第16話


プラット・ホームでオレンジと緑の塗り分けの

鋼鉄製の電車が、僕を待っていた。

電車に乗り込み、ひと駅だけど

どこか、遠くへ旅するみたいに僕は、楽しい気持ちになった。


...そう、思えばこの時、帰ることのできない旅に立ったのだった。



東のひと駅、隣町で僕は電車を飛び降りた。

改札を抜け、駅北口から、大学通りの銀杏並木を駆けていった。

銀杏も今は、盛緑。


馨しい銀杏の香りを浴びながら、僕は桜台高校の門まで来た。

厳かなブロンズで、市立桜台高等学校、と記されていた。


駅から徒歩圏にあると言うのに、深い森に閉ざされた聖域、と言う

雰囲気だった。


文字通り閉ざされた門は、部外者の僕を拒絶しており

[御用の方は職員まで]と、白書されていたサインを見、

僕は落胆した。


....そんなこと言ってもなあ.....せっかく、ここまで来たのに。


とりあえず、職員さんに聞いてみようと、インター・フォンを押した。



.......はい。



インター・フォンは、冷涼な声の若い女の声。



「あ、あの、すみません。2年の、榊薗子さんに面会したいのです。」



.......申し訳有りません、授業中はお取り次ぎできませんが。



インター・フォンは冷酷に返答。



「急用なんです!お願いします。もうすぎ昼でしょう?休み時間でいいんです。」




インターフォンは、少し間をおいて.....。

不可解な返答をした。



....2年生に、その学生はおりませんが....。




「いない?」僕は狼狽した。

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