【西涼女侠伝】あとがきに代えて

▼『西涼女侠伝』

https://kakuyomu.jp/works/16816452218737394790


 今年(二〇二二年)の一月を以って完結した本作。既に三カ月半が経っており今更かいって話ですが、完結直後は燃え尽き症候群では無いですが、何かこう、語れなかったのですよ。

 それが数カ月の間を置いて改めて振り返ろうという気になってきたので、何となく書いてみます。


 そもそもですが、自分は学生時代以来、小説自体を長い事書いてなかったのです。ただ映画・演劇・ボイスドラマなどの芝居畑にいたので、台本などは書いており、プロットや作劇構成に関してはずっと触れていたんですけども。


 そんな中、世を騒がせてる疫病関連も含めてですが、自分の周辺環境が変わった事で、芝居方面の活動がかなり絞られ、その結果として創作パワーが有り余っていたというのが前提にありました。


 そして次に、歴史モノ、特に中国史には、やはり学生時代から興味があり、書籍やゲームでも多く触れていた趣味になっておりました。

 ただお芝居に関しては、歴史物って映像や舞台なら衣装や小道具も値が張りますし、声のみのボイドラであっても登場人物の多さから、なかなか手が出ずにいて、歴史モノで創作したいという熱がずっとあったわけですね。


 そして好きで色々と触れていた『三國志』に戻ると、正史『三國志』に記述はあれど、小説『三國志演義』ではすっ飛ばされていた涼州動乱に強く興味を惹かれていたのですが、その派生作品(商業・同人含め)でも見た事が無いという事に歯噛みしていたのです。


 そんな上記三点が一度に重なり、「誰も書いていないなら、自分で書けばいいじゃない!」という言葉が脳内に響き渡り、『西涼女侠伝』が始まりました。

 これを書くためにカクヨムに登録したと言っても過言ではありませんね。


 さて、いざ書くとなると、小説自体はもう十数年も書いておらず、史書はサラっと読んでいた物の何度も原文に当たり、また当時の文化や地理なども必死に調べる事になり悲鳴を上げました。

 もちろん諦めて「もうこれでいいや。後はこっちで作るわ」となった部分もチラホラ。


 そしていざ書いてみれば、メインキャラは一人称が「俺」な男装の女侠、野生児のショタ、掴みどころのない美青年。金庸きんようの武侠小説のオマージュに、道士モノのような道術・方術まで盛り込み、まさに自分の性癖や好きな物をぶち込んだオンパレード。


 ついでに主人公・趙英と、その母・王異の複雑な母娘の関係は、実は私の母と祖母が投影されていました。嫁姑ではなく実の親子であるにも関わらず、顔を合わせれば喧嘩をして悪態をつき、その癖に離れていると何だかんだで互いに心配しているというのを見て育ったもので、仮託しようとせずとも勝手に寄ってしまったというのが正確でしょう。


 いずれにしろ「この物語の行きつく先を、世界で最も楽しみにしているのが自分自身」だと公然と言えるほど、書くのが楽しくて仕方がなかった連載一年間でした。

 最後の趙英と馬超の一騎打ちシーンなど「これアニメやドラマなら、オープニングテーマが流れる奴だ」とか思いつつ書き切っての完結。


 涼州動乱をここまでじっくりと物語に落とし込んだのは、少なくとも自分が初めてなのではないかという自負があります。

 かつての自分が読みたくて仕方がなく、しかし探しても商業作品はもちろんweb小説でも誰も書いていなかった話。


 もしも当時の自分と同じような嗜好の人が検索から飛んできて、web小説の奥地でこの作品を見つけ、読んで、そして満足してくれたなら、それに勝る喜びはありません。


 カクヨムに登録した理由であり、十数年ぶりに小説を書き始めた理由でもあったそんな作品なので、そりゃ書ききったら燃え尽き症候群のひとつにもなりますわなって話です。



 とは言え、別に立ち去るつもりもなく、せっかくの縁だから、新たな着地点を探すぞと始めたのが下記のスコップエッセイなわけですな。


▼『カクヨム中国通史年代記』

https://kakuyomu.jp/works/16816927859652865113


 「利点だらけで一石三鳥!」などと説明文で語りましたが、最大の理由は単純に「中国史作品を通史で並べて、自分の作品をそこに組み込んだ本棚を作りたい」という個人的欲求が一番大きいのですよね。 ←


 短編作品は、史書を読んでてアイデアがあったらメモにしておき、頭の中でまとまった&気力がある時に一気に書き上げるスタイルですが、長編に関しては現状はまだこの『西涼女侠伝』のみ。

 とはいえ長編作品として、現在プロット構築中の物が二作ありまして(ひとつは南北朝末期の宝探し活劇。もうひとつが後漢初のオカルト伝奇群像劇)、順当にそっちも準備しておりますが、正直な所を言うと「自分の中で『西涼女侠伝』を超えられるか」が心配で仕方がないです……。


 逆に言えば、そんな心配も出るほどに全てを詰め込んだと言えるので、今後も自身の代表作になるのではないかなと思っております。






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