【ただ鴛鴦を羨みて】あとがき

▼ただ鴛鴦を羨みて

https://kakuyomu.jp/works/16816700428315103645


※上記作品のあとがきとして公開した物の移植になります。




 『ただ鴛鴦を羨みて』、読了ありがとうございます!

 まずは著者としての感想は一言……。


「美化、二百パーセント!!」


 これしかないですわな。キラッキラです。

 匈奴も漢人も、現代から見るとエグい所たっくさんありますからなぁ……。

 さすがにそのままだとドン引きますな。

 いや「それがいいんだ!」というアウトレイジ厨のニキ・ネキたちがいるのは分かっていますが、一般論として、ね。


 よって、劉豹も、蔡文姫も、曹操も、みんな揃って美化美化です。

 今回美化してないのは、普段は董卓や貂蝉との関係性から美化されがちだけど、今回は蔡邕との関係が重要だから美化できなかった王允と、美化されたためしがない李傕ぐらいですな。




 何よりも劉豹と蔡文姫は、作中に於いても「外から見れば、戦乱の中で誘拐されて、蛮族の妾にされた哀れな女でしかない」と書きましたが、実際に史書にはそうとしか書かれてないです。

 曹操が身代金を払って連れ戻しました。何て良い話だ。メデタシメデタシ。です。


 また、一説には蔡文姫の作と言われている『胡笳こか十八拍じゅうはっぱく』という歌においても、匈奴に連れ去られた恨みや、北地での生活の辛さ、漢への望郷の思いが書かれています。

 ※ただし「一説には」と言ったように、蔡文姫本人ではなく、後世の者が蔡文姫を題材にして作った物という説もまた有力です。


 ただ劉豹は、その漢風の名前しか残っていない(多羅克という名は私の創作)事から察する人もいるかと思いますが、劉姓を名乗った最初の匈奴として記録されていて、息子の劉淵への教育なども含め、漢人文化へかなり傾倒していた事が見受けられるのですよね。


 また劉豹も蔡文姫も、正確な年齢は不明ながら、前後の記述などから算出すると、長安で出会った時は二人とも十代前半~中頃という結果になるのです。

 そこから若い少年少女の出会いを想像した事もあり「実はこれ純愛なんじゃないの……?」と思い至った結果、今回のこのお話のアイデアへと辿り着いたわけです。

 ※勿論、本場中国の創作を探せば、この二人が純愛だったお話も無くはないのですが……。



 そしてちょうど時代も同じだったこともあり、連載中の長編『西涼女侠伝』でも先行して多羅克、呼廚泉をゲスト出演させたりもしております。


▼『西涼女侠伝』

https://kakuyomu.jp/works/16816452218737394790


 本作中で、南匈奴が曹操への帰順を悩んでいる時、偶然出会った漢人の旅人に助言を貰ったという一文があるのですが、お察しの通り、上記『西涼女侠伝』の主人公一行の事でございますね。


 本来はこの話も『西涼女侠伝』に含め、ゲスト出演した多羅克に語らせようかと思ったのですが、南匈奴の帰順自体はそれよりも後の話ですし、多羅克の思い出話として延々と本筋でもない蔡文姫の事を語らせると、流石に軸がブレると思ったので、短編として独立させた次第です。



 それとタイトルにも使用した、劉豹と曹操が作中で詠んだ詩。


「ただ鴛鴦を羨みて、永遠の命は羨まず」


 これは現代中国でも歌謡曲などで使われるほどの慣用句として有名な「只羨鴛鴦不羨仙」という七言詩を、私が七五調二行詩の和歌風に意訳した物です。

 この言葉の初出は唐代という話なので、実際には曹操らが詠んだ物ではないという点、そこはご注意をば。



 などと、いつも通り宣伝やら注釈やらをぶっこみつつでしたが、改めてお付き合いありがとうございました。

 それでは、いずれまた別な物語にて!






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