こころだけになって

第195話 心の愛

心の愛



心だけの世界なら、愛を分かち合える。


めぐはそう思った。



でも...それでもやっぱり、好きなひとの気持ちが

誰かを向いているのは嫌。



そうも思う。



ルーフィさんが、どこか別の世界でも

他の人を愛していたりするのは嫌。

そう思う。



その、強い気持ちが



めぐに、わたしだけを見て、と言う


言葉を発させた。






最後の戦いであったかもしれない、めぐの最初の恋。



「ルーフィさん、ここから出ないで。

ずっと、一緒にいて!」



その言葉は、人間として継承してきた

女の子、めぐの心の言葉だ。




魔法使いルーフィにしてみると、些か不条理な

要求である。




恋人の心を独占したがるのは、

生物的衝動で

つまり、他者の遺伝子が

家族に紛れ込まない為の行動。




長い進化の歴史の中で、それが

行動様式になってしまった。



でも、人の心は生物学的な遺伝だけではない。

育てた人の心を受け継ぎ、文化として継承する事も

家族であるし




ルーフィたち魔法使いや、天使、クリスタさんなどのように


そもそも生命体でないものは、遺伝子情報によって

自らを主張する必要性がない。



神が博愛であるように、天使や

魔法使いも、博愛であっていいのだ。




そうした愛の型は、まだ

人間の少女めぐにとっては、

理解の範囲になかった。



まだ18歳である。


幼いゆえの心、であろうか。




それがまた、愛おしい理由でもあるのだが。




でも、今のルーフィが、その要求に

応えられるかと言うと、それはそうでもない。



めぐひとりの為に、人間的に愛を分かち合う。



それもいいのだけれども、残念な事に

先に、もうひとりの、3年後のめぐに

出会ってしまっていた。




若さゆえに性急に、愛を求めるめぐ。


そのために、もうひとりのめぐを

拒絶するのはできない相談だった。




あと3年経てば、幼いめぐも

それを理解するだろう。


ルーフはそう考え、少し時間を置きたかった。




「ね、めぐちゃん?心だけで暮らせるこの世界って

素敵だと思わない?」とルーフィは告げる。





「お金もいらない、地位もない。

みんな、幸せでいられる。

天国より素敵だよ、きっと]



と、彼はさりげなく言う。



心の平静は、愛や恋の闘争からは得られない。



それを、感覚で理解して貰おうと

ルーフィは努力した。





その問い掛けは、めぐにも理解できる。




でもやっぱり、人間、めぐは

その生からの訴求がまだ強かった。




「あたしたけを好きでいてくれますか?」







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