知性の発達に伴い


大脳が肥大した結果、早産で生まれて来てしまう。



そのせいで、生まれてから数年も

母親の庇護無しに生きる事はできない。



それなので、父親が必要になったと言うのが

形態的な比較進化論理である。





つまり、人間の有史以来その行動に沿った記憶蓄積がなされていたので



早い時期から、女の子は

安定を求めるのだと

考えられている。




それが、恋人と言う契約に落ち着きたがる理由だったり。


切実なものである。





それを、めぐ自身が意識してはいないが

記憶はそういうものである。



恋したい、と願っている訳でもない。

勝手に訪れるものだ。






対して、男の子の恋は

それよりも単純である。


どちらかと言うと生理的な欲求であるが

それは、男が子供を育てる行動様式は


高等類人猿ヒト科の隣人、ゴリラやチンパンジーの類に見られるくらい、で

ある。




家族ではなく、群れ、として

年少の者を分け隔てなく庇護し、生きる方法を

教える。


主に狩猟採集などの、生きる糧を得る方法

であったりもする。



人間以外は、家族がないので

発情期に、雌と交流するのみ。



後は、特定の雌と契約関係になる事は少ないから



ルーフィの行動も、至極当然な

生き物らしい行動、であるとも言える。





人間の場合は、寿命の限界があるが

魔法使いはそうではないので



契約を急ぐ必要もない。




その行動様式も、間違いではない。





つまり、そんな自然な理由で

めぐの恋心は、破綻した。









「ただいまー」」と

Megは、元気に編集部から戻ってきた。




ルーフィは、誰もいないので

ぬいぐるみ姿ではなく、人間の格好で

リビングルームに下りて。



紅茶を楽しんでいた。



オレンジ・ペコと言う

お菓子屋さんのかわいい御人形さんみたいな

名前の紅茶に


レモンを入れて。






香りを楽しんでいた。



甘い芳香のこのお茶は、結構優しい感じがして

好ましいものでもあった。





「どうしたの?誰かくるわよ?」と

Megは、快活にそういう。


元気で明るい彼女は、いまのルーフィにとって、希望的に素敵だ、と


そんなふうに彼は思う。



ルーフィは、これまであった事を、手短に話した。


めぐが、恋を求めた事。



それに、いま答えられないと

返事した事。



性急なその訴えに。




ふたりのおばあちゃんが、全共連(笑)したこと。






Megは、なんとも答えられない気持ちだった。



「そうなんだ」と


だけ答える。





「そんなに急がなくてもいいのに。でも


わたしも18歳だったら、そうしたかもしれない。」と


彼女は、遠い記憶を振り返るように。


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