第18話
バスは、古い商店街を長閑に走り
泉のある緑地公園の方へと向かった。
都会の森、のようなその場所は
外から見ると別世界のように鬱蒼として見えた。
僕は[国立病院前]バス停で下車した。
住所からするとこのあたりだろう。
スマート・フォンの現在地表示機能では
この近傍と示していた。
バスを、心細く見送る。
住所だけでは....。
国立病院の方から、何人か人影が歩いてくる。
殆どが、国立病院付属看護学校の生徒だ。
クラスメートたちと似たような年齢の筈だけど
どことなく、大人びて見えた。
....!
その人並みに紛れて、桜台高校の制服。
長い髪、涼やかな瞳...。
あれは....!☆。
「榊さん!」僕は、叫び声に近く、その人の名を呼んでいた。
薗子によく似ていたが、すこし長閑な輪郭で
違う人、とは分かっていた。
反射的に呼んでいた。
深山の子鹿の如き敏感さで、その人は僕の声に
驚いた。
「....どちら様ですか....?」
彼女の瞳に、少し怯えと警戒の色が映る。
それは無理もなく、僕も彼女に会うのは初めて。
「あ、ごめんなさい驚かせて、僕は.....。」
これまで、起きた事を手短に話し、スマート・フォンの中の薗子のメールと、写真を見せた。
彼女は、驚愕の表情でスマート・フォンの画面を見ていた。
「これは....そんな...ありえないわ......。」
僕は、尋常でない状況である事を察しながらも
「....何か、妙な事でも....?」努めて冷静に尋ねた。
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