第21話
どうしていいか分からず、僕は病室で
薗子と、汀子に別れを告げた。
メールを送信している薗子は、元気なようだ。
でもそれは、17歳の薗子だ。
今、21歳の薗子は、あの通り眠っている。
僕は、薗子にメールした。
僕@mail>汀子さんに逢ってきたよ。今、16歳の汀子さんとね。
しばらく待つ.....。と、着信メロディが流れた。
J.S.Bachの「主よ、人の望みの喜びよ」だった。
これも、僕が設定したつもりは、無かった。
その子@mail>そんな事ないわ。汀子は側に居るけど......そんな、16歳なんかじゃないわ。あなたは、何を見てきたって言うの?
僕は、言うべきかどうか迷ったが
僕@mail>こちらの世界では、君は17歳の春からずっと眠っている事になっているんだ。今の君は21歳....病院のベッドでずっと、眠ったままになっている。
着信を待った。
その間に、遅れていたバスが来たので僕は
乗車し、駅に向かった。
午後三時。まだ下校時刻には早いが
そろそろ、小中学生はちらほらと、家路につく頃だった。
..そうだよな。
今、向こうの世界の薗子が17歳なら、汀子さんはあんな、小学生くらいの筈なんだ。
メールがふたたび、着信。
その子@mail>そんなのって信じられない。
だって、こうしてさ、わたし、元気だし...。
メールじゃめんどくさいから、電話していい?
僕は、どきどきした。
今まで、どうして気付かなかったのだろう。
電話して、声を聞いて。
今、薗子の側の世界の事を聞けば、何か分かるかも知れない。この不思議な現象の事を。
電話が着信する。
メロディは、Robert Schumannの「トロイメライ」だ。
これも、僕の設定じゃあない。
「もしもし、あたし。」
僕は、驚いた。
「榊さん!?」
「いやねぇ、気持ち悪い。いつも見たいに薗子って呼んでよ。『榊さん』だなんて。水くさい。」
僕は、薗子の、あっけらかんとした様子に微笑んだ。
そして...。
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