第12話 12



....そうだ!。


アドレス・ノートに名前が載っているかもしれない。


スマート・フォンの画面をタッチして、アドレス・ノートを開く。


その名はすぐに見つかった。


榊 薗子 sonoko_s@avis.pdx_ne.jp 070-5011-5255



榊? 薗子?


アドレスに記載した日付は、1年前の4月になっている。

と、言う事は、僕はその子と1年前から...と言う事になる。


いよいよ、訳が分からなくなってきた。

1年前は、僕が高校に入った年だ。



それに...。


薗子の住所は、隣町になっている。

どこでどうして知り合ったのか、分からなくなってきた...。



ホーム・ルームが終わり、1限目の数学。


僕は、数学は割と得意だが、その事が気になって上の空。



....ひょっとして...。


メールの記録を見ると、クリスマスに僕らはデートしていたり

お正月に初詣したり。

ヴァレンタインに、些細な事で喧嘩したり....と

幸せそうなカップルが、メールの中で物語られている。



自分の物語の筈なのに、まったく記憶が無いのが空しい。

しかし、その子も僕を知っていて、だから...。

鍵を渡したのは、去年の秋頃.....。



鍵?


僕は、ふと気づき、鞄の中の革のキーケースを確認した。

もうひとつは、コインケースの中に、リボンをつけて入れてある。


すると........。リボンをつけて入れておいた筈の、部屋の鍵が無くなっていた。確かに、ここに入れた筈なのに.....?




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