第13話 13



その子、ってどんな子だろう?

スマート・フォンのピクチャー・フォルダを開くと

予想通り、日付の古い写真や、ムービーが格納されている。



僕と一緒に写っているのは、どうやら 薗子らしい。


驚いた事に、夢で見た、長い髪の少女そっくり。

と言うか、そのままだ。



...こんな、バカな事が...。


これは、夢、長い夢を見ているに違いない。

僕はそう思った。だが.....

指を抓ると痛いし......。写真も、合成にしてはあまりに綺麗だ。


...とすると。僕の記憶が欠落しているのだろうか?



..いや、そんな筈もない。第一、このスマート・フォンを貰うまでは

普通に毎日を送れていた、普通の高校生だったのだ。



....まてよ....?


この、スマートフォンの中身が偽、よくできた偽物だったら?



誰が、なんのために、とは思ったが。



..もし、そうなら。


僕は、薗子宛にメールを出してみる事にした。


僕@mail>コメントありがとう。ごめん、泥棒扱いするつもりは無かったんだ。ただ.....僕は。どうかしてしまったらしい。何も思い出せないんだ。




メールを送信した。



しばらく待った。

宛先不明メールなら

ReturnedMail:Host_Unknownが

帰ってくる筈.....。



1限が終わった頃、メール着信のランプが青く点滅している事に僕は気付き、どきどきした。



...まさか、本当に?


期待半分、不安半分。


僕は、スマート・フォンの画面を指でタッチしてメーラーを開いた。



その子@mail>悪い冗談止めてよ。記憶喪失だなんて。






これだけだった。携帯メールらしく、簡単な文章だった。僕は、返信が来た事にまず驚いた。薗子は実在するのだ、と思った。

すぐに、スマート・フォンのキーボードを引き出して返信した。


僕@mail>返信ありがとう、でも、冗談じゃない。君と過ごしてきた日々の事がまるで、思い出せないんだ。君がどこの誰なのかもわからない。君と過ごしていた筈の時間、他の事をしていたような気がするんだ。


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