第77話・もう1人の元・勇者・中編

コーヒーを口にしたリアンダーはカップ置くと、

悔し気な表情を浮かべながら話の続きをして行った・・・。


~ 回 想 ~


豚国王の命が下ってからその翌日・・・。

名も無き100名の騎士達を伴ってリアンダーは出発した。


そして2週間後・・・。

リアンダー達が洞窟に到着すると、すぐさま『ダンジョン攻略』が始まった。


本来であれば、到着した直後に『ダンジョン』に潜る事はない。

此処までの旅路を癒し、数日の偵察を行い、それから作戦を立てた後・・・。

『ダンジョン攻略』となるのだが・・・。


今回はそうはならなかった・・・。


名も無き100名の騎士達を統括する『団長』が、

勇者であるリアンダーを無視し、潜ると言い始めたのだった・・・。


その騎士団長の名は・・・『ガナザ』と言う・・・。

筋肉質でマッチョな体格のいい男だった。


ガナザは到着したばかりの騎士達にすぐさま命令を出すと、

リアンダーの苦言に耳を傾ける事もせず、『攻略』の指示を出したのだった。


「ま、待ってっ!団長さんっ!?

 いきなり全員で潜ると言うのですかっ!?

 そんな無茶なっ!?」


「はぁ?何だ・・・貴様?

 その強さは我らが国王陛下によって与えられた力であろう?

 ただの『村娘』だった者が、何を偉そうに・・・」


「た、確かに私はただ『村の娘』でしたが、

 でも、今は・・・」


「五月蠅いっ!貴様・・・。

 私は国王陛下に直接、この騎士達の『団長』をと賜ったのだぞっ!?

 言わば私の言う言葉は『国王陛下の御言葉』だと知れっ!」


「なっ!?そ、そんなバカげた事を・・・」


ガナザと言う男の無茶苦茶な発言に、

リアンダーがそう声を漏らすもガナザは聞かなかったのだ・・・。


リアンダーは慌ててこの様子を見守る騎士達へと向けたが、

皆は視線を外し、誰もリアンダーの味方になるような者達はいなかった。


そしてガナザは皆に言った・・・。


「弱いヤツから入って行けっ!経験値を稼がせてやるっ!」


そんな暴言を吐いたガナザにリアンダーは食ってかかったが、

何かにつけて『国王陛下の・・・』と言われてしまい、押し黙ってしまった。


そしてその後・・・。

リアンダーの予想していた悲劇が訪れたのだった・・・。


~ 回 想 終 了 ~



「あ、有り得ない・・・」


呻くようにそう口を開いたのは、

作業台に固定されているコナギだった・・・。


「えぇ、私は潜ってからも何度も進言したわ。

 それでも聞き入れられず・・・」


「・・・なんてヤツなんだっ!」


「私が国王の影に怯まなければ、

 まだあんな事にはならなかっはずなのに・・・」


「リアンダーさん・・・」


そしてリアンダーの話の続きが始まった・・・。



~ 回 想 ~


一番後方に居たガナザとリアンダー・・・。


先頭では戦いが始まっていたが、

一番後ろに居たリアンダーにはどうする事も出来なかった・・・。


「団長さんっ!?こ、このままでは・・・」


「五月蠅いぞっ!村娘っ!

 貴様はこの私がいいと言うまでこの場に居ろっ!」


「そ、そんなバカなっ!?」


「俺は今、弱いヤツらを鍛えてやっているのだっ!

 この程度の魔物如きに後れを取るようではっ!

 国王陛下のお役には立てんっ!」


「何をバカな事を言っているのですかっ!?

 こんな狭いダンジョンに100人も一度に・・・

 こんなバカな攻略は今すぐ止めて下さいっ!

 む、無駄に騎士達の命がっ!」


「黙れぇぇぇっ!村娘ーっ!

 まだダンジョンは序盤だっ!力押しで何とでもなるっ!」


ガナザが狂人にでもなったように、血走る目をリアンダーに向けそう吠えた。


(クッ・・・こ、この男はダメだ・・・。

 早くしないと・・・み、皆がっ!?

 ま、迷っている暇はない・・・私がみんなを護らないとっ!)


『クッ・・・』っと再びリアンダーがそう漏らした時、

ガナザのその鋭い視線が向けられた・・・。


そして怒りが籠った低い声でこう言った・・・。


「貴様が今動けば・・・。

 俺の目の前に居る者共を斬り伏せる・・・」


「っ!?」


「聞こえなかったのか?・・・村娘?

 貴様は我が国のただのお飾りに過ぎんのだよ・・・」


「・・・お飾り・・・だと?」


「あぁ・・・ふっふっふっ。

 貴様は何も知らんようだから教えてやろう。

 我が国王陛下はこうおっしゃられていた・・・。

 『女如きが勇者などあってはならぬ・・・』とな?」


「・・・・・」


ガナザの発現に唖然としたリアンダーはただ、

眼前で不敵に笑みを浮かべる男を見て、

力無く放心していただけだった・・・。


すると前方から騎士の声が飛んで来た。


『遭遇した魔物を殲滅致しましたぁぁぁっ!』


叫び声にも似たそんな騎士の声がガナザの耳に届くと、

放心するリアンダーを置いて進行を開始した・・・。


そして足を止め振り返りもせずガナザはこう言った・・・。


『おっと、忘れていた・・・。

 何でも我が国王陛下は新たに『男の勇者』を召喚するらしいぞ?

 貴様は用済みだ・・・クックックッ・・・』


とても愉快気にそう話すガナザの言葉に、

リアンダーは全身の力が抜け落ち、そのまま膝から崩れ落ちた。


~ 回 想 終 了 ~



「・・・・・」


そう話したリアンダーの目に、涙が滲んでいるのが見て取れた・・・。


そんなリアンダーを目にしたコナギは怒りの形相に変わり、

強く右手を握り締めていた・・・。


そして吐き出すように呟いた。


『・・・許せない』と。


リアンダーはそんなコナギの言葉を聞きながら顏を背けると、

目に滲んだ涙を拭っていた。


そして大きく深呼吸をすると、哀し気に笑って見せた。


『・・・有難う御座います。コナギ様・・・。

 こんな私なんかの為に怒って下さって・・・』


とても印象的だった・・・。


コナギはそう哀し気な微笑みを浮かべるリアンダーに、

『ゴクリ』と喉を鳴らし、

儚げに見せたその笑顔が今にも壊れそうだったからだった・・・。


そして一瞬、そんなリアンダーとの視線が交わると、

恥ずかしかったのか、顔を背け冷めたコーヒーを手にしながら口を開いた。


「そ、それで・・・ど、どうなったのですか?」


恥ずかしさからか・・・。

リアンダーの顏をまともに見られなかったコナギがそう言うと、

少し肩を竦めながら『どうもこうもないわ・・・』と、そう言うと、

何かを思い出しながら口を開いていった・・・。


「序盤の・・・。

 いえ、最初の戦闘で既に10名もの命を散らせたわ・・・」


「は?最初の戦闘でどうして10名もの命が?」


半ば呆れたような声でそう言ったコナギに、

リアンダーは肩を竦めた。


「・・・簡単な事よ?

 あんな狭い場所で戦ったら、思うように動けないのは当然、

 ろくに動き回る事も出来ず、また、ろくに回避も出来ない、

 そんな状態だもの・・・。

 でも逆に言うと、それくらいで済んだのはもはや奇跡としか・・・」



~ 回 想 ~


崩れ落ちたリアンダーを尻目に、

ガナザ達騎士団は進行を継続して行った・・・。


だが、打ちひしがれたリアンダーは立つ事すら出来ず、

その視線は石がゴロゴロする地面を見つめていただけだった・・・。


するとリアンダーの頭の中に、

去年聞いた声が流れて来た・・・。


{・・・貴女は一体何をしている?

 女神であるこの私が、折角退屈なただの『村娘』に『天啓』を与えてやったのに、

 何をこんな所で躓いているのかしら~?}


「そ、その声は・・・め、女神様っ!?」


慌てたリアンダーは勢いよく頭を上げると、

周辺を見渡しその声の主を探した・・・。


だが、リアンダーの目に映るのは、

ダンジョンの陰湿な空間と、先の戦闘で命を散らした騎士達だけだった・・・。


{・・・私がそんな不潔で汚い場所に居る訳ないでしょ?

 バカなの?やっぱりこれだからただの『村娘』ってのは・・・}


そう見下す物言いをした女神の言葉など耳に入らないのか、

リアンダーは洞窟の天井に向かって声を張り上げた。


「め、女神様っ!?

 ど、どうしてこんな私に『勇者』などという大それた『天啓』をっ!?」


苦しそうな表情でそう声を張り上げたリアンダーに、

女神は『あぁ~・・・』と何か言い淀んでいた。


そして『面倒臭い娘ね~?』と言うと、

嘲笑うかのように感極まった声を張り上げた。


{どうして~って、そりゃ~・・・あんた。

 楽しそうだからに決まっているでしょう~?}


「なっ!?た、たのし・・・そう・・・?」


{えぇ~そうよ♪

 女神ってとっても退屈なのよね~♪

 だからその~暇つぶしに・・・ね?

 貧乏ったらしい村娘に『天啓』を与えたら、

 一体どうなるのかな~・・・ってね♪}


「そ、そん・・・な・・・。

 め、女神様とあろう者が・・・そんな・・・」


更に打ちひしがれたリアンダーが大粒の涙を流し嘆いていると、

女神は『鬱陶しいわね・・・』とあからさまに不機嫌となった・・・。


{あんたは『勇者』として頑張ればいいのよっ!

 適当とは言え、私があんたを『勇者』として選んだのよっ!

 ・・・わかってるのかしら?

 お前達人族如きがっ!この女神に逆らおうって言うの?

 女神であるこの私の『家畜』として、楽しませてくれたらいいのよっ!

 だからさっさと立ち上がって、先へ進みなさいっ!

 『天啓』を下した私に恥をかかせないでよっ!}


「・・・うぐぅ」


女神の発現とは思えないその言葉に、

リアンダーは唇を噛み締め血を滴らせると、

フラフラと立ち上がった・・・。


{・・・ほらっ!すぐに後を追いなさいよっ!

 全く・・・これだから人族ってのはっ!}


最後にそう言い荒すと、女神の声は途絶え、

怒りに身体を震わせるリアンダーは涙を拭うと騎士団達を追ったのだった・・・。


~ 回 想 終 了 ~



此処までの話を聞き終えたコナギは、

作業台に固定されながらもその怒りに打ち震えていた・・・。


「何だよっ!それはぁぁぁぁぁぁっ!?」


「・・・・・」


「ふっ、ふざけるなぁぁぁっ!

 そ、その女神の名を教えてくださいっ!

 い、いつの日か必ずっ!

 この僕がその女神をぶっっっとばぁぁぁすっ!」


そう激怒するコナギを見たリアンダーは、

驚きを隠せず、口が『パクパク』と動いていた・・・。


「・・・って・・・あれ?

 リアンダーさん、一体どうしたんですか?

 口が・・・鯉みたいになってますよ?」


目をパチクリさせながらそう言ったコナギに、

リアンダー『コホン』と咳払いをすると表情を整え口を開いた。


「えっと・・・ですね?

 コナギ様がそのように激昂するとは夢にも思いませんでしたから・・・」


「・・・えっ?そう・・・ですか?

 そんなに僕・・・変でした?」


「クスッ♪」


「・・・ほ、ほぇ?」


突然笑ったリアンダーの顔が、

その幼い顏と釣り合っており、コナギは暖かな笑みを浮かべた。


「・・・リアンダーさんもそんなふうに笑うのですね?

 安心しました・・・。

 いつも無表情がデフォだったので・・・」


そう温かい笑顔で言ったコナギに、

リアンダーは少し驚くとポツリと・・・呟いた。


「・・・あの人と同じ事言うのね?」


「・・・はい?今なんて?」


目を閉じ無表情に戻ったリアンダーは、

コナギの問いに答える事はなかった・・・。


(そう・・・あの時のあの人も、そう言って屈託のない笑みを浮かべて言った。

 『お前ってばそんなふうに笑えんだな~』

 フフフ・・・。

 そう言って笑った人を私は・・・)


何か物思いにふけったリアンダーだったが、

静かに目を閉じると記憶を巡り始め、そして更に話を続けた・・・。



~ 回 想 ~


『勇者の能力』を生かし、全速力で追いかける中、

ガナザが率いる騎士団は大苦戦を強いられていた・・・。


「き、貴様らぁぁぁっ!何をやっておるかぁぁぁっ!

 こ、こんな魔物如きにいつまで手こずっておるのだぁぁぁっ!」


最後方でそう激昂するガナザの声が響き渡る中、

最前線で戦う騎士達は、『ラフレシア』に似た植物の魔物に苦戦していた・・・。


「こ、こいつっ!?花びらが異常に分厚く・・・き、斬れないっ!?」


「そ、それに、こ、この匂い・・・。

 く、臭くてたまらんっ!

 そ、それに・・・さ、さっきから・・・ち、力が・・・」


片手で鼻を多い戦う騎士達は、植物の魔物から放出された『匂い』によって、

苦戦を強いられていた・・・。


すると、突然その『ラフレシア』に似た植物の魔物の『つぼみ』らしきモノが、

みるみるうちに肥大して行くと、突然『パーンッ!』と弾け飛んだ・・・。


「なっ、何だっ!?一体何がっ!?」


そう声を挙げた最前列の騎士は、盾を突き出しながら、

防御態勢を取ったのだが・・・。


「うわぁぁぁぁっ!?」


「ど、どうしたっ!?」


突然最前列に居た騎士がそう叫び声を挙げると、

ガクガクと震えながら声をかけた騎士に振り返った・・・。


『シュゥゥゥゥ』


「なっ!?お、お前・・・どうして・・・」


騎士は驚いた・・・。

いや、恐怖したのだった・・・。


振り返った騎士の顏には無数の穴が開いており、

その開いた穴の中から、植物のツタのようなモノが、

ウニョウニョと蠢いていたからだった・・・。


「うわぁぁぁぁっ!?」


その光景を垣間見た前線に居る騎士達は恐怖に染まり、

一目散に逃走を計ったのだが、それは出来なかった・・・。


「ど、どいてくれぇぇぇぇっ!

 こ、こんな所に居たら・・・す、すぐに死んでしまうぅぅぅぅっ!

 ど、どけぇぇぇぇっ!は、早く・・・早くどいてくれぇぇぇっ!」


大きな盾を放り出し逃走を計るもこれだけの人数・・・。

そもそも逃走を計る事などは出来なかった。


『ぐぁぁぁぁっ!?』と最前線から騎士達の断末魔の声がガナザへと届くも、

怒りの形相を浮かべるその男には『軟弱者』としか理解出来ていなかったのだ。


「俺の・・・俺様の言う事が聞けないのかぁぁぁっ!?

 に、逃げるヤツはこの騎士団長のガナザが、

 国王陛下に変わって斬って捨てるっ!

 き、貴様らに退却の文字はないのだっ!

 た、戦えっ!戦って戦ってっ!戦い抜くのだぁぁぁっ!」


そう怒鳴るガナザを他所に、最前線の騎士達はパニックに陥り、

そんなガナザの戯言など届く事はなかった。


「も、もうダメだぁぁぁぁっ!」


隊列の中盤辺りからの声だろうか・・・。

そんな悲鳴にも似た声がガナザに届いた時、

後方から一筋の『白い光』が迫っていた・・・。


(・・・み、見つけたっ!)


凄まじい速度で迫って来たリアンダーは、

スキルを使用しながら現状認識を理解した・・・。


(・・・あ、あれのツタのようなモノは?)


リアンダーは走りながらも『鑑定』を使用したが、

それが何かはわからなかった・・・。


(・・・フッ・・・あんなモノ・・・。

 当たらなければどうと言う事はないわね?

 でも、万が一の為に・・・)


リアンダーの顔付きが変わると、身体から更に神力を放出し始め、

そして・・・吠えた。


『進化スキル・・・ミューテーションッ!』


一瞬激しい光に包まれたリアンダーは、

その光の中で大きくその容姿を変異させた・・・。


『ズザザザザァァァァッ!』


激しく滑りながらガナザの後方に姿を現したリアンダーに、

口を大きく開け茫然としていた・・・。


「・・・き、貴様・・・だ、誰だ?」


『チッ』


ガナザの言葉をスルーしたリアンダーはそう舌打ちをすると、

このダンジョンの壁面と天井を駆け、最前線へと到着した。


『パーンッ!』


『ズシャッ!』とリアンダーが着地した瞬間・・・。

その魔物の蕾が再び弾け飛んだ時、リアンダーは魔法の『スロー』を使用した。


この魔法はその言葉のまま・・・。

少しの間、時間を遅くすると言う魔法だった。


そして魔物が弾き飛ばしたモノは、

どうやら植物の種のようだった・・・。


瞬時に理解したリアンダーは腰から剣を抜きながら、

パニックになっている騎士達を意識した。


(・・・ここで避けたら騎士達は)


一瞬でそう判断したリアンダーの行動は速かった・・・。

落ちていた騎士の剣を足で救い上げながら掴むと、

ゆっくりと迫る魔物の種を斬り捨てて行った・・・。


「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」


そして魔物の種を殲滅した瞬間、

『スロー』の魔法は解け、通常状態へと戻った・・・。


『ヒュンヒュン』と『ラフレシア』に似た魔物のツタがリアンダーを襲うも、

瞬く間に切り刻むリアンダーに後方の騎士達から歓声が響いた・・・。


(あのスローは早々何度も使えない。

 あれは神力の消費がとても激しいのよ・・・。

 でもまたあの『種』を飛ばされたら・・・。

 こうなったら・・・)


そんな歓声が耳に届かないリアンダーは一気に勝負を決めるべく、

神力を一気に放出し駆け出した・・・。


『・・・パチン』


皆は唖然としていた・・・。


何故ならリアンダーの身体が一瞬光ったかと思ったら、

その姿は既にそこにはなく、魔物の後方で背中を見せたまま、

指を『パチン』と弾いたからだった・・・。


『・・・フラッシング・スラッシュ。

 コレがあなたを殺した技よ。

 私の言葉が理解出来ていたら・・・覚えておきなさい』


『ブシュォォォォッ!』


『ギュュュュッ!』


その植物の魔物は『白い鮮血』を噴き出しながら、

地面に倒れ身体を溶かし始めた・・・。


『ふぅ~・・・』っと、リアンダーが息を吐きながら納刀し、

後方で沈黙する騎士達に振り返ると、

騎士の1人が驚いた顔を見せながら口を開いた・・・。


「あ、あんたは・・・だ、誰だ?」


そう騎士が呟くように言った・・・。


そこには20歳前後の美しい女性が立って居たからだった・・・。


長い金髪を後ろで束ね、

その整った顔立ちとそのクールな表情に、

騎士達は何も言葉が出なかったのだった・・・。


そして極めつけは・・・。

リアンダーのその瞳。


青いその瞳からは、

ゆらゆらと『白銀の神力』が目尻から立ち昇っていたからだった・・・。


すると『ハッ!』と我に返った騎士の1人がこう言った・・・。


「お、俺・・・勇者様の戦いで生き残った友が居るのだが・・・。

 そ、そいつは言っていた・・・。

 その真の勇者は自らの身体を変異させ、大人の身体になって戦うと・・・」


その騎士の声に皆がその騎士を見た後、

視線は眼前に立つ1人の美しいその女性に注がれた・・・。


そして再びその騎士は言った・・・。


『・・・白雷のリアンダー』


騎士達は男が言った通り名を聞いた瞬間・・・。


『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』と、

一頻り大きな歓声を挙げ『リアンターッ!リアンダーッ!』と、

その名を連呼しながら大いに喜んだのだった・・・。


その歓声にリアンダーは少し頬を赤く染めながら顏を背けると、

照れながら『リリース』と呟いた。


そして再び一瞬激しく身体を光らせると、

リアンダーの身体は小さくなり、元の13歳の少女へと戻ったのだった・・・。


~ 回 想 終了 ~



リアンダーの話を聞いたコナギは、

やや顔を赤く染めながら『うぉぉぉぉぉっ!』と、

その時の騎士達のように歓声の声を挙げた。


「かっ、かっけぇぇぇぇっ!

 『白雷のリアンダーっ!』・・・キ、キタァァァァァ♪」


そんなコナギにリアンダーは顏を真っ赤にし、

背中を見せコナギの視線から逃れたのだった・・・。


「あっ!?リ、リアンダーさん・・・そんなに怒らなくても・・・」


そう声を掛けたのだが、その時コナギは見た・・・。


背中を見せ表情がわからないようにしたつもりだったかも知れないが、

ただ1つ・・・リアンダーはうっかりしていた。

自分を認めてくれたコナギに対し、顔が思わず綻んだ事を・・・。


そんなリアンダーに頬を緩めたコナギは、

可愛らしいその女性に思わず声に出てしまった・・・。


「・・・耳、真っ赤ですよ♪」


『かぁぁぁぁぁっ!?』


頭から湯気でも出そうなほど顔を真っ赤にしたリアンダーは、

勢いよく立ち上がると、

『ちょ、ちょちょちょ・・・ちょっとトイレッ!』と言って、

ユウナギの開発室から退出したのだった・・・。


そして1人、ポツンと取り残されたコナギは、

リアンダーの可愛らしさに笑みを浮かべながら、

冷めたコーヒーを口にしたのだった・・・。

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