第22話


「そうだ、あのさ、バレーの試合見た?日本×キューバ。」

僕は、薗子の居場所に疑問を抱いていた。



「勝ったわよ。これで、オリンピックも金ね。」



「ほんと?」


結果は同じだ。この試合、確かに勝っていた。僕は安堵した。

薗子は僕と同じ世界に居る.....でも。


そうすると、榊薗子はこの世界に二人。

同じ時間に、17歳の薗子と21歳の薗子が居る事になる。



僕は、思い切って。「今どこ?これから会わないか?」



薗子は、笑いながら「いいわよ。今、学校だから。あなたは?」




「今、駅さ、君の学校のそばの。」




薗子は、楽しそうに「じゃあ、学校の向かいにある、図書館で。」




桜台高校の向かい側には、県立図書館がある。

銀杏並木に囲まれた、静かな場所。僕も、時々利用していたが

そこで、榊薗子らしき人物を見かけた事は、記憶になかった。




僕は、意外な程冷静に、ゆっくりと歩いていた。

たぶん、それも.....なんとなくの予感だったのだろう。



桜台高校に近づくにつれ、薗子と同じ制服の子たちが

目につくようになった。その中のひとりが薗子であってくれたら?

僕はそう願った。だが..."こちらの世界"では、薗子は高校生じゃないんだ....。



同時に僕は、今日、勝手に学校を早退してしまったことを思い出す。



クラスメートに電話しようと思い、メモしていた番号にコール。



瞬時に返答があった。



冷ややかな機械声で「この番号は、使われておりません....。」


僕は、番号の表示を見た。メモと見比べた。


間違ってない。




....そんな、バカな.....。

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