第17話
インター・フォンは、冷酷に伝えた。
.....はい。お間違えでないですか?
がちゃり、とインターフォンは切れた。
居ない?
僕は、愕然とした。それと同時に疑念が浮かんだ。
何故?ここまで来たと言うのに。
そう思うと、がっかりして。
その場に座り込んだ。
地面が冷たかった。
うなだれた頬に、夏の風が爽やかだった。
しばらく、そうして座り込んでいて。僕は、ポケットの
スマート・フォンの存在を思い出した。
画面にタッチすると、メーラーが立ち上がった。
その子@mail>冗談じゃないの?そう。だったら言うわ。私は榊薗子。17歳。桜台高校2年。あなたの通っている県立東高校の隣町ね。住所は青葉区柿田867−1。両親と一緒に住んでるわ。まだ思い出せない?
.....そうだ。ここへ行ってみれば、何か分かるかもしれない。
その場所は、なんとなく知っていた。
駅の南側の、泉のある緑地の方だ....。
僕は、彷徨うように元来た道を戻った。ふらふらと。
モノ・ローグしながら。
....桜台高校2年、と確かにメールで、そう、書いてた。
でも、ここに学籍が無い、と言う事は...
どちらかが、間違えている。
駅のコンコースを通り、南側に出た僕は
バスターミナルから、泉ゆき、とサインされている
オレンジ色とクリームのバスに乗り込んだ。
バスは直ぐに発車した。車内には
まばらに乗客がいるだけ。昼下がり、
気だるいような平和に満ちたウィーク・ディ。
でも、僕の心の中だけは平穏ではない。
....折角、巡り会えたと思ったのに....。
まだ、決まった訳ではないのに
すこし、僕は悲観的になっていた。
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