第63話・魔王の話と獣の瞳

こめかみをヒクつかせているユウナギは、

ヒューマの仲裁で気持ちを落ち着けると、

『小瓶に入った赤いモノ』は一旦保留する事にした・・・。


そして今現在・・・

一番重要視される事は・・・。


そう・・・。

ユウナギの動かない両足の事だった・・・。


「で・・・?相棒・・・。

 そ、その~・・・『車椅子・ゼータ』とやらは、

 どう言ったモノになるんだ?」


興味深そうにそう尋ねて来たヒューマに、

ユウナギは『いっひっひっひっ♪』と、

主人公らしからぬ笑みを浮かべた。


「よくぞ聞いてくださったっ!」


「くっ、くださったっ!?」


「おうともっ!

 俺がこの世に創り出す『車椅子』はっ!

 ・・・『変形』するのだっ!」


『・・・変形っ!?』


今まで素知らぬ振りをしていたリアンダーまでもがそう声を挙げると、

先程までとは打って変わって興味津々な様子を見せていた・・・。


『主様っ!?もっと詳しくっ!』


突然話し始めたリアンダーに、

ユウナギは内心『こいつ・・・さっきまでシカトしてやがった癖にっ!』と、

苛立ったのだが、そこは『漢』である主人公・・・。

『グッ!』と堪える・・・事が出来る主人公ではなかった。


「て、てめーっ!リアンダーッ!?

 急に混ざって来やがってぇぇぇっ!

 てめーは一体何様だぁぁぁっ!?」


「・・・うっ」


ユウナギの怒声に顏を引き攣らせたリアンダーは、

何も言えず俯いていた・・・。


すると・・・。


『このたわけがぁぁぁっ!』と、

エルが何故か突然名古屋弁でリアンダーを一喝するも、

その場の雰囲気は冷たかった。


そしてこの時誰もがこう思っていた・・・。


『お前にその資格はないだろっ!?』


そう思ったのだが、誰もその言葉は口にしなかった・・・。

と、言うよりも・・・。

『こいつの事は諦めた』と言うのが正解らしい・・・。



会議を終えたユウナギは早速ラボへと入り、

机に向かって自分がイメージするモノを図面に書き起こしていった。


『カリ・・・カリカリカリカリッ!』


「・・・ん~・・・これだと剛性が足りねーな~。

 それに出力も今ある魔石じゃ・・・」


ペンを鼻と口の間に挟み身体を仰け反らせるように考え込んでいると、

ふと・・・コナギが話しかけて来た・・・。


{主様・・・。

 そう言えばマイノーター様が『例の魔石』の事を言っていたと思うのですが?}


「・・・あっ、そうだった・・・。

 すっかり忘れていたな~」


再びコナギへと変わったユウナギは、

視界共有をしながらラボの中をあちこち探し回り、

漸く見つけた頃にはメイドであるリアンダーが夕食の準備が整った事を告げに来た。


「ん~・・・ぶっちゃけ食っている場合じゃないが・・・」


そう考えたのだが高性能に創られた擬体は、

人と同じように腹が減るのだった・・・。


「・・・高性能化を求めると、『人間』に近付くよな~?

 これって所謂『真理』ってヤツだな」


『グゥゥゥ』と鳴る腹を手で押さえながらボヤくと、

コナギに変わり食堂へと向かうのだった・・・。



そして時は少し遡り、会議が終了した頃の事・・・。


一人『ボツン』とソファーに座るエルが、

とてもしぶ~い表情を浮かべていた・・・。


(お、俺が一体何をしたと言うのだ・・・。

 書物庫がただ・・・ユウナギのせいで見当たらないと言っただけではないかっ!)


しかめっ面を見せたエルが『やはりここはユウナギに抗議をっ!』と、

勢いよく立ち上がった時だった・・・。


「止めた方が無難なのでは?」


「ヒィッ!?」


突然背後からそう声を掛けられたエルは、

思わず飛び上ってその驚きを身体全体で表していた・・・。


「・・・リ、リアンダー殿っ!?

 お、驚くではないかっ!」


「はいはい・・・それは悪う御座いました・・・。

 謝罪したからもういいわよね?」


「なっ!?」


「エルビンク・・・暇なら食事の準備を手伝いなさい」


「ど、どうしてこの俺がっ!?

 魔王様率いる軍の・・・この『参謀』たるこの俺が何故だっ!?」


そう怒鳴って見せるエルに、リアンダー『はぁ~』と溜息を吐くと、

『・・・役立たずの居候だからじゃないの?』と冷めた声でそう言ってのけた。


「うぐっ!や、役立たず・・・だとっ!?

 こ、この俺が・・・魔王様の片腕たる・・・この俺がっ!?」


「・・・はいっ!納得したところでさっさと行きますよ?

 本当に今は『バカの手』も借りたいのですから・・・」


「・・・バ、バカ・・・だとっ!?」


「・・・はい」


「こ、この俺を愚弄するのかっ!?

 貴様ぁぁぁっ!ただではすまぬぞっ!」


「・・・そうですか~♪」


何故か楽し気な表情を浮かべたリアンダーは、

その華奢な拳を『バキッ!ボキッ!』と笑顔で凄まじい音を響かせた。


「・・・え、えっと~」


「・・・さぁ、殺り合うのならさっさと殺り合いましょう♪

 その方が手っ取り早いので♪」


その手慣れた振る舞いにエルの喉が『ゴクリ』と音を立てると、

細かく痙攣し始めた額から・・・いや・・・全身から・・・

嫌な汗が流れ始めたのだった。


「ぼ、暴力は・・・暴力は頂けないなっ!

 リアンダー殿っ!」


「・・・そうですか?」


「あ、あぁっ!この城は勇者殿の城だっ!

 は、破壊でもしようモノなら・・・ユ、ユウナギの・・・

 勇者殿の『製作』を邪魔する事になるっ!」


「・・・確かにそうですね♪」


『にこっ』とそう微笑んだリアンダーが拳を鳴らすのを止めると、

エルは安堵の息を漏らしつつ流れ出る汗を拭った。


(こ、このメイドは一体何者なのだ?

 俺をまっっったく恐れる様子を見せる事もなく、

 それどころかこの俺を・・・馬鹿にしてくる・・・)


笑みを浮かべるリアンダーを見ていた時、

その向けられた笑顔にふと・・・思い当たった・・・。


(はっ!?そ、そう言えばこのメイド・・・

 いつもこの俺を気にかけて来るな?

 こ、これはもしや・・・はぁぁぁぁぁっ!?

 ま、まさかこのメイドっ!?

 俺に惚れている・・・の、ではっ!?

 そっ、そう言う事だったのかぁぁぁっ!?

 魔王様の片腕たるこの俺が・・・そんな事にも気付かぬとはっ!?

 だ、だが・・・すまぬな・・・メイドよ。

 この私はユウナギの配下に手を出すほど・・・不躾な男ではないっ!

 それにこの俺の好みのタイプは・・・そうもっと・・・)


そう考えながらエルは値踏みするかのように、

リアンダーのつま先から頭までをじっと見て行くと、

無意識ながら心の声が漏れ出したのだった・・・。


「フッ・・・すまぬな・・・メイドよ・・・。

 俺の好みはもっとおしとやかで『ボンッ!キュッ!ボンッ!』

 そんな女性がタイプなのだ・・・うんうん。

 したがってメイド殿はその範疇ではないっ!

 しかしメイド殿・・・あまり落ち込むでないぞ?

 ただ俺のタイプではなかっただけなのだ・・・。

 メイド殿も『そこそこ』いい女性でる事に間違いない。

 誇っても良いのだぞ?

 何せ・・・この誉れ高き魔王様の片腕であるこのエルビンクがっ!

 そう言っているのだからな~?

 フッフッフッ・・・アァ~ッハッハッハッ!」


『ブチッ!!』


何かが『ブチギレる』音がこの部屋に鳴り響くも、

無意識下であるエルは全く気付かず、

その口から惜しげもなく垂れ流した言葉に満足すると、

何事も無かったかのように『カッ!』とエルの双眼が見開いた・・・

そう・・・まさにその瞬間・・・。


『はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!食い縛れぇぇぇぇぇぇぇっ!!』と、

リアンダーの絶叫と共にエルの顔面に強烈な拳が炸裂したのだった。


『ふんぎゃぁっ!?』


『バリンッ!ドカッ!キラーン♪』


『・・・思うだけならまだしもっ!

 堂々と声に出して言ってんじゃないわよっ!

 このド腐れ魔族がぁぁぁぁぁっ!!!』


破壊的な一撃を顔面に喰らったエルは、

ユウナギの城の壁と窓を破壊して、空の彼方に消え去ったのだった・・・。


「ふぅ~・・・スッキリしたわ~♪

 さ~て・・・夕食の準備を急がないと♪」


何故か上機嫌となったリアンダーはその部屋を出ると、

楽しそうにスキップしながら『今夜のおかずはどうしよっかな~♪』と、

絶好調な様子で廊下を渡り、夕食の準備の為その姿を消したのだった。



一方・・・。

望まぬ空を飛ぶ事になったエルは・・・。

未だ・・・空を飛行中だった・・・。


「ふむ・・・流石はリアンダー殿。

 俺の魔力が及ばぬ結界を張り、地上に降りる事を許さぬとは・・・

 ふっふっふっ・・・はっはっはっ・・・。

 うっぎゃぁぁぁぁっ!

 誰でもいいから地上に降ろしてーっ!!」


と・・・叫んでいた。


そしてエルの頭に何か抵抗のような圧を感じた時、

突然速度が遅くなり急降下し始めた・・・。


「と、突然どういう事だぁぁぁっ!?

 おっ、おっ・・・堕ちるぅぅぅっ!?

 魔王様ぁぁぁぁっ!?」


エルがそう『魔王』と声を挙げた時、

それはまるで『走馬灯』のように『魔王』が話してくれた事を唐突に思い出した。


「あっ・・・。そう言えばあの『赤いモノ』って、

 昔、魔王様が話して下さっていたな~?

 何だったっけ?

 えっと~・・・ん~・・・あっ、そ、そうだっ!

 アレは確か『鬼』という『魔族よりも恐ろしいモノ』が居ると、

 確かそんなお話をされていたような・・・って・・・んっ?」


目を閉じエルが必死に思い出した瞬間・・・。


目を開けたその先に、迫り来る地面が見え、

再び『わっ、忘れてたぁぁぁぁっ!?』とその声を張り上げると・・・。


『堕ちるぅぅぅぅっ!って、言うか・・・堕ちてるぅぅぅぅっ!?

 いっ、痛いっ!

 これはぜぇぇぇったいに痛いヤツやんっ!?

 魔王様ぁぁぁぁぁっ!?』


更に加速し始めたエルがそう断末魔の叫びをあげると、

『ドカーン』と墜落し、少しの間気絶し完全に伸びていた・・・。


そして暫くするとふと・・・。

謎めいた・・・いや、よく分からない事を絶叫しながら覚醒した。


「かっ、カニカマってっ!蟹じゃないのかぁぁぁぁっ!?

 ・・・って・・・あれ?」


そう絶叫した事すら忘れ我に返ると、

墜落の衝撃により『クレーター』と化した穴から顏を覗かせ、

エルは辺りを『キョロキョロ』と見渡した。


「着陸・・・?

 出来たのはいいが・・・ここは何処だ?

 目の前には何処かで見た、こじんまりとした『森』があるようだが・・・?」


そう口を開いた時・・・。

夕焼けのせいかその森の一部が『赤いモヤ』に包まれているように見えた。


「・・・はて?コレもどこで見たような?」


『墜落』した衝撃で『魔王の話』を忘れてしまったエルは、

眉間に皺を寄せ考え込んでいた時、何者かの気配を感じ振り返った・・・。


赤い夕焼けのせいなのだろう・・・。

その光によってその顔が判別出来なかったのだが、

風に『ゆらゆら』と揺れるモノが女性のスカートだとわかると、

まだ少し距離があるのにも関わらず、

その女性に声をかけ『現在地』を知ろうとしたのだった。


「そこの可憐な女・・・。

 ここが何処か教えてくれないか?」


『フッ』と意味なく笑みを浮かべたエルは内心・・・

『キマったっ!』とニヤついていると、

『ドスッ、ドスッ』とその重い足音に気付いた・・・。


「ドスッ、ドスッって聞こえるんですけど・・・

 あははは・・・き、気のせいだよな?

 可憐な女の足音が・・・はっはっはっ・・・

 そんな馬鹿な事があろうはずもな・・・い?

 あ、あれ・・・?」


その不安気な声に反応するかのように、

こちらに向かって歩いて来る『女性』が口を開いた・・・。


「あ~らぁ~ん♪貴方・・・こんな所で一体どうしちゃったの~?」


「・・・・・」


まだその女性との距離は・・・ある。

だが不思議な事にその女性の野太い声が、

まるで・・・近くに居るかのように聞こえた・・・。


「・・・はっ!?こ、これは・・・ゆ、夢だっ!」


そう自分に納得させるかのように言うも、

その野太い声が現実だと知らしめ、

エルは言葉を失い、軽い眩暈を起こしたのだった・・・。


「あっら~ん♪ちょっと貴方本当に大丈夫なの~?」


エルに声を掛けた『女性』が『女性ではないっ!?』と、

エルの本能がそう告げ『警鐘』を『ガンガン』響かせていた。


そしてその『女性?』と思わしき『謎生物』が、

エルの眼前に姿を現すもその姿は逆光で顔を認識する事が出来なかったのだが、

・・・そう、エルはとある違和感を感じた・・・。


「・・・で、でか・・・い。

 な、何だ・・・こ、この・・・『謎生物』はっ!?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・何か言ったかしら?」


「い、いいいい・・・いや・・・そ、その・・・な、何でもない・・・のだ」


「もう~♪照れちゃって可愛いんだからぁ~ん♪

 って言うか貴方・・・怪我でもしているんじゃ?」


「けっ、怪我ですかーっ!?

 しっ、しっ・・・してませんよ~♪

 嫌だな~・・・本当にもう~♪

 あはは・・・あはははははは」


「あ、あらそう・・・?

 貴方が今居る場所がとても立派な『クレーター』が出来ているから、

 私はてっっっきり~♪大怪我でもしているんじゃないかと思って~♪

 いや~ん♪私ったら~♪大きな勘違いをしちゃったわ~ん♪

 ・・・テヘペロッ♪』


(オッ、オェェェェェェッ!

 こ、これは・・・ダ、ダメだ・・・絶対にダメなヤツだっ!

 そう俺の『本能』が告げているっ!)


エルはその『謎生物』と会話をしているうちに、

どんどん陽が傾くと、見てはいけないモノを見る事になってしまった・・・。


『ヒグッ!?』


「・・・ひぐ・・・?」


「・・・・・」


『ヒグッ!?』と言うのはその『謎生物』の容姿が当然思っていたモノではなく、

『絶対拒否』とエルの本能が『断固拒絶』を示した声が漏れ出たモノだった。


だがその『謎生物』は暫く考えた後、

野太い声で『・・・あぁん?てめーっ!』と突然キレ始めた。


『は、はいぃぃぃっ!?な、何で御座いましょうかぁぁぁっ!?』と、

エルはその場で『土下座』を瞬間的に行い『ガタガタ』と震え始めた。


「てめー・・・今・・・俺に向かってなんつった・・・?」


「えっ!?えっと~・・・えっと~・・・」


「この俺を見て・・・『ヒグマ』っつったよな~?

 ・・・あぁん?いい度胸してんじゃねーかっ!?」


凄まじい迫力で強烈と思える程のその顔を近付けると、

『ヒ、ヒグマって、な、何でしょう?』と、

今にも爆発しそうな表情を浮かべた。



「てっめ~・・・ヒグマも知らねーのかよ?

 お前・・・一体何処のヘタレだ・・・あぁん?」


(こ、この謎生物に・・・く、食い殺されるぅぅぅっ!)


そうエルが『魔王様ぁぁぁっ!』と心の中で助けを求めた時、

『ん?』と戸惑う声を『謎生物』が挙げ始めると、

突然『あっ、やばっ!』と声を漏らし焦り始めた。


「あ、あら~いや~ん♪

 わ、私ったら~・・・ツイ・・・うふふ♪

 あっ、そうそう・・・私の名は~・・・『フーシュン』って言うのよ~?

 あそこに少し見える『ルクナの街』で商売してるのよ~♪」


「・・・ルクナ?」


「うんうん♪そうなのよ~♪」


(こ、此処は・・・『人界』だとっ!?

 そ、そんなバカなっ!?

 お、俺は亜空間の壁を突き破ったとでも言うのかっ!?)


エルは先程とは違った汗を流し始めていると、

野太い『謎生物』の声がエルを現実に引き戻した・・・。


「なっ!?」


「ちょっと~・・・一体どうしちゃったのよ~?

 急にボ~っとしちゃうから、びっくりしちゃったじゃないのよ~?」


「あは、あははは・・・す、すみません・・・。

 ちょ、ちょっと・・・あ、あの街に・・・

 と、友を・・・た、訪ねようかと・・・思いまして・・・」


「・・・あら?

 貴方・・・『ルクナ』に友達が居るの?」


「はい・・・だ、大親友が住んでいるのですよ~♪

 あははははは」


『大親友・・・ねぇ~?』と何故か値踏みするかのように、

エルを『ジロジロ』と舐めるように見ていると、

『フーシュン』と名乗った『謎生物』が口を開いた。


「その大親友って誰なのかしら?」


「・・・へっ?」


「あぁ~私ね?あの街で商売してるって言ったでしょ?」


「・・・はい」


「だから大抵の住人の事なら知ってるから、

 誰か教えてもらえたら案内・・・するけど?」


そう優しく言ったフーシュンではあったが、

エルにはそう話す瞳が笑っていない事に気付いた。


「あ、あの~・・・ですね?

 だ、大親友の名は・・・『ユウ・・・』」


エルはユウナギの名を口にしようとした時、

一瞬『ギラッ』とフーシュンの瞳がまるで獣のように光るのを見た。


その獣にも似た瞳の光に『ゴクッ』と息を飲んだエルが、

話の続きをする事も忘れ金縛り状態になると、

フーシュンの方から『もしかして・・・ユウナギちゃんかしら?』と、、

その名を告げられたのだった・・・。


エルは汗を浮かべながら勢いよく何度も『コクコク』と頷くと、

突然フーシュンの獣の瞳が消え失せ『うっそ~ん♪』と、

何故か急にはしゃぎ始めた。


『えっ?えっ?』と戸惑うエルを置き去りにして、

フーシュンはとんでもない事を言い始め、

その言葉にエルは『悪寒』が・・・。

ブチギレている時の『おかん』のように『悪寒』が身体を駆け巡った。


「うふふふ♪

 ここだけの秘密だけど~♪

 わ、私とユウナギちゃんってぇ~♪

 この街のみんなが羨むほどの~♪

 『ベスト・カップゥ~』なのよ~ん♪」


そこだけ『発音いいなっ!?』と、そう思ったのは私・・・。

みんなのアイドルことっ!


香坂 三津葉(25 独身・彼氏募集中♪ですっ!

久々の登場ですが・・・。

実はこの原作者はですね・・・?


只今絶賛っ!『社畜』の強制スキル発動中につき、

『脳』がバグリまくっておりますので、ご容赦下さい♪


今回はかなり出番が少ないですが、

この辺で~♪



『ぐはっ!!』とまるで『吐血』でもしたかのように、

エルの口の中に鉄の味が広がると、

それを追い打ちするかのようにフーシュンが訪ねて来た・・・。


「・・・君の名は?」


「・・・?」


一瞬何を尋ねられたのか分からず首を傾げて見せた後、

『俺の名はエル』と名乗った。


未だ何を尋ねられたか『?』を浮かべて居ると、

フーシュンが甘えた恐ろしく野太い声で・・・。


『あ・り・が・と・・・ちゅっ♪』


唖然とし隙だらけとなっていたエルの頬に、

フーシュン頬を赤く染めながら『キス』をしたのだった。


そしてその瞬間・・・。


『ドサッ』とエルはクレーターの中で意識を消失し、

それを見下ろすフーシュンの瞳が『青紫色』に鈍く光っていたのだった・・・。


「私の情熱的な『キッス♪』が強烈過ぎて~♪

 失神しちゃうだなんて♪

 うふふふふ♪

 本当に・・・この『元・参謀様』は可愛いんだから~ん♪」


意味有り気な言葉を吐いたフーシュンは、

失神するエルを肩に担ぐと暗闇へと変わった夜道を、

『ルクナの街』目指し帰って行くのだった・・・。

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