第70話・閉鎖空間・後編

「・・・やってやろうじゃんか」


そう呻くように呟いたユウナギは奥歯を『ギチッ』と強く噛むと、

魔力を全身に纏わせた・・・。


(さっきの防御で冥界の神力を消費したからな~・・・

 ちーとばっかし節約しねーと・・・)


眉間に皺を寄せそう間が得ていると、

対峙するミラーズから声が挙がった・・・。


「手加減・・・しないわよ?」


笑顔を浮かべウインクを見せるミラーズに、

ユウナギは顏を引き攣らせ『おとといきやがれっ!』と口にしていた。


そんなユウナギの言葉に首を傾げたミラーズだったが、

全身に冥界の神力を纏わせると『はぁぁぁっ!』と声を挙げながら突進して来た。


「させっかよっ!身体強化っ!」


戦闘において基本中の基本である『身体強化』を使用すると、

ユウナギは勢いよく加速し突進して来るミラーズと激突した。


『ドカッ!』と鈍い音を立て激突した2人は、

力比べをするかのようにお互いに微動だにしなかった。


「・・・ふ~ん、魔力だけで挑んだ割には・・・やるじゃない?」


「あ、あったりめーよっ!

 てめーなんざ俺様の魔力だけでもやり合えんだよっ!」


「フフフッ・・・あ~らそう?

 私はまだ・・・コレっぽっちも力なんて使ってないわよ?」


「・・・ちっ!ウラァァァァッ!」


ミラーズの挑発する言葉にまんまと乗ってしまったユウナギは、

更に魔力の放出量を上げ、強引にミラーズを圧し始めた・・・。


だが・・・。


「フフフッ・・・か~わいい♪

 こんな挑発に乗ってくれるなんて・・・フフフッ♪」


そう笑みを浮かべたミラーズは、

そう言いながら圧して来るユウナギの力の方向ほ変えると、

その態勢はいとも簡単に崩れ前のめりとなってしまった・・・。


「うをっ!?」


前にツンのめったユウナギに追い打ちをかけるべく、

ミラーズは上空へ一回転するとユウナギの後頭部に蹴りを放った。


『シュッ!』


『ドカッ!』


「ぐわっ!」


『ドサァァァ』


後頭部をいとも簡単に蹴られたユウナギは、

そのまま地面を顔面から滑って行ってしまった・・・。


「っつ!・・・痛ててててて・・・くっそぉ・・・

 顔面スライディングなんて野球でもなった事ねーのによっ!」


蹴られた後頭部を押さえ傷付いた顔を『ヒール』で癒し、

立ち上がったユウナギをじっと見ていたミラーズは、

何かを確かめるように無言でその場に居た。


ユウナギは立ち上がると首を『ゴキゴキ』鳴らすと、

今度はマジックボックスから『日本刀』を取り出した・・・。


「・・・まだまだ行くぜ」


そう言ったユウナギの顔にはもう余裕などなかった。


(・・・ちっ、まだ始まったばかりだってーのに、

 ダメージが半端ねー・・・。

 まじであいつっ!これで弱体化してんのかよっ!?

 でもやっぱ・・・魔力だけじゃ冥界の神力には勝てねーか?

 だけどよ~・・・俺もこのままって訳にはいかねー・・・

 魔力での力圧しでダメなら・・・今度は俺の剣技スキルでっ!

 俺の剣技スキルはもうとっくにカンストしてんだ・・・

 接近戦で挑んでくれるっつーなら・・・

 こんな有難てー事はねー・・・)


心を落ち着かせながら一度抜いた刀を再び納刀すると、

居合いの構えに入った・・・。


ユウナギの行動を凝視していたミラーズの口角が無意識に上がり、

背中に『ゾクゾク』するモノを感じていたのだった。


(フフフ・・・あの構え・・・。

 以前私と戦った時にはなかったわね?

 って事は~・・・何かあるって事よね?

 全く・・・貴方って人は、私を本当に楽しませてくれるわね?)


ミラーズは対峙するユウナギの何かに期待を寄せつつ、

望み通りに接近戦で応える事にしたのだった・・・。


(・・・何だ?ミラーズのヤツ・・・?

 余裕そうじゃねーか?

 ここは用心の為にスキルてんこ盛りと行こうじゃねーか。

 ・・・吠え面・・・かかせてやるぜっ!)


ユウナギはミラーズの表情から悪寒が走ると、

居合いスキルを確実なモノとする為に自らの身体にいくつもバフを重ねたのだった。


(・・・筋力強化・・・魔法耐性強化・・・剣撃耐性強化・・・高速戦闘・・・

 筋力強化・・・瞬発力強化・・・切り味強化・・・心眼解放・・・

 精神波耐性強化・・・抜刀速度強化・・・緊急回避・・・

 危険察知範囲拡大・・・)


ユウナギがスキルを使用する度、その身体から様々な光を放ち、

ミラーズからの視点でも、それがスキルによるモノだと一目瞭然だった。


(あいつ・・・全然わかってないわね?

 貴方がスキル依存しているせいで己の壁が突破出来ないと、

 どうしてわからないの?

 貴方が依存すればするほど・・・

 貴方はその壁を越える事なんて出来ないのに・・・)


ユウナギがスキルによる様々な光を放つ度、

ミラーズの不機嫌さは加速して行った・・・。


やがてユウナギがスキルの重ね掛けを終え『ふぅ~』っと息を吐くと、

待ち詫びていたかのように『気は済んだかしら?』と不機嫌そうに言った・・・。


「あぁ、待たせたな・・・。

 俺の方は準備出来たぜ?」


「・・・あっそ」


「ちっ!」


『準備が整った』と告げたユウナギにミラーズの目が鋭く光ると、

小さな声で『行くわよ?』と告げた瞬間、

その身体に冥界の神力を纏わせ駆け出した・・・。


「はぁぁぁぁぁぁっ!」


気合いの声と共に突進して来るミラーズに、

ユウナギは静かに両目を閉じた・・・。


(・・・スキル居合い。

 半径2ⅿ以内に侵入するとオートで最善のタイミングで抜刀し斬る。

 これはほぼ不可避と言っても過言じゃねー・・・。

 それに今の俺は『スキルてんこ盛り』なんだぜ?

 魔力じゃ勝ち目はなくとも、スキルでなら何とでもなるっ!

 受けて立つぜっ!ミラーズッ!)


突進して来るミラーズがスキルの範囲である2ⅿ以内に侵入した瞬間・・・。


ミラーズは小さく呟いた。


「・・・その程度なのね?」


『ヒュンッ!』とスキルの力によりユウナギはオートで抜刀し、

その身体に重ね掛けしたスキルの恩恵によって、

ユウナギ自身が未だかつて経験した事がないほどの『抜刀速度』に達した。


「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」


だがその渾身の一撃がひらりと躱されたその瞬間、

ユウナギは『ちっ』と再び舌打ちし苦悶に満ちた表情を浮かべて居た・・・。


『ザッ!』と音を立て着地したミラーズがくるりと回ってユウナギを見ると、

挑発するように『・・・おしかったわね?』と楽し気にそう言った・・・。


「ちっ!・・・ったくよ~・・・何だってんだ・・・」


抜刀しフォロースルーの態勢のままで居たユウナギの表情は、

苦悶を通り越し醜く歪んでいた・・・。

そんな感情を表に出す事無く『ふぅ~』と大きく息を吐くとミラーズに向き直った。


「・・・正直、俺のスキルが破られるなんて思わなかったぜ?

 てんこ盛り・・・だったのによ~?

 まさに・・・悪夢だぜ・・・。

 それにしてもおめー・・・やっぱ強えーな?」


頭をボリボリと掻きながらそう皮肉く言ったつもりだったが、

ミラーズから返って来た言葉は辛辣なモノだった・・・。


「・・・貴方、いつまでスキルに頼ってんのよ?」


「・・・はぁ?」


「何度も言わせないでよ・・・。

 スキルに頼るから初見の技でも見破られるのよ」


「・・・そ、それは・・・ア、アレ・・・だ。

 おめーだから・・・だろ?

 普通の魔族程度じゃ、俺のスキルで一撃だぜ?」


「・・・ふーん」


「・・・ちっ!」


ミラーズの適当な返事にユウナギはあからさまに舌打ちして見せた。

そんなユウナギにミラーズの表情が厳しいモノへと変わると、

『バッッカじゃないのっ!』と・・・

声を張り上げながら一瞬にして茫然とするユウナギの前に躍り出た。


「うをっ!?」


「遅いわっ!」


『ドスッ』


「うっ」


『ドサッ』


ミラーズの右拳がユウナギの鳩尾に炸裂すると、

呆気なくその場に崩れ落ち意識を消失させた。


崩れ落ちるユウナギの身体を抱きかかえるように受け止めたミラーズは、

ユウナギの体温を感じながら『・・・バカね』と囁くようにそう言ったのだった。


『・・・だから貴方は』


そう哀し気な目で呟いた時だった・・・。


『っ!?』


何かに感づいたミラーズは小声で『何処から入ったのよ?』と、

溜息混じりにそう言うと、その気配の主に対し声を挙げた・・・。


「ねぇ、ちょっとっ!

 さっきから見ていたのはわかってるわっ!

 こいつを運ぶから、こっちに来て手伝ってくれないかしら?」


気配がする方へと視線を向けながらそう声を挙げるも、

その気配の主からは何の返答もなかった。


「あっ、そう・・・。

 出て来ないつもりなら・・・それでもいいわ・・・」


そう呟きながらミラーズの片眉が『ピクリ』と反応すると、

身体から紫色の冥界の神力を溢れさせながら再び声を張り上げた。


「出て来ないならっ!ぶっ放すわよっ!」


その一言に少し離れた気の上から『ひゃいっ!』と怯える声が聞こえると、

『早くこっちに来なさいよっ!』と苛ついた口調で言い放った。


すると一瞬・・・。


『キラリ』と、この空間にある光に何かが反射した瞬間・・・。


{お、お待たせ致しましたっ!}と、声が挙がった。


その声に視線を向けたミラーズは、

抱きかかえるユウナギの肩の上に居る一匹の『蜘蛛』が目に入った。


(・・・えっ!?この私が・・・見えなかった?

 嘘・・・でしょ?

 この蜘蛛さん・・・興味深いわね?

 それに直感的に『蜘蛛』とは言ったけど、

 『頭部』しか・・・ない?

 って言うか・・・『頭部と腹部』が1つになってるのっ!?

 そ、それに・・・『頭部?腹部?』の頂点にある・・・

 この赤くて円状の『クリスタル』って・・・何だろ?)


一瞬ミラーズは動揺を見せるも瞬時にソレを押さえると、

その『蜘蛛』に対し話しかけて行った・・・。


「・・・あ、あなた・・・何者なの?

 それにその姿って・・・『蜘蛛』でいいのかしら?

 念話まで使えるだなんて・・・フフッ♪」


何か楽しそうにそう言ったミラーズに、

その『蜘蛛』は口を開いた・・・。


{は、はい、少々身なりは変わっていますが、

 間違いなく私は『蜘蛛』です。

 っと・・・その前に・・・まずはユウナギ様を何処かに・・・}


(・・・あら?

 ユウナギ・・・様?って事は~・・・顔見知りって事かしら?)


一瞬訝し気な表情を浮かべるも、

そう言った『蜘蛛』にミラーズは『小屋』があると告げ、

その『蜘蛛』が出す『糸』を利用として、

難なくユウナギを小屋へと運び寝かせたのだった。



それから少しの時間が経過・・・。


ミラーズはユウナギを寝かせつけると外に出て、

マジックボックスからテーブルと椅子・・・

それからティーセットを取り出した。


だが取り出しはしたものの、肝心な『お茶』を切らしていた・・・。

『うーん』と少し唸って見せたミラーズは、

テーブルの上で首を傾げる『蜘蛛』に対し、

そのセクシーな唇の上で人差し指を立てると『シー』っと言って、

悪戯っぽく微笑んで見せた・・・。


そんな仕草に『蜘蛛』は照れたのか、

その小さな顔が少し赤らんでいるのが見て取れると、

ミラーズは片手に冥界の神力を纏わせながらその指先で円を描くと、

その中に腕を浸入させたのだった。


そして『ゴソゴソ』と何やらモノを探しているような仕草を見せると、

『あった♪』と楽し気な表情を見せながら腕を抜いた。


{・・・えっ?}


そんな驚く声を挙げた『蜘蛛』に、ミラーズは微笑んで見せながら、

ティーポットから『お茶』を注ぎ始めた。


{・・・・・}


首を傾げながら不思議がっている様子を見せる『蜘蛛』に、

ミラーズは楽し気に口を開き説明していった。


「あっ、コレの事?

 フフフッ♪勿論これは・・・リョウヘイ・・・いえ、ユウナギのモノよ♪

 私のスキルの1つで・・・。

 近くに居る人のマジックボックスに侵入する事が出来るスキルなのよ♪

 便利・・・でしょ?♪」


{・・・す、すごっ}


驚く『蜘蛛』に再び笑顔を向けると『内緒よ?♪』とそう囁くと、

その『蜘蛛』は再びその小さな顔を赤らめたのだった。



ミラーズがそのお茶を一口含み『ふぅ~』っと一心地着きカップを置くと、

その視線をテーブルの上に居た『蜘蛛』へと向け話しかけていった・・・。


「ところで『蜘蛛さん』は何者なのかしら?」


テーブルに肘を着きながらその手に自分の柔らかい頬を預けながら、

そう聞いてきたミラーズに、『蜘蛛』はその視線を逸らした・・・。


「・・・あら?秘密・・・って事かしら?」


{い、いえ・・・べ、別にそう言う訳では・・・}


「じゃ~・・・答えてくれない?♪」


『蜘蛛』は内心ミラーズに対しこんな事を考えていた・・・。


(こ、この人っ!?い、いちいちセクシーなんですけどっ!?

 わ、私の生みの親である『卑弥呼』とはぜんっっっっぜん違うわっ!?

 ・・・そ、それにいい匂い~♪

 あの女の匂いって、牢獄に居るせいかカビ臭いのよね・・・。

 ん~・・・。

『卑弥呼』と『この御方』を交換してもらえないかしら?)


そう考えていた『蜘蛛』は見た目その表情はわからないが、

『卑弥呼』の顏を思い出しながら顏を顰めていたのだった・・・。


そしてその頃・・・。


『へっっっくしょんっ!』と・・・。

牢獄で盛大にくしゃみをする『卑弥呼』の姿があったが。

 まさか自分が創りだしモノに呼び捨てにされているとは、

 毛先ほどにも思わなかったのだった・・・。



そんな事を『蜘蛛』が思っている中・・・。

無言でこちらを見るミラーズの視線に気付いた・・・。


{も、申し訳ありません・・・。

 す、少し考え事を・・・}


慌てて『蜘蛛』がそう言った時だった・・・。


突然ミラーズが『フフッ♪』と笑うと、

笑顔を向けたまま口を開いたのだった・・・。


「・・・色々と話しにくいみたいだから、

 まず・・・私の自己紹介からするわね?」


{・・・は、はい}


「あぁ~・・・ところで『蜘蛛さん』?

 私の名は聞こえていたかしら?」


『蜘蛛』は身体全体を使って『ブンブンッ!』横に振ると、

『クスッ♪』と笑ったミラーズは話しを続けていった・・・。


「私の名はミラーズ・・・。

 『元・邪神の女神よ♪』よ・ろ・し・く・ね♪」


満面の笑みでそう言ったミラーズに、

『蜘蛛』の身体から『サァァァァッ』っと血の気が引いた・・・。


「・・・ん?蜘蛛・・・さん?」


突然小刻みに震え始めた『蜘蛛』の様子に、

ミラーズが覗き込むように顏を近付けると、

『蜘蛛』はあたふたとし始め、普通に歩く事も困難になっていた・・・。


「ど、どうしたのっ!?」


椅子から立ち上がり焦り始めたミラーズに、

『蜘蛛』は震えながらも口を開いていった・・・。


{・・・ミ、ミラーズって・・・?

 ま、まさか・・・し、ししししし・・・『深淵』のっ!?}


「・・・え、えぇ、そうだけど?」


{うっ、うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!}


「なっ、何よ突然っ!?」


ミラーズの正体がわかった『蜘蛛』は、

今度はバタバタと藻掻くようにテーブルの上を動き回っていた。


「お、落ち着いてっ!」


『蜘蛛』の様子に慌てたミラーズが再びそう声を挙げた時だった・・・。


「・・・おいおいおい、何だよさっきから~、

 大声なんて挙げやがってよ?

 痛つつつつ・・・」


そう言いながら未だに痛む腹を押さえながら小屋から出て来たのだった。


「あら?起き上がって平気なの?」


悪戯っぽくそう言いながらウインクして見せたミラーズに、

ユウナギは『やれやれ』と言ったポーズをして見せた。


「・・・ったく、あれだけ手加減されたうえ気絶なんてしてんだぜ?

 いつまでも寝ていられるかっつーのっ!」


「フフフッ♪」


楽し気にそう笑ったミラーズに飽きれた表情を見せたユウナギだったが、

ふと・・・テーブルの上でこちらを見ていた『蜘蛛』に目が止まった。


「・・・お、お前・・・ひょっとしてその『魔力』は・・・?」


らぶりんはユウナギの問いに答えるように右の前腕を『サッ!』と挙げると、

漸く会えた嬉しさに声を挙げた。


{・・・ユウナギ様っ!}


「・・・や、やっぱ『らぶりん』かよっ!?

 姿形がかわってっからっ!気付かなかったが・・・

 その腕を上げる『挨拶』で核心したぜ~♪

 い、いや、でも・・・どうしてらぶりんが何で此処にっ!?」


{ユウナギ様っ!お目覚めになられたのですね?

 って・・・。

 あぁ~・・・この姿の事ですね?

 この空間に来て『力』を吸い取られた時に・・・。

 私自身も全く気付かず、つい先程気付いたのですが・・・}


テーブルの上に居た生物が『らぶりん』だとわかると、

ユウナギは近付き声をかけていった・・・。


「まぁ~、姿形は別にどうでもいいんだけどよ~?

 何だよ~・・・お前~?

 何でこんな所に来てんだよ~♪」


そう言いながらも楽し気に話すユウナギに、

ミラーズは微笑ましく見ていたのだ、

ふと・・・違和感を感じたのだった・・・。


{ユ、ユウナギ様が突然消息不明になられたのだ、

 こうして私は主様の痕跡を追って・・・}


「ん?ひょっとして~・・・迷子だったり~?

 あははは・・・何だよ~♪

 らぶりんも案外おっちょこちょいなんだな~♪」


{・・・い、いえ・・・そうじゃなくてですねっ!?

 ユ、ユウナギ様?私の話・・・わかってます?}


{あっはっはっ!いいね~らぶりん♪

 お前のそういうところ・・・好きだぜ~♪」


何だか楽し気に話をしていくユウナギに対して、

らぶりんはオロオロとしているだけだった・・・。


その様子を冷ややかな様子で見ていたミラーズは、

『ねぇ・・・リョウヘイ?』と声を掛けると、

ユウナギが予想にもしなかった事を口にしたのだった・・・。


『・・・貴方達の会話が成立していないのだけれど?』


「・・・へっ?」


『・・・リョウヘイ。

 貴方・・・この『蜘蛛』の言葉わかってないでしょ?』


「こ、言葉はわからなくても雰囲気とかジェスチャーでわかんだろ?

 心が通じていれば『言葉』なんて通じなくても何とかなるんだぜ~?

 ミラーズよ~・・・?おめーそんな事も知らないのか~?

 『深淵のミラーズ』と在ろう者がよ~♪

 意外とお前・・・モノを知らねーんだな?

 ぐふふふふふ♪」


『イラッ!』


そう自信有り気に説明したユウナギに苛つくと、

冷ややかな目を向けたミラーズが抑揚ない口調でこう告げた。


『・・・全然通じてないし会話も噛み合ってないからね?』


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・うそん」


こうしてめでたくユウナギに会えたらぶりんだったが、

この会話を聞いている内に、一抹の不安を感じるのだった・・・。


(ほ、本当にこの人・・・大丈夫なのかしら?

 それにしても・・・)


ユウナギとミラーズが対照的な笑いを見せる中、

それを見ていた『らぶりん』は主であるユウナギの『力』の無さに、

顏を顰めていたのだった・・・。

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