作者自身が書いてて楽しい物を書こう

 昨今批判されがちなテンプレ物というジャンル(?)ですが、個人的には別に書いている人を批判する気は毛頭ないし、本人がそこで楽しく書いているなら、皮肉でも何でも無くそれでいいじゃないとは思うのですよ。


 ただ「売れる為」というだけで、楽しくも何ともないジャンルを嫌々書いているケースもあると聞くので、そういう人はちょっと「やめれば……?」としか言えないんですよね。


 よしんばそれで作家デビューできたとしても、好きでもない職業に就職して、嫌々日銭を稼いでいるサラリーマンと何の違いがあるんだろうかっていう「先のビジョン」に疑問しかないわけでして……。


 その手の作者の発言を見ると、やたらと読者のブラウザーバックを恐れている人も多く見受けられます。単にちょっとした事で先に進んでくれないのはもったいないという引きの技術論とかならまだ分かるんですが、そこを拗らせて内容が読者接待に終始する事も見受けられるのですよね。


 しかし色んな創作論における接待批判を見るにつけ、逆にそうした「接待」を感じた時点で冷める読者も当然いるわけで、結果としてどんな手を尽くしたって、好みに合わなければブラウザーバックはされて当然だし、そこをゼロにするなんてどんな天才作家にだって不可能なわけですよ。


 例えば「言葉が難しすぎて頭に入ってこない」という意見と「言い回しが幼稚過ぎて読む気が失せる」という意見を両方満足させる事はまず不可能なわけで、どの辺のバランスで落とし込んだらいいのかは、各々で決めようって話なんですよね。

 そうなると「自分が書きやすい文章で書く」「好きな物を書く」のが結局は最適解なんですよね。そうすれば着いてきてくれる人もまた自分と感性の近い人という判断も容易に出来ますし、何よりも「書いていて楽しい」を追求できるというわけです。


 とにかくそうした「好きで書いているんだい!」と胸を張れるジャンルでありさえすれば、結果的にテンプレだろうが、マイナーだろうが構わないよねっていうのが持論なわけですな。それが流行り物かどうかは結果論なわけですよ。


 自分の好きな物というのは、今までの人生で自分が触れてきた物の蓄積であり、いわゆる引き出しの中身なわけですな。

 当然ながら自分が書ける物というのもから取り出してくるわけなので、極論すれば好きな物だと意識していなくとも自然とそれが表に出てしまうと思うのですけども。


 自分は昨今のテンプレに手を出す気は毛頭ないのですけど、それは単に今まで発表されてきたの作品に対して興味が無く、ほとんど触れてこなかったからってだけの事。要するに引き出しが無いから書きようがないとも言えるんですよね。

 逆に、八〇年代のスプラッターホラーとかは好きでよく観てたので、スプラッター殺人鬼物を書けと言われれば、そうした作品のテンプレ(主に死亡フラグ)を満載で書く事は可能だと思います。


 そう言った事を考えていくと、テンプレを書くと言ってもパターンが自然といくつも浮かんでくるレベルで触れてきた、作者にとっても馴染みがあるジャンルでないと、逆に薄っぺらくなったり、特定の有名作品のみの引用に終始したりして、コアな読者を満足させる事は不可能なのだろうなと思ったりもしますね。

 まぁ、流行テンプレのジャンルに粗製乱造が多いのは、そういう理由だとも思うわけですが……。



 自分も中国史に絞って書いておりますが、Twitterなどで「大学で中国史を教えている方」、「その時代に関する著作がある歴史家の方」、「未翻訳の史書を原文で当たって個人ブログで発表したり日本語wikiを編集してる方」等々、そのジャンルに限って言えば日本でも有数の人たちと絡ませて頂いており、それが自分にとって楽しかったり、多く学ばせてもらっている状況があって、その上での作品だったりするわけですね。


 そんな中で、そういった方たちから「面白いね」と言われれば転げ回って喜びますし、逆に今まで触れてなかった人から「勉強になりました」「この時代(人物)に興味が沸きました」と言われる事も、懸け橋になれた気分になって、やっぱり転げ回っております。


 五段階の興味深度で、学術論文レベルを5、サブカルで『三国志』をちょろっとしか触れてない人を1だとすれば、娯楽作品を通して1の人を2~3に引き上げる事が出来たら、それに勝る喜びは無いですよねって話です。

 ちなみに深度ゼロ、興味なしの人は、まぁブラウザーバックで仕方ないという諦めもありますが。

 どんなジャンルでもそうですけど、ゼロを1にするのは本当に難しい……。



 色々と書き散らかしましたけども、結局は「楽しいから」に勝る理由は無いですよ。うん。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る