第68話・閉鎖空間・中編

『カチャ』


ユウナギから『修行をつけてくれ』と頼まれたミラーズは、

静かにカップをソーサーの上に戻すと、

ユウナギを見つめ何かを考えているようだった・・・。


そしてその視線に動揺を浮かべるユウナギが、

その熱い視線に耐え兼ね視線を逸らせた時だった・・・。


「ねぇ、リョウヘイ?」


「・・・な、何だよ?」


「・・・修行って一言で言っても、

 一体どんな修行をしたいのよ?」


ミラーズの質問にユウナギは首を傾げながら『えっと~』と悩み始めた。


「貴方・・・自分で考えてなかったの?」


「あ、あぁ・・・。

 お前に頼めば何かいい案でも・・・ってよ?」


「・・・飽きれた」


「・・・うぅ」


『他力本願』を決め込んでいたユウナギに、

ミラーズは呆れ返ると説教が始まった・・・。


「だいたい貴方は・・・」


そう言い始めたミラーズはふと・・・。

何かを思い出すと『ドンっ!』と、

テーブルを両手で叩きつけながら身を乗り出し吠えたのだった。


「あぁぁ・・・そうよ・・・確かあの時っ!」


「なっ!?あ、あの時って何だよ!?」


「この空間に閉じ込められる事になったのもっ!

 元はと言えば貴方が座標地点をろくに検索せず『転移』するからっ!

 この場所に閉じ込められる事になったんじゃないっ!?」


そんなミラーズの叫びに、ユウナギは『あっ、ヤベッ!』と口から漏れると、

咄嗟に口を塞ぎながらそっぽ向きとぼけ始めた・・・。


「しらばっくれてもダメよっ!?

 『あっ、ヤベッ!』って声・・・しっかりと聞いたからっ!」


「ちっ・・・。

 もうその話はいいだろうがよ~?

 いつまでも昔の事をネチネチネチネチ・・・ったくよ~・・・

 お前は姑かっつーのっ!」


「・・・はぁぁぁっ!?」


こんな調子で暫くの間、

不毛と言っていいほどのいがみ合いが続くと、

口論し疲れたミラーズは椅子に腰を沈めた・・・。


「・・・もういいわ。

 貴方と今更言い合っていても、埒が明かないものね・・・」


「・・・だな」


「で・・・リョウヘイ?」


「・・・何んだよ?」


「・・・もう一度聞くけど、

 貴方はどんな修行をしたいのよ?

 具体的に言ってくれないと私も困るわよ?」


「・・・ん~、そうだな~?」


考え込み始めたユウナギだったが、

ミラーズ頼みの完全なるノープランに渋い表情を浮かべた・・・。


(完全にミラーズ頼みだったぁぁぁぁっ!?

 ヤベェェェーッ!どうしよぉぉぉぉっ!?)


ユウナギがそう思っているとミラーズは『はぁぁ~』と、

深い溜息を吐いていた・・・。


そして気乗りはしないものの、ミラーズを重いくなった腰を上げると、

ユウナギに『あっちに行きましょ・・・』と言って、

この部屋に唯一1つある・・・扉へと向かったのだった・・・。


『ガチャ、ギィー』


この閉鎖空間に在るたった1つの扉・・・。

そしてその先に在るのは、緑溢れる大自然だった・・・。



「・・・本当に久しぶりね」


「・・・そうだな」


そう懐かしむような表情をうかべた2人に、

その空間は『おかえり』と言っているようにも思えていた・・・。


一歩踏み出しその空間の大地を踏みしめた時だった・・・。


『かはっ!』


ユウナギは突然呼吸を乱し、その大地に膝を着き苦しみ出した・・・。


その様子を見ていたミラーズの口元が緩やかに上がると、

身を屈めながら囁くように口を開いた・・・。


「あ~ら・・・勇者様~♪

 またな~んにもされていらっしゃらないのに~

 突然苦しみ出して一体どうしたのかしら~?」


楽し気にそう耳元で囁いたミラーズに、

苦悶に満ちた顔を向け息も絶え絶えに『・・・て、てめー』と、

掠れた声を挙げた。


「あ~ら・・・?

 どうして私を睨むのかしら~?

 私は別に何もしてないわよ?」


そう肩を竦めながらミラーズは数歩歩いてくと、

立ち止まり一言・・・『この場所の特性忘れたの?』と口にした。


ミラーズの言葉に『ハッ!』としたユウナギは、

『そ、そう・・・だった・・・な』と冷や汗を流しながら、

掠れた声を挙げると、目を閉じ集中し始めた・・・。


『はぁぁぁぁっ!』


気合いを込めたユウナギの声がその空間で木霊すると、

その身体から『神力』が放出された・・・。


『はぁ、はぁ、はぁ』と荒い息をしながらゆっくり立ち上がると、

『ふぅ~』と大きく息を吐いたのだった・・・。


「・・・どう?思い出したかしら?」


「あ、あぁ・・・。

 すっかり此処の性質を忘れていたぜ・・・」


「フフフ・・・」


「つーかよ・・・。

 ただでさえ神力不足だってのによ・・・

 修行前にごっそりこの空間に持っていかれるなんてよ・・・。

 我ながらだらしね~話しだな?」


そんな愚痴のようなモノをミラーズはその背中越しに聞くと、

再び『フフッ』と笑みをこぼした。


「な~に言ってんだか?

 私・・・同情はしないわよ?」


「・・・冷めて~なぁ~?」


「フフフッ・・・だって・・・。

 この場所を選んだのは貴方じゃない?

 それに他力本願決め込んだ貴方に同情の余地なんてある訳ないでしょ?」


「・・・まぁ~、そう・・・だな」


項垂れるように肯定したユウナギに、

ミラーズは肩を竦めて見せると、振り返り話を切り出して行った・・・。


「さて・・・リョウヘイ?

 そろそろ貴方が言うところの『修行』とやらをしようと思うのだけれど、

 私の思うような方法でいいのよね?」


ユウナギはミラーズの物言いに一瞬目を細めたが、

切羽詰まっているこの状況では頷くしかなかった・・・。


「・・・そう。ならとっとと始めましょうか?」


少し面倒臭そうにそう言ったミラーズは、

『神力不足』で脂汗を滲ませるユウナギに近付いた・・・。


「なっ、何だよ?」


ユウナギの声に反応を示す事もなく、

ミラーズは少し顔を赤らめるその男の顏を両手で『パシッ!』と挟み込んだ。


『ふにょっ!?』


突然のミラーズの行動にアスティナには絶対に見せられない声を挙げると、

『・・・黙って』と囁きこぼれ出たその唇に心臓が跳ねた・・・。


「・・・・・」


「・・・目を閉じて」


ミラーズの言う事に数度頷き目を閉じると、

再びミラーズからの甘い囁きを聞いた・・・。


「リョウヘイ・・・。

 『神力不足』のまま『修行』なんて出来ないから、

 私が貴方の『神力』を補充してあげるわ」


「ど、どう・・・やって?

 しょんな方法にゃんてあんのかにょ?」


両手で挟み込まれたままそう答えたユウナギの声に、

ミラーズの顏が綻ぶと、何も前触れもなく唐突に・・・口づけをした。


『↑↓○✕→→←っ!?』


ミラーズの唇の柔らかさに一瞬・・・。

ユウナギの頭の中が真白になったが、

恥ずかしさの余りもがき始めたユウナギの唇を噛んだ。


『痛っ!?』


そう苦痛の声を挙げながらミラーズの両手から逃れたユウナギの下唇からは、

噛まれた事によって出来た傷があり、血を滲ませていた・・・。


「て、てっめーっ!

 痛てーじゃねーかぁぁぁっ!?

 み、見ろよっ!血が出てんじゃねーかぁぁぁっ!

 つぅぅぅぅかっ!てめぇぇぇっ!

 いきなり何してくれてんだよっ!?」


『じゅる♪』


『ぐぬぬぬぬぬ』


ユウナギの怒声にミラーズは舌舐めずりで以って応えると、

顏を赤らめながら羞恥の呻きを漏らしていた・・・。


そして『ニヤッ』と笑みを浮かべたミラーズは、

くるりと背を向けると怒るユウナギにこう言った・・・。


「・・・ごちそうさま♪

 これで神力は補充出来たでしょ?」


「そ、そんな訳あるかぁぁぁっ!」


そう声を荒げて見せたものの、

久方ぶりに感じた漲る神力に『う、うそんっ!?』と驚きの声を挙げた。


「えっ?えぇぇぇっ!?

 こ、こんな事で・・・こんな事で『神力』って補充出来んのぉ~?」


その時ミラーズは、驚くユウナギの声を聞きながら、

『ペロッ』と舌を出し楽し気な表情を浮かべていたのだが、

背中を向けたままのユウナギには、

そんな愛らしいミラーズの表情など知る由もなかった・・・。


再びくるりとユウナギに向き直ると、

真剣な表情を見せたミラーズは何事もなかったかのように口を開いた。


「神力の問題は、補充する事でなんとかなったわ・・・。

 だけどね・・・リョウヘイ。

 どうやら貴方を根本的に鍛え直さないといけないようね?」


『ニヤッ』と薄く笑みを浮かべたミラーズに、

ユウナギは『ゾクリ』と背中に冷たいモノが走ったのだった・・・。



それから暫くの間、歩き始めた2人が向かう先は、

森を抜けた先にある無駄に広い草原だった・・・。


その途中森の中を歩いて居ると、

ふと・・・ミラーズから声が掛けられた・・・。


「ねぇ、リョウヘイ・・・」


「んあ?」


「貴方の修行とやらが終わったら、

 私はまた・・・『珠』に戻る事になるのかしら?」


やや遅れて歩くミラーズからそんな話をされると、

ユウナギは『ハハ』と笑った後返答した。


「うんにゃ・・・別に『珠』に戻す気なんてねーよ?」


「・・・えっ?そうなの?」


「あぁ・・・。

 お前とは色々とあったけど、俺もあの頃は若かったからな~?

 行き違いも色々とあったけどよ、別に俺はお前を怨んじゃいねーからよ。

 だから心配すんな・・・」


「・・・・・」


ユウナギの言葉にミラーズの顏が一瞬歪んだが、

すぐに冷静さを取り戻すと軽やかな口調で話していった・・・。


「リョウヘイがそう言うんだったら・・・

 久しぶりに故郷に帰って『娘』の顏でも見て来ようかな~?」


優しい眼差しで脳裏に浮かぶ『娘』の姿に、

ミラーズは母親らしい笑みを浮かべ、

そんな姿にユウナギの顔も綻んでいた・・・。


「・・・いいんじゃねーか?

 『深淵の仕事』を娘に押し付けて来たんだろ?

 ちゃんと謝って仲直りしてこいよ♪

 確か~・・・お前の『娘の名』って~・・・」


ユウナギは記憶を辿りながら呟くように言うと、

優しい笑みを浮かべたミラーズが『娘の名』を口にした・・・。


『私の娘の名は・・・『ミランダ』よ。

 私と同じ『銀髪』のとても美しい娘・・・。

 だけどかなりのお転婆さんなのよね~?

 今頃は私の後を継いで『深淵の仕事』をちゃんとしているかしら?』


そう娘の心配をしながらもミラーズの表情は明るかった・・・。

そんな姿にユウナギは複雑そうな笑みを浮かべるのだった・・・。


(まぁ~、元々はお互いの誤解から始まった『縁』だからな~?

 あの時は『封印』と言う道しかなかったが、

 なんやかんやで結果オーライだよな?)


楽し気なミラーズを見ながら、後ろ向きで歩くユウナギが前を向くと、

『おっ?見えて来たぜ』と森を抜けた事を告げた。


だが・・・・。

森を抜け無駄に広い草原に足を踏み入れた時だった・・・。


爽やかに吹き抜ける風が頬に当たる中、

この場に居た当人達の顏は引き攣っていた・・・。


「あぁ~・・・っと・・・コレ・・・は~?」


「・・・あ、あの時の・・・まま・・・なのね?」


「・・・だな~?」


そう言いながら2人が見つめる風景はとても酷いモノだった・・・。


「まるで爆心地だな・・・こりゃ~?」


「・・・大きな戦闘が有りましたって感じに酷いモノね?」


「まぁ~その原因は俺達・・・なんだけどな~?

 あはははは・・・あぁ~あ・・・」


「そ、そうね」


そんな『爆心地』を見ながら、

2人の足がその草原に踏み込み再び歩き始めると、

ユウナギから声が掛けられた・・・。


「・・・ところでこれからどーすんだよ?」


『ピタリ』と足を止め前を歩くミラーズにそう声を掛けると、

風になびく美しい銀髪を掻き上げながら振り向いた。


「・・・そうね~、まずはリョウヘイ。

 貴方が得意だった『あの分厚い防御結界』を展開してもらえるかしら?」


「あ、あぁ・・・別に構わねーけど、どうすんだ?」


「ん~・・・そうね~」


ミラーズは空を見上げながらそう呟くと、

『ニヤリ』と笑みをこぼしながらこう言った・・・。


「まずは貴方が当時のような『障壁』が張れるか確かめた後、

 とりあえず・・・ソレを思いっきりぶっ叩くわ」


「・・・ぶっ叩くっ!?」


「えぇ、だって・・・貴方に与えたのは私の『神力』なのよ?

 上手くいくかどうかもわからないじゃない?」


そう楽し気に言うミラーズに、

ユウナギは腕組みをしながら『うーん』と唸ると、

『もし、上手く行かなかったら・・・俺はどうなるんだよ?』と、

不安げな顔で尋ねた。


「フフフッ・・・その時そうね~・・・?

 障壁をぶち破って貴方がものの見事に吹っ飛ぶわ♪」


「・・・ダメだろっ!?

 これから修行するってのに、ぶっ飛ばしたらダメだろっ!?

 お、俺・・・きっとその一撃で死んじゃうよ?

 い、いいの?まじでいいのっ!?

 後で必ず後悔する事になるしきっと泣いちゃうぞっ!?」


必死にそう訴えるユウナギに、ミラーズはわざと『うーん』と唸って見せると、

『でも~さっき私の好きなように~って?』


可愛い仕草でそう言い放つミラーズに、

ユウナギは『好きなようにとは言ってねーよ』と答えた。


「・・・あら。そう?

 フフフッ・・・でもリョウヘイ?」


「・・・なに?」


「全盛期とまでは行かなくても、

 今の私の一撃くらい・・・何とかならないとダメじゃない?」


「そ、そりゃ~・・・まぁ~な?

 お前は封印されていたから、かなり弱体化しているはずだしよ?」


「ならっ♪早速物は試しって事で、

 チョチョイっと、あの『分厚い障壁』を展開してよ♪」


「う、うーん・・・」


ミラーズの要望に少し首を傾げて見せたユウナギだったが、

目を閉じ集中すると両手を前に突き出しながら『障壁』を展開して見せた・・・。


そしてやや首を傾げながらミラーズに『展開』した事を告げると、

『コンコンッ!』とその小さい拳で障壁の強度を確かめた後、

『・・・悪くないわね?』と、にこやかに笑って見せていた・・・。


そんな調子で笑っているミラーズに、

ユウナギは『やれやれ』と言ったポーズで肩を竦めると、

『・・・で?一撃を放つんだっけか?』とそう言ったのだが、

距離を取り振り向いたミラーズはその纏う雰囲気を変えていた・・・。


「えぇ・・・一撃だけね」


「い、一応言っておくけどよ~・・・。

 拳・・・捻んじゃねーぞ?」


ミラーズの身を案じてそう声を掛けたのだが、

当のミラーズは背中を向けると大きく深呼吸をし、

『拳なんて捻らないわよ♪』と楽し気に・・・そして笑みを浮かべながら、

軽く身体を動かしていた・・・。


「あ、あの~・・・?ミ、ミラーズ・・・さん?

 ストレッチ中、大変申し訳ないんだけどさ~・・・

 俺の話・・・聞いてますか~?

 おーい・・・」


そんな言葉がミラーズの背中に向けられるも、

その表情はまさに『邪神の女神』のソレだった・・・。


全身から神力を溢れさせるとその神力で出来ている服を変化させた・・・。


黒かったドレスが一瞬のうちに変化すると、

白をメインにゴールドで縁取りされた、

まるで絹の織物のような・・・そして下着のような胸部アーマーへと変化し、

黒をメインにゴールドで装飾された腰アーマーへと変化した。


獲物を狩るようなそんな眼差しでユウナギに振り向くと同時に、

その途轍もない破壊力を秘めた一撃が左の掌に集約された・・・。


『キュイーーン』


『イビルゴッドッ!ブレイカァァァーッ!』


そして戦闘モードへと切り替わったミラーズの一撃が、

まだ心の準備が出来ていないユウナギに向けて放たれたのだった・・・。


「ちょっ!ちょっと、待てよっ!?

 お、おまっ、お前それっ!本気だろぉぉぉぉぉっ!?

 うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

『ドカーンッ!』


凄まじい爆発を起こし、ユウナギが居た周辺は焦土と化し、

その爆発力と大地を焼土にした事によって周辺に煙が立ち込めていた・・・。


「ふぅ~・・・。

 ん~・・・まぁ、久しぶりにしては悪くないわね♪」


己の攻撃力を確かめた後、

ミラーズはその自慢の銀髪を掻き上げながら妖艶な笑みを浮かべて居た・・・。


そしてまだ土煙りの中に居るであろうユウナギにウインクしながら呟くと、

その魅力溢れる唇を開いた・・・。


「・・・一撃は~い・ち・げ・き・・・でしょ♪

 そ・れ・に~・・・私の技の中でも最弱なの・・・忘れたのかしら?

 フフッ・・・♪」


そう言いながらニヤけるミラーズの目は真剣そのものであり、

手抜きなど一切する気はないと言う意思表示でもあったのだった。


辺りの土煙りが晴れると、そこには障壁内にも関らず、

ボロボロになっているユウナギの姿があり、

呼吸も荒く『ゼェゼェ』と肩で息をしていた・・・


「てっ、てめー・・・。

 まじで・・・死ぬかと思った・・・まじでイっちゃうかと思ったぞ・・・」


「あら?リョウヘイ・・・生きていたのね?

 それは何よりだわ♪」


ミラーズの言葉に肩で息をするユウナギのこめかみがヒクついていた・・・。


「ふ・・・ざけ・・・るなよ・・・」


「ん?リョウヘイ・・・聞こえないんだけど~?

 男ならハッキリと言いなさいよね?」


ミラーズの声に顏を引き攣らせたユウナギが俯くと、

『ボソッ』と呻くように口を開いた・・・。


「そ、そう・・・かよ?

 そうなんだな・・・?ミラーズよ・・・」


「・・・?」


「い、いいぜ・・・て、てめーがその気ってんなら・・・

 あの時の続きをしてやんよ・・・。

 イモムシを・・・舐めんじゃねーぞ・・・ゴラァァッ!

 てめーのその綺麗な顔を、ぐっちゃぐちゃにしてやっからなっ!」


そうボヤキながらユウナギは神力を全身に漲らせると、

声を張り上げ突進して行った・・・。


「おらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 決着っ!着けてやんぜぇぇぇぇぇっ!」


その覇気にミラーズは『ニヤリ』と口角を上げると、

『・・・手加減は必要なさそうね?♪』と、

これから始まる戦いにその大きな胸を躍らせていたのだった・・・。


「今の貴方には・・・無理かもね~♪

 フフフッ・・・こんなにドキドキするのは久しぶりね~♪

 リョウヘイ・・・イ・カ・セ・て・・・あげるわ♪」



今この時・・・。

あの時の決着を着けるべく2人の戦いは始まったのだった・・・。


だが・・・。

誰も立ち入る事のないこの『閉鎖空間』の森の中から、

この戦いを不安げに・・・。

いや、その表情はわからないのだが、

見つめる者が居たのだった・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る