なぜ歴史ジャンルを書くのか

 タイトルから匂わせてるほどは、別に御大層な理由なんてなくて、凄く個人的な話です。


 歴史ジャンルをなぜ書くのかという点は、読む側として歴史ジャンルを好む点と重なるのですが、一言で言えば…


「設定を考える手間、覚える手間」


 これに尽きるんですよね。


 別に架空世界を舞台にしたファンタジーとかを否定はしないし、そこを好きでやってる人はいいと思うんですよ。お互い好きな所で頑張りましょうって感じで。


 ただ毎回毎回全ての設定や人物を考えたり覚えたりするのが面倒というのが自分の中で相当の比重で、何がツラいかと言うとその作品の外では使えない知識なのがしんどいなぁ、などと思ってしまうのですよ。


 その点で歴史小説は、史書がベースになるので、知らない知識を覚えても、他の作品で同じものとばったり出会う事もあるし、元からよく知ってる時代ならば史実人物が登場する度に「お、あいつだ!」が繰り返されるんですよね。


 言うなれば「史実」という名の原作があって、その二次創作って感覚ですよ。


「歴史もの、書いてる本人、二次創作」


 歴史ジャンル書いてる人って、大体はこの感覚だと思います。


 そんな感じに国や時代問わず色々な歴史創作に触れていくと、書店の史書コーナーが全て設定資料集に化けるんですわ。人物の列伝から、その時代の地理学、社会学、全てが創作を楽しむための材料に変わるんですよ。


 楽しむのも勿論ですが、自ら書くにあたっても、その時代の地図、社会規範、社会構造、インフラ、そこで起きた事件や戦争、そこに関わった人々の活躍、策略に戦術……。これら全て調べればすぐに出てきて、そこに肉付けしたりするのが歴史小説ってわけですな。

 読む側だったとしても、気になった所をコピペしてググるだけですぐ解説が出てきますしね。


 これがファンタジーだと全てをイチから作って、自分の文章の中だけで全てを完結させないといけない。これはもう、茨の道が過ぎますよ。これを全て作ってるなんて、やってる人は尊敬しますよホント(一部に対して大いなる皮肉)


 しかもそんなオタ活の延長なのに、覚えた知識は周りから「教養」と言われて憚る必要がほとんど無いんですよね。その楽しみに目覚めちゃうと、まぁ後戻りが効かなくなる。


 ただし「原作を知らない人が二次創作にいきなり触れちゃうケース」と同じ事故が容易に起こりうるので、いくら「ググれば出てくる」とは言え、その時代に触れた事が無い人でも理解できるように体裁を整えるってのは気を付けるべき所ではありますね。自戒も込めて。この点は歴史ジャンルに限った話じゃないですけども。


 ただそれを恐れすぎて「説明しすぎかな?」と、ドツボにハマる事もしばしばありますが……。文章って難しいね!





追記


 歴史小説における史実人物の描写(外見、口調など)って、作家さんの個性が出るもんですが、同じ時代を自分も書く時にそれをそのまま採用するのは、やはりウチヨソコラボになるのかな?


 この辺は山田風太郎の『魔界転生(おぼろ忍法帖)』で登場する武芸者などが有名ですね。


 宮本武蔵と宝蔵院胤舜は、吉川英治の『宮本武蔵』から。


 柳生宗矩と柳生利厳は、五味康祐の『柳生武芸帖』から。


 その他にも立川文庫の剣豪小説から荒木又右衛門や田宮坊太郎なども含め、複数の先行作品から人物描写(登場シーンでの意図的な文体模倣も含め)そのまま持ってきてたりする大いなる前例があったりします。


 似たような時代(というか俺の場合はほぼ上古中国史)を書いてる当サイトの作家さんと、そういう形で陰に陽に交流できたら楽しそうだなぁなどと夢想する次第。





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