第56話 暴走と現れた者

突如として現れた男女・・・。

その男女は自分達の事を『勇者刑事』と名乗った・・・。


そして仮面を着けた男が『わぁ~はっはっはっ!』と、

意味もなく笑う姿にアスティナは軽い眩暈を感じた・・・。


「フッ・・・。

 そこの薄汚い覆面を被った者共ーっ!

 この俺が来たからにはっ!

 貴様達はただただ蹂躙されるのみっ!」


そしてその話はいつまで続くのか?

そう思われる中、チャダ子がユウナギを治療しながらも、

アスティナに声を掛けて来た・・・。


「ア、アスティナさん?」


「ん・・・ん?な、何・・・よ?」


「あの方の話はまだ続いていますが、

 ちょっとわからない事がありまして・・・」


アスティナはチャダ子に『ん?』と告げるも、

未だに大声で話している『男』に怒声を発した・・・。


「ちょっとあんたぁぁぁぁぁっ!

 いつまでしゃべってんのよっ!?

 いい加減その口を閉じなさいよーっ!」


「な、何だとっ!?アスティナッ!?

 い、今・・・いい所なのだっ!

 邪魔せず俺のありがた~い話を聞けっ!

 さすれば『下品な塊』の貴様も少しは『上品』になると言うものっ!」


「・・・げ、下品・・・?

 誰が下品なのよぉぉぉっ!?誰がっ!

 ・・・あ、あんた・・・後で覚えておきなさいよっ!」


ブチギレたアスティナに、チャダ子は苦笑いを浮かべると、

アスティナに『質問があるんでしょ?とっとと言いなさいよ』と、

ややキレ気味に急かされた。


「あ、あの~・・・ですね?

 『勇者刑事』って言うのは~・・・一体・・・?」


首を傾げながらそう言ったチャダ子に、

アスティナは腕を組み首を傾げ暫く考え込み始めた・・・。


そしてその結果・・・。


『ん~・・・わかんない』と答え、チャダ子の表情が引き攣ると、

『あんな馬鹿連中の事なんて、わかる訳ないでしょっ!』と、再び逆ギレされた。


そんな時だった・・・。


その男の話の『ウザさ』と、その話の『長さ』に、

『怪盗・レディ・ルーズベルト達』がうんざりとしながら怒りの声を挙げた。


「そこの似合わない仮面の男ーっ!

 いい加減にその口を閉じないとっ!

 僕ちゃん達も黙っていないわよーっ!」


「せやせやーっ!

 あんさん何を訳のわからん事をいつまで言うとるんや~?」


覆面を被った男達がそう言い返し始めると、

まさに・・・子供の喧嘩状態に突入した・・・。


仮面の男がその声に過剰な反応を見せ言い返すと、

覆面をした男達が再び言い返す・・・。


まさに『子供の喧嘩』だった・・・。

そしてその内容的には・・・。


『やーいっ!やーいっ!』だったり・・・。

『バーカッ!バーカッ!』&『バカって言ったヤツがバカなんですぅ~』・・・。

と、言った具合である・・・。


そんな男達が同じような大岩の上で罵り合う中、

残された女性達と言うのは実に冷静なモノ(?)だった・・・。


仮面の女は大岩の上にテーブルを出しお茶セットを取り出すと、

お湯を注ぎマドレーヌを食べ始めた・・・。


「・・・おやつを食べ忘れていたから丁度いいわね♪」


そして『怪盗側』の女は『煎餅』的なモノと、

マジックボックスから座布団を取り出しそれを丸め、

寝そべりながら『煎餅』をかじり始めた・・・。


「ったく~・・・いつまでくっちゃべってんだい・・・。

 まぁ~どうせこの状態じゃ言っても聞かないから、

 バカ共はほっとくに限るわね~♪」


あくまで女性達は『放置』を決め込んでいる様子で、

それに気付かぬ『バカ共(男達)』はまだ言い合っていた・・・。


その間・・・。


『白い霧』を突破して来た『シャルンとコナギ』

そしてその肩に乗る『らぶりん』だった・・・。


決死の覚悟で『白い霧』の中を突破して来た者達にとって、

目の前で繰り広げられる言い合いに顏を引き攣らせていた。


そして視線を落とすと重症のユウナギに、

その顏が青ざめていった・・・。


「ちょ、ちょっと!ユウナギは大丈夫なのっ!?

 わ、私も回復をっ!」


シャルンがしゃがみながらそう言うも、

チャダ子からはこんな声が返って来た・・・。


「ま、魔法は・・・何故か弾かれてしまいますっ!」


そう言いながら一度シャルンを見ると、

汗を流しながら治療に集中するのだった・・・。


「ど、どうして魔法が弾かれるのよっ!?」


シャルンがそう言うと今度は黙って見つめている『コナギ』が答えた。


「・・・ユウナギ様は今、己の身体の中で、

 『冥界の神力』を蓄えているようです」


「冥界の神力を体内でっ!?」


そう声を挙げたシャルンとは打って変わって、

アスティナは『フンッ!どーせそんな事だろうと思ったわよっ!』と、

何故かキレていた・・・。


「だ、だったらどうしてあんたは治療をっ!?」


「・・・そ、それは私が今使用しているのは、

 数少ない私のスキルでして・・・」


そう答えるチャダ子の表情には色濃く疲労が見て取れていたが、

ユウナギを助けたい一心で全力を注いでいた・・・。


そしてアスティナが言い争う連中を睨んでいる中、

他の者達は治療を受けるユウナギの周りを囲み、

どうするかと思案しているのだが・・・。


ただ1人・・・いや一匹の羊だけが、

俯きその肩を小刻みに震わせていた事に、

全員が全く気付いていなかったのだった・・・。


「メッ・・・メッ・・・メルルッ!」


※ 訳 香坂 三津葉(25)彼氏募集中


『コッ・・・コッ・・・コロスッ!』


その『羊』が俯いた顔を赤らめ肩を震わせて居た時だった・・・。


いい加減言い争いに飽きた男が声を荒げブチギレると、

それを見越した女がティーカップを置き、

口元に着いた食べかすを拭いながら立ち上がった。


『バシュッ!』と突然魔力を放出した女に、

男は一瞬顔を強張らせるも少し震えながら頷いて見せた・・・。


「・・・いよいよアレをやるのだな?」


「・・・えぇ、そろそろ時間的にもいい頃合いでしょ?」


「・・・そ、そうだな」


「・・・でも、その前に」


そう言いながら仮面の女はマジックボックスを開きもぞもぞと何かを探し始めると、

治療を続けるチャダ子に声をかけた。


「貴女・・・このポーションを使いなさい」


『ポイッ』と放り投げたそのアイテムを『きょとん』としながら受け取ると、

『・・・これは?』とチャダ子は声を漏らした。


「そのポーションは今の・・・ユウナギ様を回復させることが出来るモノよ。

 取り返しがつかなくなる前に、それを飲ませなさい」


仮面の女の言葉にチャダ子は『わ、わかりました』と言いながら、

苦悶に歪んだその口を無理矢理開け小瓶の先捻じ込み飲ませた・・・。


それを確認した仮面の女は、覆面の三人組に視線を向けると、

『頃合いね?』と告げ仮面の男に視線を向けた。


「・・・やるのだな?」


「・・・えぇ」


そして互いの距離を取った仮面の男女が、

何かを言い始めた時だった・・・。


『カラン、カラン、カラン』と再び球状のモノが、

仮面の男女が居る岩の上に放たれた瞬間、

『ドカーン』と爆発したのと同時に『ピカーッ!』と、

赤と銀の閃光を放ったのだ・・・。


その赤と銀の閃光を追う三人組は声を挙げた・・・。


「なっ、何なんや・・・アレは?」


「ぼ、僕ちゃんがわかる訳ないでしょっ!?」


「ふ~ん・・・何だか面白そうな展開になってきたじゃないの♪

 さぁ~お前達・・・とっとと準備をおしっ!」


『ホイホイサーッ!』


覆面を被った『レディ・ルーズベルト』の命令に男達は準備に取り掛かり始めたが、

ボスであるルーズベルトの視線は赤と銀の閃光から目を離さなかった・・・。


「さて~・・・その正体を見せてもらおうじゃないのさ♪」


舌舐めずりをしながら向けるその視線の先では、

赤と銀の閃光はやがて違う大きな岩石の上に降り立った・・・。


「なっ!?ア、アレは一体・・・」


ルーズベルトがそう言いながら起き上がるとそこには、

赤と銀色の鎧を纏った者達が姿を現した・・・。


「お、お前達は何者なんだいっ!?」


そのルーズベルとの問いに応えるように、

背を向けた者達が振り返り名乗りを挙げた・・・。


「俺は銀の勇者刑事・・・エル・バンッ!」


「そして私は、赤の勇者刑事・・・リア・バンッ!』


そう名乗ったと同時に2人のメタルな鎧に内蔵されている、

魔石が『キラキラ』と輝いていた・・・。



では、ここでもう一度そのプロセスを見てみよう・・・。


レディ・ルーズベルト一味によって投げられた『魔石爆弾』が爆発した瞬間・・・。


「イバポレイトッ!」


「レッド・イバポレイトッ!」


首から下げられた『特殊な魔石』が赤と銀の閃光を放つと、

その『特殊な魔石』に収納されていた鎧がその姿を現し、

2人の身体に装着されたのだった・・・。


~ プロセス終了 ~


そのド派手な出で立ちを見たルーズベルトは思わず声を漏らした・・・。


「か、かっこいい・・・」


そう漏れ出た自分の言葉に我に返ったルーズベルトは、

頭を数度振ると苛立ちながら声を張り上げた。


「お前達っ!あのド派手な鎧を剥ぎ取っておしまいっ!」


すると岩の下から『ホイホイサー』と声が聞こえると、

緑と青の戦闘服に着替えた男達がその姿を現し、

その手には『楽器』らしきモノを手にしていた・・・。


「あ~ら・・・その鎧に僕ちゃん嫉妬しちゃうっ!

 でもね~僕ちゃん達もこのまま手をこまねいている訳じゃないのよ~?」


「せやせやっ!ワイらが今度は見せつけてやりまっせっ!」


悔し気な表情を浮かべながら2人がそう言うと、

ヒョロイ男は横笛を取り出し、太い男は縦笛を取り出し音色を奏でた・・・。


『~♪~♪~♪』


そして不気味な笑みを浮かべると空を見上げながら声を張り上げた。


「出でよっ!魔竜ちゃんっ!」


「来なはれっ!地竜どんっ!」


その声に反応するかのように、空に空間の歪みが生じ、

地には大きな亀裂が走った・・・。


そしてその中から現れたのは、

黒い魔力をその身に纏うドラゴンと、

その身体から白い魔力を放つアースドラゴンだった。


「ふっふっふ~・・・僕ちゃん達のペットであの世に行きなさいよ♪」


「ほな・・・早速しばきまひょか~?」


『いけっ!』


その声を合図に激しい戦闘に突入したのだった・・・。



その頃、ユウナギ達は・・・。


リアンダーによって渡されたポーションを飲ませ終えたチャダ子は、

不安げな表情を浮かべながら横たわるユウナギを見守っていた・・・。


そしてレディ・ルーズベルト一味の魔獣召喚が始まる頃、

ユウナギの身体は妖し気な光を放ち、

その光が消えると同時に意識を取り戻したのだった・・・。


「んんん・・・やっと効いたか・・・」


そう言いながら身体を起こしたユウナギはその視線を戦っている者達へと向け、

心配そうに見つめる仲間達に『フッ・・・』と笑って見せた。


「心配かけてすまね~なぁ~?

 だけどよ~もう大丈夫だ・・・」


その言葉に怒りの表情を見せたアスティナが、

おどけるユウナギに声を張り上げそうになった時だった・・・。


『ちゅどーんっ!ドカーンッ!』と派手な戦闘がアスティナの言葉を掻き消した。

余りの騒々しさに顏を顰めていると、

耳を押さえながら蹲る羊の白い羊毛が・・・血液のように赤黒く染まった。


その身体から『ユラユラ』と毒々しい冥界の力が揺らめくと、

突然『メルゥゥゥゥゥッ!』と絶叫し始めた。


「ひ、羊さんっ!?どうしたのっ!?」


チャダ子の声が聞こえていないのか、

毒々しい力を放つ羊が『メルッ!』と声を挙げると、

一瞬にして戦闘を繰り広げる者達り元へと移動した。


そして・・・そう・・・。

それは一瞬の出来事だった・・・。


戦闘に介入した赤黒い羊毛を纏う羊は、

あっと言う間に召喚された魔獣達を撃破すると、

その視線を今度はリアンダーたちへと向けた、


『ギラッ!』と双眼を光らせた羊は、

『メルゥッ!』と声を挙げながら駆け出したのだった・・・。



「なっ!何だこのちっこい羊はっ!?

 って・・・アレって羊なのか?」


「油断するなっ!エルッ!」


銀の鎧に身を包んだエルは、

その仮面の下で余裕の笑みを浮かべながらこう思っていた。


(フンッ!たかが羊1匹・・・どうにでもあるわっ!

 それにこの鎧は嘗ての勇者が戦いで装備していた鎧と聞く・・・

 フフフ・・・負けるはずもないっ!)


「はぁぁぁっ!」


エルは腰に装着されていた『剣』を抜くと、

『返り討ちにしてくれるわぁぁぁっ!』と叫びながら斬りかかった・・・。


その様子を見ていてユウナギはエルが剣を抜いた時にこう呟いていた・・・。


「あ~・・・っと・・・あの装備じゃ・・・」


そんな言葉にアスティナが声を掛けた。


「あの装備ってアレ・・・よね?」


「・・・あぁ」


「ご愁傷様です」


拝むようにき斬りかかるエルを見ていた時、

羊とエルから気合の声が発せられた・・・。


『どおりゃっ!』


『メルッ!』


互いにフォロースルーの姿勢を保ちながら静止していると、

エルから『ぐはっ!』と声が漏れ倒れたと同時に銀の鎧が粉々に砕け散った・・・。


「ど、どうして・・・ゆ、勇者が作りしよ、鎧…が?」


そう疑問を抱きながらその意識を手放した時、

ユウナギはソレについてまるで独り言ののように呟いた・・・。


「あぁ~ソレな?

 それは宴会用の見た目重視な鎧なんだよな~・・・」


その独り言に続きアスティナも呟いた。


「あぁ~・・・確かアレって防御力皆無の紙装甲だっけ?」


「あぁ・・・」


するとその話にシャルンが乗っかりチャダ子も質問を投げかけて来た。


「あ、あんなにド派手で如何にもって感じの鎧なのにっ!?」


「そ、それにあの剣だって・・・業物なのではっ!?」


するとユウナギは『ははは』っと乾いた笑いをすると、

その問いにも呟いていった。


「・・・見た目重視だから弱々なんだよ。

 それにあの剣だって・・・ただの鉄で作って見た目をかっこよくしただけ~。

 マジで見た目重視使用なんだよ。

 普通に戦えない装備なのっ!」


そのユウナギの言葉にこの場にいた全員が固まった・・・。


そんな時だった・・・。


ユウナギ達の声が聞こえたリアンダーは、

その見た目重視な仮面の下で『ゴクリ』と息を飲み、

冷汗がダラダラと流れ始めていた・・・。


だがそんなリアンダーの冷や汗を感知した鎧が反応すると、

鎧内部の温度装着者の快適温度へと切り替わり、

切羽詰まっているはずのリアンダーは一瞬・・・。

その快適さに『ほっ』と和んでしまったのだ・・・。


そしてそれが隙を生み和んだリアンダーに双眼を『ギラ』付かせた羊が、

その滾る拳をリアンダーへと食らわせた・・・。


『うぎゃっ!』と声を響かせたリアンダーは、

その『キラーン』と何処かへと消え去ってしまった・・・。


「あ~あぁ~・・・勝手に俺の私物を持ち出すから・・・」


空の彼方へと消え去ったリアンダーを見つめながらユウナギがそう呟くと、

その声に反応した羊の双眼が『ギラッ』と光った・・・。


「ね、ねぇ・・・ユウナギ?

 あ、あの羊・・・ヤ、ヤバく・・・ない?」


「・・・あ、あぁ」


羊はゆっくりとユウナギ達へと向きながら、

その赤く染まった羊毛を逆立てると『・・・メルゥゥゥッ!』と吠え、

一直線に向かって来た・・・。


「ヤ、ヤベェーッ!逃げろぉぉぉぉっ!」


「嘘でしょぉぉぉぉぉっ!?」


「きゃぁぁぁぁっ!」


「いやぁぁぁぁっ!」


「・・・緊急退避ですっ!」


コナギの言葉を最後にユウナギ達が退避しようとしたが、

赤い羊毛の羊は拳を振り上げ迫った。


その時だった・・・。


『うむ、これはいけませんね?』と突然何処からともなく声が聞こえた。


そして逃げるユウナギまであと一歩・・・。

そんな時に突然羊の前に白く輝く障壁が出現し、

羊は成す統べなく衝突してしまった・・・。


「・・・ほっほっほっ」


その聞き覚えのある声にユウナギが振り向いた時、

そこにはユウナギの四天王の1人・・・『ライトニング』が立って居たのだった。


「ラ、ライ・・・一体どうして?」


ユウナギが唖然としながらもそう声を掛けると、

ライトニングは視線だけ向けながら答えていった・・・。


「実はユウナギ様にお願いが御座いまして、

 この場へと参ったのです」


そう答えた時、羊が『メルメェェェェッ!』と怒りの咆哮を挙げ突進して来た。


「うむ・・・なるほど。

 これは所謂暴走状態ですな~?」


「・・・暴走っ!?」


そう話しつつも羊の標的となったライトニングに、

凄まじい攻撃が放たれるも、その攻撃は掠りもしなかった・・・。


ただライニングは『ほっほっほっ』と笑い、

その顔をユウナギに向けながら躱していたのだった・・・。


そんな余裕を見せるユウナギは深く溜息を吐くと、

躱し続けるライトニングに口を開いていった・・・。


「で・・・?ライ・・・。

 そのお願いってのは何だよ?」


「はい・・・実はですね?

 ユウナギ様が今回作られたプロトタイプの擬体をですね?

 お貸し・・・いえ、お譲り頂けないものかと・・・」


「・・・アレをくれってか?」


「・・・はい」


そう会話しながら襲い掛かる羊をあしらい、

まるで子供をでも相手にするかのように立ち回っていた・・・。


「つーか・・・ライ。

 その理由なんて聞いたら・・・答えてくれのか?」


「ほっほっほっ♪ええ、勿論そのご説明も・・・」


そうにこやかに答えるとライトニングは戦いながら説明し始めた。


「実はこの話はヴァマント様が申されまして、

 どうしてもユウナギ様の擬体が1体欲しいと・・・」


「ヴァマントが・・・?何でまた?」


「ほっほっほっ♪

 まぁ~とある方が冥界を彷徨っておりまして、

 その方に使わせたいと・・・」


「・・・ある方?」


ユウナギがそう訝しそうな表情を浮かべると、

ライトニングは『その方については直接聞かれた方が』と答えた。


その言い方にユウナギは『ふぅ~』と溜息を吐くと、

『・・・何かありそうだよな~?」と答えた。


「ほっほっほっ♪」


「わかった・・・わかったよっ!

 だけどよ~?腕・・・飛ばないけどいいのか?」


「・・・う、腕?」


「うんうん・・・。

 プロトタイプだから腕・・・飛ばねーよ?」


「・・・だ、大丈夫かと・・・」


「ふ~ん」



ユウナギが何か言いたそうだったが、

ライトニングは時間がないとばかりに腕時計を確認すると、

『そのコンテナのパスワードは?』と聞いて来た。


「・・・パスワードは、じぃちゃんの弟もニューハーフだ」


そうパスワードを教えると、笑みを浮かべながらユウナギにアドバイスをした。


「ユウナギ様・・・。

 あまり長い時間・・・冥界の力を使われませんように」


「・・・長い時間?」


「ほっほっほっ♪それでは私は急ぎますので・・・」


そう言い残しライトニングはその場から姿を消したのだった。

そして目の前に居た標的を失った暴走する羊は、

次の標的にと・・・。

冥界の神力を放出し始めたユウナギへとその闘志を漲らせるのだった・・・。



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