第13話  正義

お客さんが減ってきたので、めぐは

1階のカウンターに戻る事にして。


スカイレストランの入り口から、エレベーター・ホールに出てきて。


「びっくりしちゃいましたー。坊や、なんにもわからないで

にこにこしてるんだもの。あたしも、にこにこしちゃって。」と

めぐは、いつもの笑顔でそう言う。


「よかったね」と、ルーフィが言い

「うん。あなたはAngelよ」と、わたしが言うと



「そんな...Angelなんて...」と、さっぱりとした

短めの髪を撫でて、白い頬を赤らめて

めぐは、とってもかわいい。

司書の資格は、大学に入ってから取ればいい、と

のんびりとしているところは、超然としていて

神様みたいにも思えた(3w)。



損得とか、勝ち負けとか。

そういう事よりも、ふんわりとして、しあわせでいたい....。



そんな感じで、やきもきしてた

わたしよりもずっと、おとな(w)みたいな感じもして。



「そういえば、天使さんのエネルギーってなにかしら?」と

ルーフィに言うと


「エネルギーを人から取ってはいないけど」と、ルーフィは笑って

「めぐちゃんがしあわせでないと、やっぱり天使さんも心配なのかな」と。


エレベータ・ホールの隣の階段を

昇って来る足音。



ルーフィ。



「ただいま」と

エレベータ・ホールに戻ってきたルーフィ。



「どうだった」と、わたしは尋ねる。



「うまく行ったかどうか、は

分からないけど....。とりあえず試してみたよ。図書館の本を

見てね。」と、ルーフィが言うので


「図書館に魔法の本があるの?」と、わたしはびっくりした。


「うん、あるよー。」と、ルーフィはちょっと、いたずらっぽく応えた。





めぐは「あ、ルーフィさん、すこしお疲れですね」と

穏やかな笑顔。


ロビーで、お休みになって、と

エルゴノミクスデザインの、おもしろいソファーに

ルーフィを薦めた。



イタリアンテイストだろうか、こういう

優雅な雰囲気のものが、図書館にあるのは

ちょっと楽しげで、いい感じ。


ベージュの、カーブしたバックレストに、リアル・ウッドのシート。

ソファースタイルで、重厚感があって。



デザインで、人の心を和ませるのも

またいいものね。



そんな風に、わたしは思う。

この、デザイナーさんも、そういう気持ちで

作ったのかな....。



ベリーニさん、と言うサインがソファーに入っていたので

いつか、どこかで会えるといいな...なんて

その名前を記憶した。



わたしも、ルーフィの近く、そのソファーに腰掛けた。

反対側からも座れるようになっているのが、図書館用、っぽくて

おもしろい作り。


ふにゃふにゃとカーブしているバックレストの、それぞれに

ひとりひとりが優美に座れるように考えられていて。


「作り手の心、だね。」と、ルーフィ。



「デザインで、心に訴えるのってステキ。デザイナーさんも

天のお使いかしら。」と、わたし。


「そうかもしれないね。作り手の気持ちが作品に出るものだ、って

言われてるし。」と、ルーフィ。



仕事もそうで、楽して儲けよう、ってスタイルもあるし

このデザインみたいに、心を込めてする仕事もあって。



めぐ、は

これからどんな仕事をしていくのかなー。


カウンターにいる彼女は、耳の遠いおばあちゃんに

本のご案内をしている。


手話を使おうと思ったらしいけど、おばあちゃんが手話を

知らないので(3w)


本のある書架まで、ご案内することに。


公共の施設なので、そんな時も

他の司書さんが、カウンターの仕事を

代わってくれたりしているけれど



忙しい場所だったら、カウンターに

人が並んでしまったり

そんなこともあるかもしれない。



カウンターで待っている人も、耳の遠いおばあちゃんも

おなじ、サービスを受けている人。



そんなふうに考えて、サービスをお金で売るお店なら

わりと、めぐ、みたいな丁寧な対応を

喜ばない、そんなお店もあったりもする...。


そんな事を、わたしは取材の経験から思い起こした。





そこにある「心」ってなんだろう?。





そんなお店に勤めていたりすると、時間に追われて

セカセカしたりするのかな....。なんて。




昨日の、あの

本を借りに来たおじさんの事を思い出した。





「ねえ、ルーフィ? 悪魔くんの憑いている心って

結局、その人の想像を、悪魔くんが歪めちゃう、って事?」

と、わたしはなーんとなく。



「そうだね。昨日のイライラおじさんで言えば、物理的な時間の経過を

見ないで、ひたすら急いでるって感じで。感覚は4次元だから。」と、ルーフィ。




「3次元の感覚に合わせればいいのね」と、わたし。



「そう。目の前にある時間の流れと環境に合わせる、って事。

なんだけどね。自分の意思を弱める事だから.....。神経の昂奮を

少し抑える薬、そんなものとか....。それか。

針治療みたいなもので、昂奮する気持ちを抑える、とか...。」



隣町で会った、気術使いの人だったら

そんな薬を知っているかもしれないし、針治療も詳しいかな....。



偶然が、ほんとは必然だったりする。


そんなこともあるけれど、あの人もそうかもしれない....。?








あなたは、ほんとうに天使さんかも。




めぐ、は

静かに書架から戻ってきて「歴史小説って、いっぱいあるんですね。」

と、楽しげに感想。



「文学は幅広いもん」と、ルーフィ。


どちらかと言うと、魔法使いは理系なのかしら...。

ルーフィの魔法は、そんな感じだ。



「コンピュータで見出し作るといいわね」と、わたしは思いつき。



「はい、そういうのあるみたいです。」って

めぐは、第一図書室の真ん中にあるパソコン数台の事を

見た。



「それでも、おばあちゃんでパソコン使うのって、結構大変らしくって。

いろんな言葉で本、書かれてるので。

原語で検索ってできないらしくて。」



それで、人の手でご案内するのも、とってもいいことね。


コンピューターの都合に、人が合わせるのも

なんとなくヘンな感じもするし。



忘れてたけど、そういう事って多くて

なーんとなく悪魔くん的な考えっぽいような気も....(2w)した。





カウンターで、本を貸し出しする人、返すひと。


いろんな人たちが、川のように流れていくけれど

楽しそうに、嬉しそうに

帰って行く人の表情を眺めているのは、ちょっとしあわせな感じ。




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