第177話 恋する魔法使い

恋する魔法使い



ルーフィは、量子コンピュータで


重力場の計算をmatlabで行っていた。


simulinkと言う

、ブロック毎にシミュレーション結果を適合できるソフトウェアだ。



「あれ?」



めぐが発見したのは



静電誘導の力学モデル式だった。




F=k*{q1*q2/(r)2}と言う有名な式。



それは、星の重力場計算に式の構造が似ている。



もちろん、定数は違うが。


ルーフィは楽しそうだ。




「ミクロ宇宙に11次元が内包されているなら、マクロ宇宙と構造が似てるって事だよね。



静電気を作る、電子の力と


星の重力場が似てるってのは


結構、面白いね。



たぶん、多重次元構造って正しいんだよ、きっと」



その話の内容よりも、めぐは


ルーフィのそばに居られる事が嬉しかったりした。





どうしてなんだろう?と

思うけど。






べつに、Megさんは嫌いではないし、

自分の3年後にそっくりだから


親近感はある。


でも、ルーフィさんに、先に出会ってしまったから。



そんな理由で、ルーフィのパートナーに


決まっているのは、ちょっと


あたしがかわいそう(笑)なんて


思ったりもする。




でも、だから

争う訳もないけれど。







このまま、ルーフィの魔法が戻らないで

すっと、ここに住んでいてくれたらいいのに。


めぐは、そんな風にも思ったりする。






それはそれで、Megさんがかわいそうだから。


それもできないだろうけれど。




第一、魔法使いって仕事じゃないもの(笑)。



普段は何して暮らしてるんだろう?なんて(笑)。





「だいぶ、上手く飛べるじゃない」と


ルーフィのその言葉に、めぐは、


ふと、物思いに耽っていた事に気づいたり。







この頃、そんな事多い。




そういう時間って、楽しいんだけど(笑)。






「はい、あの、いえ.....変なところに飛んで行ってしまいそうで、まだ自信ないです。」と


めぐは、さっきのロンドン旅行(笑)の


話をしたり。





「それなら、魔法陣を使い切りで作ってあげるよ。そうすれば大丈夫。]と




ルーフィは親切心でそういう。



でもなんとなく、めぐは複雑だ。




.....あちらに帰りたいのかしら。あたしって魅力ないのかなぁ。




なんて(笑)思ったりするのも



恋故のキモチだったり。




もちろん、魅力ない訳じゃないんだけど。






「早く帰りたいですか?」と、めぐは

その口調がちょっと、淋しかったかな、と


思って。微笑んで見せた。



でもルーフィは、気にしない。




「いや、だってさ。坊やのおかあさん

心配してるでしょ。」




と、平然と、思いやりの気持ちで

答えるから、


めぐは、自分の事を


勝手な女の子だ、なんて

恥ずかしく思ったりも(笑)。





でも、恋ってそうだもの。




恥ずかしく思わなくていいんだけど。



魔法使いの限界



好きなひとといつも一緒でいたいって


それって、自然な気持ちだし。


あたしだけを愛して。



そういう気持ちだって、ふつう。

だから、向こうの世界に戻らないでほしい

なんて思うのも、別に恥ずかしい事でもない。



でもそれは、人間、めぐの感覚で

魔法使いは、いろんな世界に住む事ができたりする。



だから、時間を分割して多重人生を送る事が

できたりする。


例えば今、ルーフィの向こうの世界では

時間がとてもゆっくりしか進んでいない。


4次元にモデル変換することで、時間軸を

伸ばす事も可能だからだ。




つまり、この手法を複数の世界で使えば


例えば、超弦理論に基づく11次元多重宇宙では

10の500乗も宇宙が隣接していると

予想されているので



それだけの中から、住む世界を決められる。





理論的には、である。




もともと、愛するが故に

相手を独占したいと言う気持ちは



人間が、生物として生きてきた証で


そうしないと、家族の排他性が保てないから


それを好む人が生き延びてきた、そういう事になる。



それは、3次元的な同じ平面の上にしか

その人が生きていないと言う前提だからで



もし、遠い別の世界に

その人が、別の人と恋していたとしても....



別の世界に生きているその人は、別の人。



なので、知る由もない。



その存在を知らなければ。



そう思うと、めぐはちょっと怖い気がしたりするし



人間の女の子として生きているめぐ、は

魔法使いになっても、ちょっと


いろんな世界で、恋人を作るなんて

出来そうにもなかった。




「そんなの無理」



そう思う。





男の人だって。



そんな女の子を好きになれないって思う。


めぐはそんな風に思ったし、いくら魔法が使えたって



そんなの嫌。




そう思った。





「ルーフィさんのご主人様が、未来に希望を無くして眠っちゃったって、この事なのかしら?」



なんて、めぐは恋する乙女らしく

そんな連想をした。



それが、魔法使いの限界....?




なんでもできるけど。愛だけは

作れないし。もし、相手が魔法使いさんだったら


魔法でなんでも出来てしまう相手の


真実の愛ってどこにあるの?

ホントの姿って?



そんなふうに思ってしまうと

めぐは、かわいらしくそう思ったりした。

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