第9話 魔法

重厚な床は、コンクリートの装飾タイルで

綺麗にお掃除されていた。


アルバイト、って言うと

お掃除もするのかな、と思っていたけれど


ここは、公立図書館なので


きちんと、分業になっている。


おそうじは、青い制服を着た人が

担当していて。


きっちりしているなぁ、と

ハイスクールのわたしは、思ったりした。



第一図書室の入り口は、また、自動ドア。

IDタグの検出装置があって、本に貼ってあるIDタグを読み取って

貸し出しになっていないと、赤ランプが点くようになっている。



自動ドアが開き、空港のゲートみたいな

センサーが両側に、アンテナを広げている

通路を通ろうとしたら。




ぴんぽーん。



チャイムが鳴って、赤ランプがついた。


「本借りてないのに。」と、わたし。

「世界が違うしねぇ。」と、バッグの中のルーフィ(笑)。



黒いエプロンをした、司書さんが、とことことこ、と

正面のカウンターから出てきた。


エプロンに、ひらがなで としょかん と刺繍してあって

なんだかかわいい(にこにこ)。



その子はめぐ、だった。


「あらー?いらっしゃい。」って、めぐは

さっき、学校の図書館でした話を忘れてるみたい(2w)。



「本、借りたんですか?」と、めぐが言うので


「ううん、だって、さっきこの世界に来たばかりだし...。」と、わたしが言うと



「そうですよねっ。なにか、時々そういうこと、あるんです。

ICカード定期とか、そういうのが。」と、めぐは

仕事慣れしてるのか、そんな話をした。


「じゃ、だいじょうぶだ。すいません、どうぞ。」と、めぐは

ととととーっ、と駆けていって、カウンターに戻っていった。



「おもしろい子だねぇ。僕のことも忘れてるし。」と、ルーフィ。



天井の高い、広々としたこの図書館は、今、わたしたちの住んでいる

「あちら」の世界でも、同じように建っている。


わたしも、ハイスクールの頃、そういえば

司書のアルバイトをしたっけ。



本の好きな人だけが来る、そういう図書館とは

ちょっと違う雰囲気の、この町の図書館は

結構、いろんな人が来て。


ちょっと困ったこともあった。



「どうして?来週から海外出張に行くのに、借りて行こうと予約しておいたのに。

本が無いって、どういう事だ。」



中年の男のひと、怒っている。


海外出張のお供に、ガイドブックを借りて行こうとしたら

まだ返却されていなくて、出張に間に合わない。


そう言っている(2w)。




「買っていけばいいじゃないねぇ。」と、わたしはルーフィにつぶやく。


「まあ、ああいう人は、元々怒りたくて、そうしてるのさ」と、ルーフィは

鋭い指摘。



わたしたちは、その男の人の頭上に、こわーい悪魔が漂っているのが見えた。



「どーいう事なの?ねえ、ルーフィ。」と、わたしはちょっとふるえながら。


「....うーん。ここは、違う世界だから。悪い心が、僕らには見えるのかもしれないね。」

と、ルーフィは、魔法使いらしく。



めぐには、それが見えないらしい。


司書主任さんらしい、穏やかそうなまんまるのおじさんも

事情を説明していた。



そのうち、その悪魔憑きの中年は「じゃあ、買っていくから、図書館で

費用を持って欲しい」と、訳の分からない事を。



めぐも、主任おじさんも、これには困った。


アジア人っぽい顔立ちの、その悪魔憑きは

このあたりでは見かけない顔立ち、だった。




「ルーフィ....?」と、わたしは彼に期待した。

なにか、してくれそうな気がして。



すっ、と

わたしの背後から現れたのは

イギリス紳士に変装した、ルーフィだった。


山高帽子にステッキ。燕尾服。


ちょっと、時代がズレている(w)。



「あの、もし?」と、ルーフィは静かに声を掛けた。


めぐには、その声の感じで、それがルーフィ、だと

わかったようだ。



悪魔憑きの男は、怒った表情のままだったが

背後の悪魔は、ルーフィが魔法使いだ、と悟ったようで

ゆらゆらと揺れながら、男の背後から逃走しよう、とした。


ルーフィは、カウンターを向きながら

後ろ手で、茶色の硝子瓶、それのコルク栓を外す。


そのまま、指でなにか、サインのような形を作ると

悪魔憑きの男、から怒気が薄れ、悪魔は

小瓶に吸い込まれた。



微笑みながら、ルーフィはコルク栓を閉じて

コートのポケットに入れる。



そのまま、悪魔憑きから離れた男は、柔和な表情になり....。


「あ、あれ?わたしは何をしていたのだろう....。」と、

周囲を見回しながら、図書館から出て行った。



「それでは」と、ルーフィは

にっこり。微笑んで

山高帽を右手で取って、ご挨拶。


呆気に取られた司書のおじさん、と

めぐも


ご挨拶(2w)



ルーフィは、楽しげにステッキを振りまわして

ゲートを通ろうとしたら、また



ぴんぽーん。(4w)




「どうして、引っかかっちゃうのかなぁ」と

ルーフィは、苦笑い。


どうやら、さっき、入ってきた時に

反応したのは、ルーフィのなにかに

このアンテナが反応したらしい。



山高帽をとって、やれやれ、と言う

表情のルーフィに、めぐは


「ステキでした。どうなっちゃったんですかー執事さんっ」と

にこにこしながら。



「いや、あの、執事じゃなくって...まあ、いっか。」と

ルーフィは、彼女に本当のことを言う訳にも行かないので(w)


「結構、ね。疲れてる人も多いから。」と、言った。



「そーなんですね。癒しも必要だし。」と、

めぐは、分かったような、分からないような(2w)

返答をして、カウンターに戻った。



図書館、公共の仕事って言うのも大変ね。



ルーフィは変装を解いて、さっきの

ブルー・ジーンズスタイルに戻った。

けど、それも変装だし(3w)。


そういえば、わたしも変装、って言うか

ハイスクールに通ってた頃のスタイルだった。



図書館のエントランスを、制服を着た学生たちが

歩いていくのを見て

ちょっとだけ、着てみたかったなぁ、なんて思いながら


アルバイトをしていた、んだっけ。




「なんで、制服の無い学校だったの?」と、ルーフィ。


「うん、このあたりだと、制服が無い学校の方が多いの。

制服があるのは、ミッション系のところとか、私立のところとか。

お金持ちの行く学校、だったのかな」と、なーんとなくペーソスな、わたし(2w)



「ふーん、でもさ、別に制服だからって、ステキに見えるって事もないし。」と、ルーフィ。



イギリスだと、制服の学校って、そんなにないらしい。

それはまあ、大学とかもそうだし。



でも、女の子としては、なーんとなく、着てみたかった、って

ルーフィに言うと、彼は、ふわり、と

両手を揺らして。



また、金の粉が空から、ひらひら。


わたしは、ハイスクールの女の子みたいに

タータンのスカートにジャケット、のスタイルになった。



でも、ちょっとスカートが短くて、恥ずかしい(2w)。




「これって、ルーフィの趣味なの?」と、聞くと


彼は「いやぁ、そこの本に載ってたから、と、図書館の雑誌を指差した。



「でも、こんなとこで魔法使って大丈夫?」と、心配すると



「うん、今のは、君と僕のところだけ、時空が違ってるから。

ほら、さっきの悪魔くんみたいに、こっちの人には見えないんだ」と、ルーフィ。



彼は、すぅ、と、右手で空中に円を描いて、魔方陣のようなものを呼び出して。


さっきの茶色の小瓶の封印を解くと、悪魔くんは、その円に吸い込まれていった。



「さよならー。」と、にこやかにルーフィは手を振ると、円を閉じた。




「どうしたの?」



「うん、悪魔くんの時空に戻ってもらったんだ。時空が歪んでるって事で

知らずにこっちに出てきてしまってるみたいだね。それで、食べ物が無いから

人にくっついた。」と、ルーフィ。



「怖いわ」と、わたしも背後を見る。



ルーフィはにっこり、として「大丈夫。悪意をもつと、悪魔が憑いたりするのさ。

優しい気持ちで居る人には、そんなことは起こらない。」




そういえば.....わたしは、ゴミ捨て場のぬいぐるみがかわいそうで

お風呂に入れてあげて、可愛がっていたら

ルーフィに出会えたんだったわ...。と


彼との出会いを思い出していた。



ルーフィも同じ気持ちみたいで「そうそう、あの時、お風呂に入れてくれたんだっけ。

ステキだったっけ。MegのNUDE」と、にやにや。



わたしは、恥ずかしくなった。「こら!そんなこと忘れろ!悪い気持ちだと

悪魔が憑いちゃうよ。」と。


ほっぺが赤くなった(10w)。



ルーフィは、にっこり「大丈夫、愛があればね、それは罪じゃないのさ」と

そんなこと言うから


わたしは、もっと頬が熱くなった....。


めたもる



「あ、そういえば。めぐは、わたしの本当の姿を

見てないんだわ。」と、気付く。




「そうだね、でも、別にいいんじゃない?」と

ルーフィは、魔法使いにしてはアバウトだ。

お話で読んだ魔法使いって、なんとなく

しきたりに厳しかったりするんだけど。



「それは、お話の世界。現実とは違うのさ。」って

ルーフィは、楽しそう。


まあ、もとに戻してもいいけど、って

ハミングしながら、すう、と指を上下に振ると

わたしは、ハイスクールの制服姿から

普段のわたしに戻った。



カウンターの向こうにいためぐ、は


たまたま、お客さんがいなかったので

わたしのメタモルフォーゼ(2w)を見て


「かぁーっこいい!どうやったの?」と。


「うん、これはね、変身の術なの。」って、ちょっと

ユーモラスにそう言うと、めぐは



「あたしもなりたいなー、そんなふうに。メタモルフォーゼしたーい。」って(3w)。



かわいいっぽいけど、ほんとにハイスクールの子かなぁ(4w)



なんて、思ったけど。


わたしも、ひょっとするとこんなだったかもしれないって

思い返した。


毎日、学校へ行って、家に戻って。

時々バイトして。


本ばっかり読んでて、未来を夢見てたっけ。



女子校だったから、ロマンスもなくって。



....あ。....。だからかなぁ、わたしと出逢っためぐが

愛おしい、なんて思ったの。



恋したい、って気持ちを持ってる

めぐ、が

可愛らしいと思ったのって

自分に似てるから、なんだわ....。







「あ、でも。」わたしはふと思った。

今のメタモルフォーゼ(w)で、もとの姿に戻ったのに

めぐは、なんにも気づいていないみたい。


カウンターに行って、聞いてみた。



「あ、ほとんどいっしょですよぉー。」と、めぐは

かわいらしく笑顔で。



そっか。


ハイスクールの頃と、今のわたしって

そんなに変わらないんだ....。



「うん、だって、2年くらいだと

そんなにかわらないよね。」と、ルーフィはにこにこ。



わたし自身が思っているほど、老化(4w)は

周りのひとには分からないらしい。



「でも、めぐはあんなに元気で。あれって、ハイスクールの頃のわたし、でしょ?ねぇ、ルーフィ。」



「うん、それはホラ、ここは次元がずれているから。

彼女はそのまま、君の過去の姿じゃないもの。」と、ルーフィ。




そういえば、なんとなく性格も違うような...(2w)。



カウンターで、図書の貸し出しをしているめぐ、を

遠くから見ていると


それが、わたし....なのかな、と

そう思えば、そう見えるかもしれない。



少し、感じは違うけど。



めぐは、一生懸命だ。

重い本、事典のようなそんな返却本を

カートに乗せて。

分別して、もとの本棚に返す。



学校の図書室だったら、借りた人が返しておくのに。


わたしは、そんな風にちょっと思った。


公共の図書館でも、図書カードを返却したら

本は、借りた人が元に戻す、そういう図書館の方が多い。



この町の図書館は、サービスがいい、のかな....。



そんな風にも思ったり。



でも、そんな事を思いもしないで、ハイスクールの頃は

本に触れている仕事、それを楽しみに

アルバイトに通っていたっけ。


それが慣れ、なのかなー。



「うん。あたりまえ、って幸せだよね。もっと楽ならいいのに、とか

あたりまえを不しあわせ、って思う心に、悪魔が憑くんじゃない?」と

ルーフィは、あたまの上で手のひらを、ひらひら(笑)。




思わず、天を仰いだけど。

悪魔くんはいなかった(w)。



「ま、そんなものかもしれないけど。ふつう、誰だって不平って感じるもの。

そのくらいじゃあ悪魔くんは来ない、かな?」って


ルーフィは、にっこり、Wink。




そうしてる間にも、重たい本をぎっしり詰めたカートを押して

めぐ、は

図書返却の仕事に回った。



あっちこっちの書架を回ってるので、時間が掛かる。



そう、思い出した。

最初に、書架の順番に整理しておけば、早く終わるんだった。


図書館の本って、番号順になっているから。




ひんやり



それを、彼女に伝えようとして

わたしは、ひんやりとしている図書館の空気を

頬に感じながら

まるい柱で吊られている、天井と

壁の間の書架、その隙間にある通路を

歩いていった。


ルーフィの魔法が解けていたせいか、

すこし、歩きやすいような

そんな気もする。


コンクリートのに、直接フローリングが

貼られている床、歩くと

リアルに固い感触があって、それで

ここの図書館だと、わたしは

古い記憶を呼び覚ましながら。


カートの行方を追った。



工学のコーナーに、めぐ、は居て

慣れない、理科系の本を

書架に戻そうとしていた。

それも、分類コードを覚えれば

簡単なのだけど

まだ、はじめてからそんなに

日が経っていない、らしい。



.....わたしは、誰に習ったのだろう?


そう、回送したけれど

ぜんぜん記憶が無い。


...もしかすると.....。


こんなふうに、どこかから来た

もうひとりのわたし、に

習ったのかしら?



だったら、楽しいかな。




カートに追いついて、めぐ、に


分類コード順に並べておくと、楽なこと、とか

返却する時も便利、だとか


いろいろ。


「ありがとうございます、たすかります。」

そんなふうに、素直なめぐ、は


とってもかわいい(にこにこ)。


女の子なのに、なんだか愛しちゃいそう(w)。



静かな、静かな図書館。

音がとても響いてしまうので

ここの図書館は、天井の一部が吹き抜けになっていて

2階から、3階までの空間が一緒。


それで、2階・3階が絨毯敷きになっていて

音を吸う仕組みになっている、と

わたしも、教わった覚えがある。


だから、小さな子が

少しくらい騒いでも平気なように、と

考えられている、らしい。




...そういう事を、司書さんに聞いた記憶が

あるんだけど。



あの司書さんは、どこに行ったの?



それとも、時空が違うから、いないのかな?








魔界・次元の歪み



そんな、わたしたちは

しあわせに生きているのかな...なんて

ほのぼのとしていた。


そうしている間にも、書架の整理をしているめぐ、に

本のある場所を尋ねる、急ぎ足のひとが居たりして。


めぐ、も一生懸命に探すのだけれども

一冊の本を、蔵書の中から探し出すのは

結構大変だ。


急ぎ足の人、は

勤めの帰りに来ているのかな、時間が無いのかな....。



わたしは、思わず「その本でしたら、2階の資料コーナーのはずです」と

お節介をしてしまって。



その、急ぎ足の人の頭上に、悪魔くんが憑く機会を狙っているような(w)

そんな気がして。



その人は、しかし「君は?」と、訝しげな表情。


わたしも、ちょっと失敗だったかな、と思いながら

「ここで働いていた者です、すいません、この子、まだ慣れていないので。」


と言うと、不満げな表情で、その人は踵を返し、二階へ。


後姿に、悪魔くんの笑顔が見えた気がした(w)



「ありがとうございます......。ここで、働いていたのですか?」めぐは

安堵の表情で。



「うん....わたし...ほら....もうひとりのあなた、だから....。」わたしは

ちょっともどかしく。




めぐ、は

にっこり笑って、さらさらの前髪を右手で撫でて

「そっか。そうでした。....ああいう時って、いちばんニガテ」と。



そう、わたしもああいう、イライラしてるひとってニガテだ。

それは、いまでもかわらない。


いまは、ちょっとふてぶてしくなったから(3w)

勝手にイライラしてて、しらないわ、わたし。

なんて思うんだけど。



ああいう人たちに、悪魔くんが憑いてるって思うと

ちょっと怖い。けど。

次元の歪みだったら、この世界だけじゃなくて


わたしたちの住んでいる「もうひとつの」世界にも

悪魔くんは来てるのかも.....!?




「時間のある時に来てほしいわ」と、わたしが言うと、めぐは


「はい....いろんな方がいらっしゃいますね。」と、にっこり。


わたしは、彼女に天使が宿っている、そんな気がした(w)。



ハイスクールの頃のわたしって、あんなだったのかなぁ.....。

もう、戻る事って出来ない、んだけど。



めぐ、みたいに

かわいくなりたい....な。



そう、心の中でつぶやきながら、わたしは

めぐの仕事がスムーズに進むように、遠くで見守っていた。



ルーフィも、いつのまにかわたしの近くに来ていて「いい子だね、あの子」



「うん....。なんたって、わたしだもん」と、わたしが返事すると


ルーフィは、にっこりして「そういう君って、とってもかわいい。」


そんな事いわれると、うれしくなっちゃうな。






「でも、どうして悪魔くん、ってこの世界から戻らないのかしら」




「戻り方が分からないのかもしれないね。」と、ルーフィ。

「彼らだって、魔界にいれば、あれがふつうなんだよきっと。」とも。




そっか....。


あの、イライラしてる人や、さっきのアジア人っぽい人も

あの人たちの世界が、あるのかもしれない。


それが、ひょっとしたら魔界と、人間界の中間にあるのかしら...。



そんな風に想像した。



「魔界が好きな人、っているのかしら」と、ルーフィに尋ねると



「いるかもしれないね。好戦的なひと、とか。

そういう人って、言ってみれば魔界との間にある[次元の歪み]が

自分自身だって気づいていないんだよ。」と、ルーフィ。



魔法で、なんとかならないのかしら......。?



魔法と医学



「ねえ、ルーフィ、魔法で、次元の歪みを

変えられないの?」と、わたしはちょっと無理な事を言った。


ルーフィは少し考え、「できない事はないだろうけれど...

そんな魔法は考えた事もないな。相当、能力もいるだろうし。

僕のご主人様くらいの人だったら、できるかもしれない...。」


ルーフィのご主人様は、未来を悲観して、眠ってしまったんだっけ。

それで、ルーフィが、ご主人様の望まれるような未来に

変えられるなら、お目覚めになるだろ...う、って

それじゃ、自己矛盾じゃない!(3w)。


ご主人様を起こすのに、ご主人様くらいの魔力が無いとできない、なんて。




「そんな事ないさ」と、ルーフィは涼しい声で言う。


「?」わたしは、言葉の意味がわからない。


「僕と、君、それと、あの子、3人分くらいの魔力があれば....。」と、

ルーフィはとんでもない事を思いつく。



「わたし....って魔法使いじゃない!、し、めぐはなーんにも知らないわ!」と

わたしはびっくりマーク!になった(7w)。


「うん、想像だけど、あの子、も君と同じような生まれ育ちだったら....

素質はあるかもしれない。図書館で、君の素性をしっても

素直に受け取ったところを見ると、それまでも魔法に

触れてたかもしれない....。」と、少しシーリアスな顔をしたルーフィは

結構かっこいい(2w)。



そっか。

あの子は、もうひとりのわたし。


だったら、似てるって事もある....わ。




「それで、3人の力で、悪魔くんを魔界から、こっちに迷い出ない

ようにする魔法って...あるの?」

と、わたしは興味を持って、ルーフィに聞いた。



「わからない....けど、手がかりはあるさ。悪魔くんたちが

来るのは、悪のエネルギーを感じるからなんだ。

人間界で言うところの、脳内分泌物質ノル・アドレナリンの量とか

攻撃的思考をするときの脳波、シータ波の電磁波を感じ取れる、とか。


そういう事で、悪意を感じ取って、その人に憑くのさ。」



と、ルーフィは人間界の言葉でそう言った。

つまり、悪魔くんたちは人間の悪意を感じ取るらしい。


「いつも、悪意を持ってるわけじゃない人は?」と、わたしが聞くと



「うん。これも人間界の言葉で言うと、いつも悪意を持ってる人、って

攻撃性障害、とか反抗性障害、って言われてるでしょう?

そこにある本、にも書いてあるように」と、ルーフィは

医学書の書架にある、アメリカの精神科医師が使う分析マニュアル

DSM-4TRを指差した。



そう、それは法廷で引用されるような、広く利用されている精神分析の

マニュアルだ。



ルーフィは、続ける。「継続して7日以上、そういう気持ちが続く人を

分類してるね。つまり、そういう人は、悪魔くんの好きなエネルギーを

出している、って事さ」


なーるほど.....。魔法って医学でもあるのね....。と、わたしはちょっとびっくり。



「だから、そういう人の気持ちが穏やかになるようにしてもいいし、

エネルギーが悪魔くんに伝わらないような、工夫をしてもいい...と、思う。」

と、ルーフィはちょっと頼りない(2w)



「悪魔くん、他の食べ物は知らないのかしら?」



と、わたしは自然にそう思った。



「それは考えた事もなかったな。Meg、君は天災マジシャンかも。」と

ルーフィ。



「天才じゃない?」と、わたし。



あ、そっかそっか...。と、ルーフィは笑い「そういうユーモアを楽しむ

ゆとりも無い人、もいるんだね。悪魔くんが憑くような人って。」

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