「何処かの誰かの 鼓動が聞こえますか?!」ここはとある街 いつもと何も変わらない景色 そんな場所 『ねぇねぇ』
cats
時は今
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ここはとある街
いつもと何も変わらない景色
そんな場所
『ねぇねぇ』
探したいものがありますか?
探したい人がいますか?
行きたい所がありますか?
行きたい時がありますか?
手に掴みたい何かがありますか?
手に取り戻したい何かがありますか?
『ねぇねぇ』
探しますか?
探せそうですか?
行きますか?
行けそうですか?
掴みますか?取り戻しますか?
掴めそうですか?取り戻せそうですか?
時は今
いつもと同じ時を刻む
そんな時
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『成る程 そうか 早いな もうか』
白い綿毛が緩い風にまさにこの瞬間今にもふわっと
『どっちだ おぃ どっちへ 翔ぶんだ』
花言葉は「愛の神託」「別離」
『ダンデライオン ふっ』
その瞬間空に引き込まれるようにすうっと舞い翔んだ
『ふうっー そうか 行ったか』
そう1週間を生きる
そして1ヶ月身支度をし
その後旅立つ
それから自然任せで揺られ揺られ長い長い眠りにつく
寒さを凌ぎ暖かさを心待ちに芽吹き目覚める
新たに1年後
新たな場所で
1週間を生きる
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『いいな 自由で』
『いや 不自由か』
すうっと舞い翔んだ白い綿毛を重い目が追う
何に問うのか誰に問うのか
自由だよ
不自由だよ
それぞれの回答の行く末が重い頭の中を行く
何が応えてくれるのか誰が応えてくれるのか
『辿り着かないな』
ふわふわと不安定に翔ぶ綿毛がいとおしく
『頑張れ』
力なくも着々と翔ぶ綿毛が頼もしく
僅かに斜に差す日が綿毛を斜に照らし
綿毛をはこぶ緩い風が季節の香りをはこぶ
『いい香りだ』
暫くの間包み込まれた
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暫く舞っていた綿毛が不意にすうっと落ちた
『ん!?』
さあっと重い目が鋭く見開き着地点を確定させる
『どうしたどうした』
『お仕舞いか?!』
ゆっくりと軽い足取りで着地点に向かう
ただただ見失わない様に1点だけを見つめて
『いた』
『どうした』
緩い風が頬をゆっくりと過ぎ去る時季節が香る
着地点は程よく草の生える土の雑種地
『なのに』
殆んど見当たらない小さな石の上
『よりによって』
心配をよそに綿毛は小さな石の上でゆらりゆらりと
『どうするんだ』
そこから落ちるわけでもそこから翔ぶわけでも
『呑気だな』
僅かに頬が緩むのを感じた
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『そこから 何が見えるんだ?』
ここからは何も見えない
『そこから 何が聞こえるんだ?』
ここからは何も聞こえない
いつの間にか風は弱まりやがて止まるだろう
そのうちに綿毛も風に合わせて止まるだろう
『よし』
ゆっくりと腰を降ろしそっと覗き込む
『一緒だな』
『なんとなく』
励ましているのかはたまた励まされているのか
慰めているのかはたまた慰められているのか
何が何になのか
誰が誰になのか
『暫く そのまま 暫く そのまま』
『いいよ うん いいよ』
暫くはこのままでいいだろ
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『ふうっー』
どの位の時が過ぎただろう
僅かに斜に差す日がより斜めに差し
それなりの時の経過を思わせる
綿毛をはこぶ緩い風の向きが変わり
それなりに時の経過を分からせる
『頑張ってきたもんな』
『頑張っているもんな』
綺麗に花を咲かせたもんな
綺麗な綿毛になれたもんな
『また きっと輝くさ』
また 必ず咲くさ
ゆっくりと腰を上げてすうっと見上げる
ただただ目に焼き付ける様にうっすらな月を
『昼の月もいいな』
昼の太陽ではなく
夜の星ではなく
夜の月ではなく
『それでいいよ』
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『・・・・・・・・』
白い綿毛が緩い風にまさにこの瞬間今にもふわっと
『・・・・・・・・』
花言葉は「愛の神託」「別離」
『ダンデライオン ・・・・』
その瞬間空に引き込まれるようにすうっと舞い翔んだ
『・・・・・・・・』
そう1週間を生きる
そして1ヶ月身支度をし
その後旅立つ
それから自然任せで揺られ揺られ長い長い眠りにつく
寒さを凌ぎ暖かさを心待ちに芽吹き目覚める
新たに1年後
新たな場所で
1週間を生きる
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ここはとある街
いつもと何も変わらない景色
そんな場所
『ねぇねぇ』
探したいものがありましたか?
探したい人がいましたか?
行きたい所がありましたか?
行きたい時がありましたか?
手に掴みたい何かがありましたか?
手に取り戻したい何かがありましたか?
『ねぇねぇ』
探しましたか?
探しましたね?
行きましたか?
行きましたね?
掴みましたか?取り戻しましたか?
掴みましたね?取り戻しましたね?
時は今
いつもと同じ時を刻む
そんな時
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「何処かの誰かの 鼓動が聞こえますか?!」ここはとある街 いつもと何も変わらない景色 そんな場所 『ねぇねぇ』 cats @dum57567
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