第60話・知る者

突然ユウナギから『両足が動かない』と告げられ、

アスティナ達が困惑していると、

コナギがユウナギに声を掛けたのだった・・・。


「ユウナギ様・・・。

 今は目覚めたてですので中に入られては?」


その申し出にユウナギは『そうだな』と返答すると、

擬体であるコナギと融合したのだった・・・。


だがその途端・・・。


『ガクッ!』と両膝が力なく折れ曲がり、

地面に崩れ落ちると、ユウナギは唖然としていた・・・。


「なっ、何?一体どういう事なんだ?

 足に・・・力が・・・いや・・・。

 両足の感覚が・・・ない・・・?」


その様子にアスティナは慌てて駆け寄ると、

険しい表情見せながらレディに声を掛けた。


「ル、ルーズベルトっ!」


「・・・な、何よ?」


「・・・れ、例の宝石で『冥界の力』を阻害してくれない?」


「・・・無理よ」


「・・・ど、どうしてよっ!?」


『無理』と拒否されたアスティナはあからさまに怒気を強めるも、

肩を竦ませたレディが諭すように話しかけていった・・・。


「・・・さっき話したでしょ?

 あの魔石は希少で1つしかないって・・・」


「・・・あっ」


「それに見た所・・・」


そう言いながらレディは擬体に入っているユウナギを見ると、

ゆっくりと首を振りながら残念そうに話していった・・・。


「どの道・・・コレは私にもどうする事も出来ないわ」


「・・・そ、そんな」


「コレは私の宝石魔法の範疇を越えているわ」


「・・・・・」


レディの言葉により一層険しい表情を浮かべたアスティナに、

『ごめんなさいね』と言う言葉しか出なかったのだった。



そんな会話をしている頃・・・。

ユウナギはコナギと話し合っていた。


「・・・ユウナギ様、一体どうすれば?」


取り乱す事がないものの、コナギは十分に困惑していたが、

そんな事などお構いなしにユウナギの声は明るかった・・・。


{どうすればってよ~・・・お前さ~何、焦ってんだよ?}


{な、何をって・・・た、大変な事じゃないですかっ!?

 だ、だって・・・あ、足がっ!?}


{はっはっはっ!}


突然そう笑い始めたユウナギに流石のコナギも『ムッ!』としたのだった。


{何を呑気に笑っておられるのですかっ!?

 主様の足が・・・動かないんですよっ!?}


{・・・だね~?}


{だ、だね~・・・って・・・}


余りにも楽観的にしているユウナギに、

コナギは心底呆れまさに怒鳴ろうとした時だった・・・。


{いい加減にっ!}


{ハイ・・・ストーーーップっ!}


{なっ!?}


{別に俺は何も考えずに居る訳じゃねーよ}


{・・・そう・・・なのですか?}


{あっっっったり前だろうがっ!

 この天才発明家のこのユウナギ様がだよ?

 こんな事くらいでいちいち焦らないっつーのっ!}


『ニヤッ』とユウナギが『ニヤ』けたイメージが流れて来ると、

コナギは安不安げな息を漏らしていた・・・。


{・・・別に楽観視はしてねー・・・けどよ?

 実際こうして動かないんじゃ~しょうがねーだろうが?」


{・・・は、はい。確かにそう・・・ですが?}


{だろ?だから俺様はさ~・・・

 超・画期的で大胆かつっ!ワンダホーでビューテホーなっ!

 超絶かっけぇーっ!『車椅子』を作るのだっ!}


{・・・・・}


ユウナギの言葉に思考が停止したコナギが黙る中、

饒舌に話を続けていった・・・。


{まぁ~、そのなんだ~・・・。

 確かに俺は無茶したからコレはその代償だと思っているっ!

 だがしかぁぁぁしっ!

 陽が昇らない明日はないっ!

 って事は・・・だ、つまり・・・

 コレは『神以外』の誰かがこの超絶天才発明家の俺様にっ!

 偉大な発明をしろっ!と、言う・・・

 『神以外』の偉大なヤツがっ!

 俺様に試練を与えたのだっ!}


長々とそう話すユウナギに、

コナギは『我が主ながら何とも・・・』と頭を抱えていると、

ユウナギの声が突然『真剣モード』になった。


{実際なんだ~・・・やべぇ~とは思ってる。

 だが正直、今の段階じゃ~手の打ちようがねー・・・。

 だから自分なりに色々と考えるしかねーだろうが?}


{・・・は、はい}


{だからコナギ・・・。

 俺に力を貸してくれよな?}


{・・・はい、勿論で御座います}



ユウナギとコナギがそう話しているとアスティナ達も話を終え、

とりあえずコナギに変わり家路に着く事になった。


そしてその道中・・・。

レディ達『怪盗・レディ・ルーズベルト一味』に代金を払う為、

暫くの間行動を共にする事になり、

その間レディ達はユウナギの治療を手伝うと言う話しになったのだった。


~ 帰宅後 ~


ユウナギはコナギの中で不機嫌だった・・・。

何故なら・・・。


{つーかよ~・・・どうして俺ん家にこんなにも人が居るんだよっ!?}


{ははは・・・ま、まぁ~これは確かに・・・}


ユウナギの目の前には『ルーズベルト一味』とシャルン、

そしていつものメンバーが所狭しとしていたからだった。


因みにチャダ子はと言うと・・・。


「一度自宅に戻っておりますので、

 何かありましたら『らぶりん』を通して頂ければ・・・」


そう言うと亜空間の井戸がある自宅へと帰って行った・・・。



ユウナギはコナギと念話しつつも周りから、

『ちょ、ちょっとあんた達っ!ウロチョロしないでよっ!』と、

アスティナの声が聞こえ・・・

『ア、アスティナさんっ!この人達は何なんですかっ!?』と、

出番の少な過ぎる『ハインリヒ』がこの状態に文句を言っていた・・・。


そんな中エマリアは1人、キッチンで夕食の準備に取り掛かっていたが、

『・・・人多過ぎ・・・まじでウザい』と聞き慣れない言葉が、

その口から漏れ出ていたのだった・・・。


{ったく・・・なんなんだコレは・・・}


コナギの中で1人ボヤいていると、

ソファに座るコナギの背後から『ちょっといいかい?』と声がかかった。


「・・・ルーズベルトさん、何か御用ですか?」


「・・・あぁ~、今ってコナギって人に代わっているんだったわね?」


「はい、ユウナギ様にご用・・・と、言う事ですね?」


「・・・えぇ」


背後を振り返りながらそんな会話をしていると、

ユウナギから二階の自室で話すよう言われ、

賑やかしくしているリビングを出ると、

レディとコナギは二階へと上がって行ったのだった・・・。



二階に在るユウナギの自室へと入り、

コナギはいつもユウナギが座る椅子に腰を沈めた・・・。


{御用の際はお声を・・・}


そう言い残すとコナギは消え、ユウナギが表へと出て来た・・・。


「ルーズベルト・・・まぁ~適当に座ってくれや」


「・・・有難う」


ユウナギが定位置としているその場所には大きな机があり、

そしてその背後には大きな窓があった・・・。


そしてその机の正面には真ん中にテーブルが在り、

それを挟むように2人用のソファーが2脚あったのだった・・・。


レディはソファーに腰を落すと、

ユウナギは念話を飛ばしエマリアに『お茶』を頼んだ。


そして互いに無言が続く中、

『お茶』を持って来たエマリアが退室すると、

ユウナギは話を切り出して行った・・・。


「ん~・・・で?ルーズベルトさんよ~・・・

 代金の方なんだが・・・」


そう話を切り出したユウナギの言葉が言い終わらぬうちに、

レディは俯きながら話して行った・・・。


「ユウナ・・・ギ・・・じ、実は・・・」


「・・・ん?どうしたんだ急に?」


「え、えっと~・・・ね」


「つーかお前の宝石の代金の話をしようとだな?」


困惑気味にユウナギはそう口を開くと、

何故かレディの顏は徐々に赤みが差して行くのがわかった。


「・・・お、おい、一体どうしたんだよ?」


心配そうに口を開いたユウナギに、

レディは『じ、実は・・・思い出したのよ』と話し始めた。


「・・・思い出すって一体何の話だ?」


「・・・あ、あんたを見た時、

 どこかで会ったような気がしていたんだけど・・・」


「・・・どこかでって・・・いつだよ?」


「・・・大戦の時よ」


「・・・大戦って・・・おい・・・お前・・・

 俺が誰かわかって?」


「・・・えぇ、勇者・リョウヘイでしょ?」


ユウナギは『まじかよ』と驚いて見せると、

レディは『人族と魔族の大戦』があった頃・・・と、

ユウナギと出会った時の話をし始めた・・・。


「あんた・・・覚えているかい?

 『クラナダ地方』の極寒地帯で人族を助ける為に、

 『捕虜収容所』に乗り込んで来た時の事を・・・」


「・・・グラナダの捕虜収容所って・・・

 あぁ、ちゃんと覚えているよ」


「私とあのバカ達はあそこに居たのよ・・・」


「・・・まじか?」


「えぇ・・・」


嘗てユウナギが勇者だった頃、

魔族に捕らわれていた者達を救うべく、

『勇者とその一行』はたった5人で『グラナダ地方』に在る、

極寒の地へと赴き『捕虜収容所』に乗り込んだのだった。


「あぁ~・・・今でもよ~く覚えてる・・・」


感慨深くそう呟くユウナギに、

レディは『ねぇ・・・』と言葉を続けた。


「私達を解放してくれた時にさ・・・

 私は貴方とある事が理由で会っているのだけど・・・

 この顏・・・覚えてないかしら?」


そう言いながらレディは『マスク』を取ると、

ユウナギはとても渋い表情を浮かべた・・・。


「・・・どうしたのよ?」


「い、いや・・・じ、実は・・・だな?」



さてさて~♪

久々の登場ですね~♪


って事で・・・此処からは私がご説明させて頂きますね♪


って・・・。

そう、私は・・・巷で人気沸騰中のナレーションのお姉さん♪

香坂 三津葉 (25 独身・彼氏募集中♪


『ウェ○ーニュース』の『キャスター達』には負けないっ!

そんな精神でやっております♪


『コホン』

ユウナギがどうして渋い表情を浮かべたのか・・・

それには理由が御座いまして・・・。


実はですね・・・ここだけの話・・・。


なんとっ!これ以前の話の中で・・・

『レディはマスクを取ると・・・』の一文と、

『マスクの下からは誰もが美女と認めるほどの・・・』の文がですね・・・

抜け落ちていたんですよ~♪


どーしようもないですよね~・・・

シレっと継ぎ足そうかと思ったらしいのですが、

『い、今更・・・だよね?』と言い訳して、

今回『補足』と言う形で本編に捻じ込んで来たのですが・・・


ふっふっふっ~♪

私が居る限りっ!そんな事は許しませんっ!


って事で、告発する形となりましたのであしからず♪


では、本編に戻ります♪



『マスク』を脱いだレディに首を傾げて見せると、

レディは『・・・お忘れかい?』と少し寂し気な笑みを浮かべた。


「・・・う~ん」


「・・・ったく・・・こんな美女を忘れるだなんてさ~

 あんた・・・男としてどうなのよ?」


「・・・し、辛辣過ぎねーか?」


『やれやれ』と肩を竦ませて見せたレディは、

『じゃ~ヒントをあげるわ♪』と楽し気にそう言った。


1・絶世の美女


2・魔力があっても魔法を使えない美女


3・きっかけは『とある聖剣の欠片』


『せ、聖剣の欠片って・・・ま、まさか・・・』


ユウナギはその勢いで立ち上がろうとしたが、

感覚の無いその足では立てずバランスを崩したが、

何とか両腕を机の上で支えると、

身を乗り出す勢いで口を開いていった・・・。


「おっ、お前ってっ!?

 あ、あの時の・・・無駄にいい女かっ!?」


『ガクッ』


「む、無駄にって・・・ちょ、ちょいとユウナギッ!?

 あ、あんた・・・私の事そんな風に思ってたのっ!?」


「い、いや・・・わ、悪い・・・つ、つい・・・」


「って言うかさ~・・・。

 私の顏を・・・こんないい女を覚えていないなんて、

 さっっっすが・・・勇者だわ~・・・

 いやいや~、さっっっすが世界を救った救世主様だわ~・・・」


ユウナギはレディの心の籠っていないその言葉に、

『すっげー棒読みじゃんか』とげんなりしていた。


するとレディは笑みを浮かべると、

『そう言えばあの時の聖剣って・・・』と言葉を続けた。


その言葉にユウナギの纏う雰囲気が変わると、

『・・・その話はここでするな』と静かにだがその言葉には『威圧』が籠っていた。


そんなユウナギの迫力ある声に気圧されたレディは、

『ゴクリ』と息を飲み背筋が冷たくなった。


「・・・わ、わかったわよ。

 な、何よ・・・急に怒っちゃってさ・・・」


「・・・・・」


レディがそう言うもユウナギの鋭い視線とその威圧に、

再び背筋に冷たいモノが走るのを感じていた。


「・・・わ、悪かったわ。

 その変わりよう・・・相当な理由があるのね?」


「・・・あぁ、だからその話は今後するな。

 気軽に触れていい話じゃねーんだ・・・」


「・・・わかったわよ」


ユウナギの自室に張り詰めた緊張感が漂う中、

『ふぅ~』と息を吐くと話の続きをし始めた。



「つーか・・・あの時、解放した女が今では『怪盗』ね~?

 折角助けてやったってのによ~・・・

 何でまた『怪盗』なんてやってんだよ?」


呆れ声を漏らすとレディは『ふぅ~』と息を吐くと、

『私が怪盗になったのは・・・』と話し始めたのだった。


「あんたを・・・恩人である勇者の助けがしたかったからよ・・・」


「・・・助け?」


「えぇ、あんた・・・王宮の貴族共にハメられたんだって?」


「・・・お、おいっ!?」

 

ユウナギはレディの言葉に再び声を挙げると、

『待て、待て待て・・・』と口を開いていった。


「お、お前がどうしてそんな事知ってんだよっ!?

 俺がハメられたってのは、ごく一部の者しか知らないんだぞっ!?

 そ、それなのに・・・どうしてお前がっ!?」


「フッ・・・私を舐めないでほしいわね?

 今回はちょいと無様な姿を見せちゃったけど、

 私達『怪盗』はその筋じゃちょっと知れた強者なのよ?」


「つ、強者って・・・お前・・・

 きょ、今日のアレを見る限りじゃ~とてもそうとは・・・」


「お黙りっ!」


「・・・はい?」


「きょ、今日のは・・・そ、その・・・何て言うか・・・

 い、色々と時間がない中っ!

 あるモノで何とかしなくちゃいけなかったんだからっ!

 しょ、しょうがない・・・って・・・言うか?」


「・・・へいへい」


「くっ!」


レディの言い訳にユウナギは呆れ顔を見せると、

『・・・で?』と話の本題へと促したのだった・・・。


ところがレディはユウナギを見つめたまま悲し気な表情を浮かべ、

『でも・・・』と言いにくそうにしていた。


「おいおいおい・・・何だってんだよ急に・・・」


「だ、だって・・・さ・・・。

 あ、あんたの両足が・・・さ」


今は机に隠れて見る事は出来ないが、

ユウナギの両足は『冥界の神力』を過剰使用した為に動かなくなっていた。

そんなユウナギにレディは『あんたがこの状態じゃ・・・』と、

心でそう呟いていたのだった・・・。


「・・・ったくよ」


レディの心情を察したユウナギは溜息を漏らすと、

『そんな悲し気な顔してんじゃねーよ』と吐き捨てた。


「・・・で、でもあんたの足はっ!?」


「けっ!このくらい別にどうって事はねーんだよ」


強がるユウナギにレディは険しい表情を浮かべると、

立ち上がりユウナギがふんぞり返る机を思いっきり叩いた。


『バンッ!』


「・・・なっ、何だってんだよ?」


「あんたが誰にも弱みを見せたくないってのはわかるつもりよっ!?

 だけどね・・・ユウナギ・・・。

 人には出来る事と出来ない事があるのっ!

 いくら勇者だからって、苦しい時は苦しいって言いなさいよっ!」


怒りの表情を見せたレディにユウナギは『フッ』と笑みを浮かべると、

『フンッ!冗談じゃねーよっ!』と悪態をついた。


「てめーには悪いがよ~・・・

 俺は別に伊達で『勇者』なんてもんをやってたんじゃねーんだよっ!

 これくらいのハンデ・・・今までも何度も経験してるっつーのっ!

 たかが両足が動かねーだけじゃねーかっ!?

 こんなもん・・・とっっっくに対策を立ててるっつーのっ!

 元・勇者・・・舐めんじゃねーぞっ!」


今度は逆に怒りの形相を見せたユウナギに、

レディは言葉を失ってしまったが、

絞り出すように『じゃ、じゃあ・・・どうするのよ?』と言葉が零れ出た。


「ふっふっふっ・・・」


「な、何よ?」


「次にてめーに会う時にはよ~・・・

 この天才発明家で天上天下唯我独尊のこの俺様がっ!

 しっっっかりと克服してる所を御見せしようじゃねーかっ!」


「その自信は一体何処から来るのよ?」


自信満々でそう吠えたユウナギに、

レディは呆れ返り顏を引き攣らせたが、

『元・勇者・・・か・・・』と心の中で呟くと、

『じゃ~・・・』と話を続けようとしたのだった・・・。

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