「創作の三大要素」についての私見

 タイトルにある三大要素とは


「キャラクター」「ストーリー」「世界観」の三つで、それとは別に「テーマ」を置く。


 …という事らしい。


 明確にコレと意識していたわけではないが、今まで気を付けていた事の総括も含めて、個別に私見を述べて行こうと思う。


 まず「キャラクター」と「ストーリー」が相互に作用しあう関係であり、「世界観」はその土台と考える。


 そもそも「世界観」は、架空世界に限らず、現実が舞台なら「国や時代」がそれに該当する。そうした世界観が変われば、文化や社会規範も変わるし、当然ながらキャラクター造形やストーリーの骨子も、その上に組み立てられていく。その意味で土台の役割になる。


 これには「この世界観をやりたい。その為にストーリーやキャラクターを設計する」という考え方と、「描きたいキャラクターやストーリーがあり、それが活かせる世界観にする」という二種類があると思う。自分の生息する歴史小説・伝奇小説なんかはどちらのパターンもあるのだが、架空世界の場合だと大抵は後者であろうと思う。




 さて、その上に組まれる「キャラクター」と「ストーリー」なわけだが、相互に関わるというのは、互いを活かす為に必要な表裏一体の関係なわけだ。

 美しいストーリーを描くには、必要不可欠なパーツとしてキャラクターが必要であるし、キャラクターを魅力的・立体的に描くには、その為のストーリー展開が必須なわけである。




 「キャラクター」の重要性に関しては、それが確立されてしまえば、もはや状況を与えるだけで事、そして上手く読者にキャラクターを気に入ってもらえさえすれば、例えストーリーが中弛なかだるみしても割と気にならなくなるという事は強い。


 各々が今までに触れてきた作品の中から、自分の好きなキャラクターを思い浮かべてもらえればわかると思うが、気に入ったキャラクターならば、日常の他愛のないやりとりでさえ楽しめてしまう物。

 これが、どんな人物かさえ分からない初見キャラクターで、いきなり日常描写から始められても、まぁタルいだけであるw


 その意味では、どうしても発生する中弛みなら別として、意図的に日常回を挟むというのは、よほど登場キャラクターが読者に好かれてるという自信がある時だけにしておくべきであろう。




 「ストーリー」に関しては、上記の通りキャラクターに支えられる部分も多いが、設計段階こそ非常に重要で、それこそキャラクター人気だけに頼って半永久的に続く日常系でもない限り、始まりと終わりは絶対に最初から想定しておくべきであろう。


 目的地も定めずに出発し、行き当たりばったりの旅をした所で、それが素晴らしい旅になるなど奇跡的な確率。大抵の場合は迷子になるのがオチである。

 物語をどう終わらせるかのヴィジョンを持った上で書き始めるべきで、なんなら下書きで最終話をまず書いて、そこに向かって進むくらいやってもいい。


 そして前述の通りキャラクターに助けられる面もあるが、そのキャラクターを読者に好いてもらう為にはストーリーは絶対に必要であるし、そしてそのストーリーに対してキャラクターが関わっていく必然性は個別に描いてもいいくらいだ。

 (ただあまりに本筋から外れて脱線すると、それはそれで読者のストレスなのでほどほどにだが)


 一番マズいのは「コイツ登場する必要あった?」という物。

 現実世界においては、特定の事件などを切り取った際、そういう立ち位置の人物だってもちろん存在するわけだが、物語として描く場合はメインキャラクターとしてフォーカスしない方が良いという話だ。


 魅力的に描けていないキャラクターであれば何の意味もない無駄な存在であるし、仮に人物設計が成功して人気キャラになっていたとしたら、それは余計に気を付けるべきである。

 むしろ人気を得ている時の方が「魅力的なキャラなのにストーリープロット上で存在する意味がなかった」という、キャラを好きになってくれた読者を地獄に落とす鬼畜の所業になってしまう…。




 とまぁ、三大要素の関係はそんな感じで、別枠として設定されている「テーマ」についてだが、これに関しては黒澤明監督の言葉を引用したい。

 新作発表での取材記者に「今回の作品のテーマを一言で言うと?」と聞かれた黒澤監督。


「一言で言えるなら映画にしてない」


 こう返している。


 彼の映画も含め、世の中に傑作と言われている作品は、それを観た(読んだ)人の人生や価値観に影響を与えるほどの力があるが、それを一言で説明しろと言われると非常に難しい。仮に言葉にしても、作品自体を観た時と同じレベルで心に刺さるかと言うと、まぁまず無理である。


 逆に自作品のテーマについて作者がベラベラと雄弁に語っている時は「作品に自信が無いんだな…」と思うようにしている。その手の作者の作品は、ただ説教臭いだけで、あんまり心に刺さらないケースが多い…。


 まぁ娯楽作品に徹するならば、極論として明確なテーマは無くてもいいと思う。

 例え決めていなくても、ストーリーやキャラクターの設計を丁寧に作っているならば、作者の感情や思想は嫌でも入るのだし。




 などという感じで思う所をまとめてみたわけだが、「その上でお前の作品はどうなんだ?」と訊かれると、うん、どうなんだろうねぇ…。そこら辺は読者の批評に委ねるとして(姑息!)、自戒を込めて文章に起こした次第。





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