第69話・四神会議・後編

『話の続きを・・・』と、ヒューマに催促されたマイノーターは、

笑みを浮かべながら話の続きをして行った・・・。


「さっきお話した通り・・・。

 『陰核』とはそれを宿した者を『負の力』へと誘い、

 その『負の力』によって取り込まれその手先になってしまうらしいのんや」


「て、手先って・・・おいおいおいっ!

 マ、マイノーターっ!?

 じゃ~何か?相棒はいずれ・・・俺達と敵対するって事かっ!?」


マイノーターの話に焦り始めたヒューマはサングラスを取ると、

険しい表情を見せながら詰め寄った・・・。


「う、うちは・・・そ、そんな話を聞いたってだけで、

 主がそうなるかはわかりゃ~しまへんよって、

 断言しかねますわ・・・」


「えぇぇいっ!つまり肝心な事はわからねーって事じゃねーかっ!?」


そう唸りながら苛立ちを露にするヒューマに、

皆が顏を顰めていた・・・。


すると1人・・・。

少し首を傾げていたチャダ子が『あ、あの~?』と、

不穏な空気の中挙手しながら声を挙げた。


「た、大変申し訳ありませんが・・・」


そう話を切り出したチャダ子は軽く自己紹介を終えると、

先ほどマイノーターが話した『陰核』について話していった・・・。


「私はソレの名を知りはしませんが、

 昔『擬体職人さん』に取材をした時、

 その~・・・『陰核』?について話を聞いた事が御座います」


チャダ子の話に目を見開いたヒューマは、

今度はチャダ子に駆け寄り、詳しく話すよう求めたのだった・・・。


ヒューマの声に頷いたチャダ子は、

らぶりんに話した通り皆に説明すると、

『数百の魂だとっ!?』と、同じような反応が返って来た・・・。


「はい、その『陰核』とやらを精製するのに、

 数百の魂が必要だとお聞き致しました・・・。

 『数百の魂』を使用し精製しても、『神の鑑定』さえ欺ける『石』

 特別なスキルでもない限り・・・発見は不可能・・・」


「か、神の鑑定を以ってしても発見は不可能だとっ!?」


驚くヒューマに『ふむ・・・』と何かを納得したライトニングが声を挙げた。


「そう言えば遥か昔の事なのですが・・・。

 前・冥界の王がそのような話しをされていた事を思い出しました・・・」


そう言ったライトニングに一同が詰め寄るも、

その内容はチャダ子の話と似たり寄ったりで話の進展はなかった・・・。


そんな時だった・・・。


マイノーターを見ていたチャダ子はふと・・・こんな質問をしてみた。


「マイノーター殿、ちょっと宜しいでしょうか?」


「なっ、何ですのんっ!?いきなりでびっくりやわっ!」


チャダ子の声に驚きを見せたマイノーターは、

その額にじわりと汗を滲ませ顏を引き攣らせていた・・・。


「す、すみませぬ・・・マイノーター殿。

 そのユウナギ様の擬体・・・。

 つまり『コナギ殿』の中に在る『魔石』なのですが、

 何でもそれは貴女がユウナギ様に渡した・・・とか?

 その時、貴女はその『陰核』に気付かなかったのですか?」


「え、えっと~・・・やね?」


「・・・はい」


「そ、それは~・・・アレやわ~・・・。

 うちは細かく『鑑定』せーへんかったよって、

 まさかそれが伝説の陰核やなんて思いも寄りませんでしたわ~・・・」


そう言いながらチャダ子の視線から逃れるように、

椅子に座り直すと目の前に置かれていた飲み物を手に取り流し込んでいった。


それを見つつチャダ子は『へぇ~・・・それはまた・・・』と、

何処か意味有り気にそう言うと、

その視線をライトニングへと移し小さく頷いて見せたのだった。


それを確認し頷き返したライトニングは一歩前へと踏み出すと、

飲み物を流し込むマイノーターにこう言った・・・。


「貴女は適当に鑑定したモノを、

 我が主に提供したと言う事で宜しいですかな?」


右手をテーブルに着きつつ、覗き込むようにマイノーターを見ると、

焦りの色を濃くしながらもごもごと言い訳をし始めた・・・。


「う、うちかて適当に仕事をしているつもりはあらしまへんけど、

 た・ま・た・まっ!今回そーなっただけで、

 も、勿論悪気なんてあらへんし・・・

 変な言いがかりはやめてほしいわ・・・」


視線をそらしつつもそう言ったマイノーターに、

ライトニングは念を押すように『では、本当に気がつかなかったと?』と、

威圧を放ちながらそう言った・・・。


「あ、当たり前やんっ!?

 う、うちがそないな事する訳あらしまへんっ!

 ええ加減にして欲しいわっ!」


テーブルを激しく『バンッ!』と叩きながら立ち上がると、

『うち不愉快やわっ!』とそう怒鳴りながら、

その部屋から姿を消したのだった・・・。


{・・・真相は闇の中ですな?}


{・・・はい。

 限りなく黒に近いグレーではどうしようも・・・}


何気にライトニングが呟いた言葉は、

念話となりそれを耳にしたチャダ子がそう答えたのだった・・・。


すると続きざまにライトニンクから念話が流れて来た・・・。


{チャダ子さん・・・後で少し宜しいですかな?}


{・・・は、はい、構いませぬが?}


{ならばまた改めましてご連絡差し上げます}


{りょ、了解でござりまするっ!}


マイノーターが居なくなったこの部屋で、

皆が一息つく為席に着くと、今まで口論していたシシリーが話を切り出して来た。


「・・・で?これからどうするつもりなの?

 結局真相は闇の中で、相変わらずマイノーターは妖しい・・・。

 敵か味方かは判断着きかねますけど、今後はどうされるおつもり?」


この場に居る皆に・・・。

そう告げたつもりでいたシシリーだったが、

その視線はお茶を飲むライトニングへと向けられていた・・・。


「・・・ふむ、とりあえずはそうですね~」


お茶を美味しそうに飲みながらそう言うと、

再びチャダ子が『あ、あの~?』っと声を挙げた。


「わ、私は、も、もう一度冥界に赴きまして、

 以前取材した『擬体職人殿』にお話を聞きに行こうかと思っております。

 これ以上のお話が効けるかは疑問ではありますが、

 何もしないよりかはましかと思いまして・・・」


そうチャダ子が発現すると、皆が言葉なく頷き、

代表してライトニングが『そうですな・・・頼めますかな?』とそう言った。


その声にチャダ子が元気よく『かしこまりまして御座いますっ!』と、

勢いよく立ち上がりながらそう言うと、

そんなチャダ子の態度に不穏な空気が満ちていたこの部屋に、

和んだ空気が一瞬にして訪れた・・・。


そしてそれに続き声を発したのはヒューマだった・・・。


「うむ・・・。

 ならばこの俺は裏社会の『擬体職人』連中に、

 その『陰核』とやらの情報がないかを探ってみよう。

 まぁ~そんな話があるのなら、この俺に入らないのはおかしいがな?」


そう言いつつもヒューマの口元には笑みはこぼれていた。

するとシシリーが呆れたように『仕方がありませんわね?』と言いながら、

カップを置き口を開いた。


「陰核については正直私はわかりませんからそちらに任せるとして、

 私はユウナギ様の『弱体化』の対処法を、

 『毒の観点』から何とかならないか調べてみますわ。

 まぁ~・・・専門分野ですし・・・。

 それに問題は『冥界眼』であって、それを抑制出来る『薬』などないか?

 もしくはソレを・・・排除出来ないかどうかを調べて見ますわ」


そう言うとヴァマントに『ニヤり』と意味有り気に笑みを見せながら、

再び席に着きお茶に口をつけたのだった・・・。


そんなシシリーの態度に『お、おのれ・・・』と呟いたヴァマンとは、

チャダ子に目を向けると話を切り出した。


「ねぇ~チャダ子?」


「な、なんで・・・ございましょうか?」


「私も貴女と一緒に行動してもいいかしら?」


「なっ、なっ!何ですとぉぉぉぉっ!?

 め、冥界のじょ、女帝様が一緒に行動ですかぁぁぁっ!?」


あまりの驚きっぷりに皆も驚くと、

ライトニングがヴァマントに声をかけたのだった・・・。


「ヴァマント様?」


「・・・何?」


「実はヴァマント様にはちょっと頼みたい事が御座いまして・・・」


「・・・頼みたい事?何よ?」


一度視線をあたふたするチャダ子へと向けると、

再びライトニングはヴァマントに話しかけていった・・・。


「はい。確か冥界の宝物庫に・・・。

 つまりサンダラー様が管理している書庫に、

 『陰核』について何か書かれているモノがないか?

 または主の弱体化を防ぐ方法などがないかを調べて頂きたいのですが?」


そう話を切り出していったライトニングに、

ヴァマントはとても不満そうな表情を見せるも、

『主の為で御座いますれば・・・』と、そう言葉を添えると、

不満げでありつつも頷いたのだった・・・。


「・・・ったく~、そんな事言われたら、

 やるしかないじゃない?

 ・・・もう~・・・わかったわよっ!

 やりますっ!でもっ!私ってば字を見ると眠たくなるんだからね?

 上手く行かなくても文句・・・言わないでよねっ!」


そう半ギレで言い放つヴァマントに、

ライトニングは言葉の『宝刀』を抜くと、

ヴァマントには強烈なクリティカルヒットになった・・・。


「・・・もし何か手がかりでもあれば・・・」


「・・・な、何よ?」


{・・・ユウナギ様への愛の深さを知って頂けますな?}


{・・・なっ!?何それぇぇぇぇっ!?

 い、いや・・・でも待ってっ!

 たっ、確かに・・・確かにそれは一理あるわね?}


念話を送りそう囁いたライトニンクの言葉に、

ヴァマントはまんまと乗せられ満面の笑みを浮かべながら勢いよく立ち上がった。


「・・・わ、私っ!や、やるわっ!

 やって見せるわっ!

 愛しの勇者様の為とあればっ!

 例え火の中奈落の中っ!

 文字如きにっ!我が愛は負けたりせぬっ!」


その気合いの入りようを見たシシリーは、

ライトニングにジト目を向けると、その視線を躱しながらお茶を口にした。


「ほっほっほっ♪いいお顔ですな~ヴァマント様♪」


「ふふ~んっ!このヴァマントにまっかせなさ~い♪」


下心丸出しのヴァマントが機嫌よく席に着くと、

ヒューマがライトニングに『お前はどうするんだよ?』と声を掛けて来た。


「・・・ふむ。

 実は私の場合、急ぎの用・・・いえ、仕事が御座いますので、

 そちらを先に片づけねばなりませんが・・・。

 しかしながら・・・敵も中々尻尾を出さない相手ですので、

 私も主の為に出来る事をやりましょうかね?」


そうライトニングが告げた時だった・・・。


『す、すみませんが・・・』と、皆に声を掛けたのはコナギだった・・・。


「どうかされましたかな?」


「わ、私はこの後・・・一体どうすれば?」


コナギが不安げにそう言うと、

皆が『あっ、忘れてた・・・』と言わんばかりの表情を見せた。


「あははは・・・も、もしかして・・・忘れられたりしてました?」


今にも泣きそうな笑顔を見せるコナギに、

焦り始めた一同だが、ライトニングがシシリーに視線を向けながら声を挙げた。


「もし宜しければ・・・ですが?」


「な、何でしょうか?」


「コナギ様のアップデートも兼ねて、

 シシリーのお手伝いをされてみてはいかがですかな?」


「アップデート・・・ですか?」


「はい、コナギ様は『自立型の擬体』ですので、

 『毒』に関する情報を得られれば、

 ユウナギ様が『毒』に対しお困りの際・・・

 役立てられるかと・・・思いまして・・・」


ライトニングに発案にコナギは目を輝かせ『はいっ!』と声を挙げた。


そして再びライトニングがシシリーに視線を向けると、

『・・・我が愛しの主様の為ならば・・・』と、承諾した。


一通り話終えた者達が席を立った時だった・・・。


ヒューマが上を指差しながらこう言った。


「ところで・・・あいつらはどうするんだよ?」


「あぁ~・・・アスティナ様達ですね?」


「あぁ、このまま放置って訳にもいかねーだろ?

 相棒が戻ってねーんだ・・・。

 きっと皆・・・心配しているだろうからな?」


「確かに・・・そうですね」


ライトニングは視線を上に向けながらそう呟くと、

『後ほど私が伝えに参りましょう』と言って、その場が解散となった・・・。



~ 亜空間に在るチャダ子の井戸の前 ~


マイノーター以外の者達がそれぞれに散った後、

チャダ子と待ち合わせていたライトニングが、

井戸の前に立って居た・・・。


「ふむ・・・とても興味深い場所ですな?」


生い茂る樹木達を見上げながらそう呟いていると、

井戸の中からチャダ子が這い出して来た・・・。


「わ、わざわざおいで下さり、申し訳御座いませぬ・・・。

 もし宜しければ・・・井戸の中にでも・・・」


チャダ子がライトニングを家の中へと誘う為、

エスコートしようとすると、『いえ、それには及びません』と断りを入れた後、

話を本題へと進めたのだった・・・。


「貴女に是非・・・聞きたい事が御座いまして・・・」


「な、なんで御座いましょうか?」


「・・・貴女はマイノーターをどう思われましたかな?」


「それはどう言う・・・?」


そう言いながら視線をライトニングに向けた時、

その眼差しに何かを感じ取った・・・。


「・・・そうで御座いますね。

 あの方は『真実』を語っておりませぬな?

 『陰核』についても何かを知っているようでしたが、

 上手く逃げられてしまいました・・・」


「・・・やはりそうですか」


「はい。わ、私の深読みでなければいいのですが・・・。

 もしかするとコナギ殿の中に在る『陰核』の制作者が、

 マイノーター殿・・・と、言う可能も・・・」


「・・・・・」



暫くの間、ライトニングとチャダ子が話し合い、

今後は情報共有を密にするという形で、

2人の話し合いが終わった・・・。


「・・・ところでチャダ子様」


「・・・なんで御座いましょうか?」


「これからすぐに冥界へ行かれるのですかな?」


ライトニングにそう尋ねられたチャダ子は、

少しの間考え込むと、話を切り出していった・・・。


「・・・どうするか悩んだのですが、

 一度勇者様の元へと行ってみようかと・・・」


するとライトニングは眉間に皺を寄せながら『ほほう』と、

とても興味深そうにチャダ子を見つめた。


「・・・ユウナギ様が何処におられるかご存知で?」


「・・・ご、ご存知と言う訳ではありませぬが、

 らぶりん殿の匂いを辿れば・・・と」


「・・・実に興味深い♪

 我が主の痕跡を追って『探知』を幾度となく試みたのですが、

 私の能力では発見出来ずにおり少々困っておりましたもので・・・」


それから一度別れた2人は、

再びこの地で待ち合わせると一瞬にしてその姿を消したのだった・・・。



因みにだが・・・。

アスティナ達にユウナギの事を伝えたのは、

それから3日後の事であり、

ライトニングが報告した際・・・。

アスティナ達は別に心配などしていなかった事に、

ライトニングは深く溜息を吐いたのだった・・・。


更に・・・因みに・・・。

その時の話を『社畜の原作者』が書くかどうかは、

気分次第との事だった・・・。

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