第12話 3 天使さん

「たいへんね、おかーさんって。」と、わたし。


「キミだって、おかーさんになるんじゃない」と、ルーフィがヘンな事を言うので


わたしは、ちょっとほっぺが熱くなった(2w)。



こどもって、自由な時間軸で動いている。

分類すれば4次元、って言える。

それは、イメージの中、思うままに動いているから。

それで、しあわせそうなのは

3次元的な、世の中のタイムスケールを無視(笑)しているから。



オトナの多くが不幸っぽく見えるのは、無理やりタイムスケールに

合わせていて、その見積もりが下手だから、だろうと

わたしなども思う(2w)。


よく、仕事の都合に間に合わなかったりする事もあったりして。



こどもみたいに、自由なタイムスケールで

伸び縮みできれば、便利なのになー。


そう思った。




「時間の伸び縮みができれば、みんな幸せになれるのにね」と

わたしは、ルーフィに言った。



「いつか、できるかもしれないね」と、ルーフィ。


「僕らは魔法使いだから、時間を飛び越えたりできるけど。

今は、空間まで飛び越えちゃったりして。

情報だけが飛び越えるのは、今でも出来るね。

通信は光の速度だし。過去には戻れないけど」と、ルーフィは言った。



「光の速度?」と、わたしは聞き返した。



「うん、電気通信だから、インターネットって。」と、ルーフィ。



「光を超えたら、時間が逆転するんでしょ?」と、ルーフィに前聞いた

相対性理論のことをわたしは思い出した。


「うん...。あ、それで過去に通信するの?」と、ルーフィ。



「あーなるほど。おもしろいねそれ。」と、言って、ルーフィは

空中に魔方陣を描いて、指で文字を書いて。


ひょい、と


その魔方陣を窄めた。



「なにしたの?」と、わたしは??(3w)。



「キミの過去に、通信したのさ。Eメールで」と。



ルーフィは楽しそうに話した。




「向うの世界に戻ったら、君のコンピュータに着いてる、かな?」


なーんて、おもしろいことを言った。






時間・逆転



「めぐちゃんは、魔法を使えるようになるのかしら」と

わたしは、少し空席が見えてきたスカイレストランに

ルーフィと一緒に、窓際の展望席を見つけて、座った。



暮れかけた空は、スカイブルー、インディゴ、オレンジ・ヴァーミリオン。

とてもきれい。



ルーフィは「うん..あの子に天使さんが宿ってるとしたら、もう使ってる

かもしれないけど....。よくわかんないな。そういう感じじゃないし」と


楽しそうにウェイトレスをしているめぐ、を

とおくからわたしたちは、眺めながら。





「天使さんには、魔法とは違った能力があるから。

特別にしなくても、それを使える...と思う。」と、ルーフィは付け足した。




「じゃ、こんなお盆で運ばなくても

魔法ですーって飛ばせば」なーんて、わたしはマンガみたいな事を言った。


ルーフィは楽しそうに「それは、お客さんが驚いちゃうね。」


大きなパノラマ・ウィンドウ。


その向うはテラスふうのスペースになっているけれど

こどもが落ちたら危ないので、鍵が掛けられている。





F=mgh




鍵は、ふつうのドアと一緒で

捻ると開いてしまうから、すこし知恵のある子だったら

開けてしまう、なんて事もあった。


それほど、みんな気にしていなかったのは

建物の外周には柵がついていたから、落ちないだろうと

安心していたのもあって。



きょうは、こどもが特に多かった。

誰かが、鍵を開けて、そのままにしていたらしくて


かわいい坊やが、開いていたドアから

テラスに出てしまっていた。


それに、おかあさんも気づかなかった。


とことこと.....と、柵に近づいていく坊やは、まだ小さい。


ひょっとすると、柵のすきまから落ちてしまうかもしれない、と

わたしは「あ!」と思った。



柵の間に、あたま入れた坊やは、風があたるので

にこにこしながら、しゃがんで。


ゆっくりと、テラスから落下しそうに....。



「あぶない!」と、わたしが叫び、ルーフィは振り返り

魔法を使おうとした。




あれ?


なぜか、坊やは柵から、逆さあがりをするみたいに

テラスに戻って、楽しそうに笑っていた。


赤いほっぺが、りんごちゃんみたいにふわふわ。




「ルーフィ?いま、魔法使った?」   



「いや...?キミかと思ったけど。そんな力があったの?」




わたしじゃあない。



わたしは、めぐの姿を目で追うと

彼女は、テラスに出ていて

坊やを抱き上げて、おかあさんに預けていた。


どうも、ありがとうございました、って

おかあさんは、幾度も礼を言っていた...。


若いお母さんみたいで、他に赤ちゃんがいて

そのお世話をしているうちに、坊やが遊んでしまっていた、らしい。




「めぐ.....。」わたしは、めぐの背中に

透明な翼があるような、そんな気がした。




「魔法の気配は感じなかったな」と、ルーフィはそう言う。




「たぶん、めぐ、に宿っている天使さんが、飛んでいったんだわ」と

わたしは翼を見たような...と、ルーフィに伝えた。



「人命救助ね。」と、わたしは笑顔で。


でも、みんなの目にはそれは見えないけど

わたしには、時間を一瞬逆転させたように見えた。



めぐ、がしたようには見えないから

喫茶のお客さんには、運良く落ちなかっただけ、に見えたのだろう。



そういう事故は結構、あるらしいけど

子供だから無傷だった、なんてお話は


わりと、天使さんが助けてるのかも、しれないわ....。って

わたしは、夢想した。



ほんとにそうだったら、楽しいけど(3w)。





「そっか、めぐちゃんに天使さんが....。」ルーフィは、ライム・ロックを

ストローで吸いながら、のんびり。



「うん...なんとなくね。そう見えたの。」と、わたしはアイス・ミルクティ。



夕陽がきれいなスカイレストラン。




「能力に、めぐちゃんは気づいていないみたいだね」と、ルーフィは言った。



気づいていない、って言えば

天使さんが宿ってる事にも気づいていないみたい。



でも、天使さんが宿れる人、は

あたりまえだけど、悪い人ではない(3w)。


もし悪い人だったら、天使さんが疲れてしまうだろうし。



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