第175話  浮遊の感覚


浮遊の感覚



自然エネルギー由来(笑)なので

魔法で旅行するには、免許証は要らない。


習う事もできないので



モペッドみたいに、練習できればいいのにな、なんて


めぐは、飛びながら思う。




鳥が、3次元的な空間飛翔をするのに適応してきたので

他のすべてを失ったと言うのも

比較進化論的な定説だったりする。


骨格と、筋肉が殆ど。

脳も小さい。



それだけ、飛ぶと言う行動が

必然だったのだろう。



それゆえに、知能も最小限に抑制されたのだ。





しかしそれが、不幸であったか・・・・?



と言うと、そんな事はない。



人間のように、飛ぶ事ができず

群れを持って生活する、その為に

知性を持ったと考えられている。


でも、様々なひとの欲望を調停いながら生きていかなくてはならず


煩雑である。



もし、飛翔して逃れる事ができれば

その社会、なるものも

自由であっていい。




そんなふうに、めぐ自身思ったりするのも

若さ故、の事だ。



若いエネルギーが、行動力を生み

関わり始めたこれまでの社会を

ちょっと窮屈に思ったりするのは

いつの時代も同じ。



でも、今のめぐは違う。


飛翔する手段を手に入れたので


いつでも、どこにでも

飛んで行ける。


そうした事が、人間としての生き方に

変質を与える事も、有り得るかもしれない・・・・なんて

めぐは、少し集中を欠いた。




途端、軌道がゆらぐ。



質量が減ると言う事は、それだけ

安定性を欠く、と言う事になる。


重力場では、そうである。





ゆっくりと上昇し、次第に加速。



0次元に近づけば、それだけ

速度も早くなる。


重力場の影響が減るので

次第に、慣性の影響が少なくなる。




地球は、時速1700kmで回転しているので

地上から離れれば、

その速度で地上の座標からズレていく。


秒速にすれば472m、である。



そうして、緯度線に沿った移動はできるし


経度方向へは、0次元モデルから

2次元、=>3次元モデルに戻る時


徐々に大気との摩擦を受けるから


方向性を、帆船のマストのように

抵抗と角度で得れば良いのだ。



こんなふうに、近距離移動はする。



機械的なようだけど、鳥が自分の翼で方向を決めるのと同じ。



それは、魔法使いの感覚でできるものなのだ。




落下しながら、徐々に方向を転換していくのは


前述のように、自由落下運動に対する

角度θに対する関数で式が示される。



それは、重力中心方向への直線に対する力であり


F=mghsinsinθ、質量mとθが

適合パラメータである。


大気との関係性は、空間軸方向で

気流に対する抵抗がFで示される。


それらの式で示される解が、飛行モデル。


飛行機の自律航法計算と似たようなものだが

鳥のように、それを感覚的に行う。




「ふう。」



丘のおおきな木が、とても小さく



クリスマスケーキの飾りみたいに

小さく見えて。



北極星が、手が届きそうに近く見えるあたりで

0次元モデルを、解放。



落下しながら、速度を増す。


宇宙旅行のようだけど。


地球のゆっくりした回転、それが


行く先への方向に合っていれば、いいのだけど(笑)。


それは、計算頼み。



もと居た場所からの方向は、計算に頼る他はない。




ひょっとしたら、海、ドーバー海峡に

転落したり


アルプスの山に落下するかもしれないが(笑)



その時、再度上昇すればいいだけの話だ。。





「時間旅行よりは、気楽ね。」



めぐは、楽しそうに空を飛んだ。



絵本の中で見た雲は、近くに言ってみれば


冷たい氷の粒、だったりした。





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