第49話  時空間結合

アスティナ達のピンチを知ったユウナギは、

『チャダ子』の顔面を鷲掴みすると急ぎ元の空間にへと急いでいた・・・。


理不尽に顔を鷲掴みされ連れて行かれる『チャダ子』・・・。


「い、痛いっ!痛いですってっ!ユウナギ様っ!?

 お、お願いだから離して下さいっ!」


「うっせーよっ!

 今は時間がねーっつったろっ!?

 それにお前・・・俺が手を離した逃げるだろっ!?」


引きずられる『チャダ子』を見る事もなく、

ユウナギは歩いて行く・・・。


「わ、わかりましたっ!わかりましたからっ!

 逃げませんっ!ぜっっったいに逃げませんからっ!」


その声にユウナギは足を『ピタリ』と止めると、

『・・・本当だな?』と威圧するように言った・・・。


「ほ、本当ですっ!」


「もし・・・嘘だったら・・・

 この空間事・・・消し去るけどいいよな?」


「く、空間ごとっ!?そ、そんな事・・・出来る訳が・・・」


顔を盛大に引き攣らせながら『チャダ子』がそう言うと、

ユウナギの肩に乗る『らぶりん』が容赦なくこう言った・・・。


『・・・主様なら、必ずやると思うわよ?』


そして『らぶりん』に続くように『コナギ』もこう言ってのけた。


「私も『らぶりん』に同意します。

 ユウナギ様なら絶対に何があっても『やる』と思いますよ?」


「・・・うぐっ」


そう言われた『チャダ子』は力なく溜息を吐くと、

「・・・わかりました」と絶望色強めに返答したのだった・・・。



そしてユウナギの顔面鷲掴みから解放された『チャダ子』は、

その鷲掴みされ凝り固まった顔を揉み解しながら、

説明していった。


「わ、私の能力の1つに『時空間結合』と言うモノがあります。

 それは今居るこの場所と、対象者が居る場所を強制的に繋げる事・・・」


『チャダ子』の説明を聞いたユウナギはとても興味深そうに聞いており、

また『らぶりん』や『コナギ』も同様だった・・・。


「お、お前の能力・・・えげつねーなっ!?

 って事はなんだ~?

 個人さえ特定出来れば、『ピンポイント』で狙えるってかっ!?」


「は、はい・・・その通りです。

 ただですね・・・その~・・・も、問題が~・・・ありまして~・・・」


「問題?」


「は、はい・・・。

 そ、その~わ、私が移動する際なのですが~・・・

 そ、その~・・・こ、この空間も一緒に移動してしまうのですよ・・・」


「こ、この場所って・・・ま、まさか・・・」


ユウナギ達はそう言いながら、

現在居る空間・・・

つまり井戸があり背の高い樹木がそびえる空間を見渡していた。


「こ、この空間事って・・・おいおい」


「で、ですからですね~?

 私が移動する条件と致しましては・・・」


「い、致し・・・ま、ましては?」


ユウナギはこの時、こんな事を考えていた・・・。


(ま、まさかこの土地全体が収まる空間じゃないと、

 い、移動出来ない・・・とか?

 そ、それとももっと・・・特殊なっ!?

 ま、まじかよっ!?なんてこったいっ!)


そう考えると溜息までもが自然と出て来た・・・。


(ま、まぁ~そんな上手い話しなんて早々ねーよな?)


そんな思いが込み上げて来る中、

『チャダ子』はこう説明したのだった・・・。


「ですから私が出現出来る条件って言うのはですね・・・」


「だ、だよな~?そう簡単には行かねーよな~?」


「・・・その対象者の所にですね?

 その~・・・『TV』があるかどうかが問題な訳で・・・」


「・・・まぁ~そりゃそうだよ・・・

 そう都合のいい事なんて中々ある訳じゃ~・・・って・・・?」


そう言いながらユウナギは『チャダ子』が話した言葉を、

頭の中で何度もリピートしていた・・・。


「『チャダ子』さんや?も、もう一度言ってもらえるかい?」


「は、はい・・・ですから私が出現するには、

 最低条件として『TV』が必要となるのです・・・」


「てっ・・・『TV』かよっ!?

 な、何かもっとこう~・・・と、特別な場所だったりってんじゃなくっ!?」


「・・・はい」


「『TV』だけかよっ!?な、何だよ~・・・驚かせやがってっ!

 ・・・って~・・・」


喜んだのも束の間・・・。

その安堵した表情も・・・次第に引き攣り始めた・・・。


「ま、まさか・・・『TV』って事は・・・」


突然『ガタガタ』と震え始めたユウナギは、

ふとその視線を『チャダ子』へと向けると・・・タイミングよく・・・。


『ジロリ』


「ぎゃっ!ぎゃぁぁぁぁぁっ!?

 やっ、やっぱ『モノホン』じゃんっ!?

 か、完全・・・あ、あの人じゃんっ!?

 き、きっと来る~♪きっと来る~♪・・・うぎゃぁぁぁっ!」


突然ユウナギは冷や汗を『ダラダラ』と流し始めると、

その顔色もまた真っ青を通り越し・・・

真っ白に染まっていたのだった・・・。


そして『恐怖』のピークを迎えたユウナギは・・・。


「おっ・・・おば・・おば・・・おばおばおばおば・・・

 お化けぇーっ!?」


そう叫び声を挙げた瞬間だった・・・。


それを黙って見ていた『コナギ』が突然動き始めた。


「ユウナギ様ご乱心にて、『特別救済処置』プログラマを実行致します。

 対象者に対する『ワクチンプログラム』(ただの電気ショック)。

 300%チャージを申請・・・」


{・・・申請許可}


「了解・・・。3000%シャージ開始・・・」


『キュイーン』


「皆さん、ユウナギ様から離れて下さいっ!」


『コナギ』の要請に『らぶりん』と『チャダ子』は後ろへ下がると、

『お、お化けなーんてなーいさ・・・』と、

再び膝を抱え込みながら歌い始めたのだった・・・



※ 因みにだが・・・。

  『コナギ』が『3000%チャージ』を申請した時、

  {・・・申請許可}と答えたのは、あくまで『コナギ』のフィクションであり、

  実在するモノでは御座いませんのであしからず・・・。



『コナギ』はビビリ倒すユウナギの両肩に自らの両手を載せると、

『ショックッ!』の声と共に『ドンッ!』と言う衝撃を伴いながら、

ユウナギの身体が『三角座り』のまま可愛らしく浮き上がった。


『ブシュゥゥゥ~』と頭から湯気のようなモノが立ち昇ると、

『コナギ』が『大丈夫ですか?』と笑みを浮かべ顔を覗き込んでいた・・・。


『パチクリ』と何度か瞬きをしたユウナギが

顔を覗き込む『コナギ』の存在に気付くと・・・。


「てっ、てめーっ!コナギィィィーっ!

 今の『電気ショックッ!』

 俺じゃなければ死んでいるところだぞぉーっ!?

 って言うかっ!3000%ってありえねぇーだろうがぁぁぁっ!」


『コナギ』の胸倉を掴み激しく揺らしながらそう吠えると、。

その『コナギ』は激しく揺らされながらも答えていった・・・。


「は、はははい・・・わ、わ、わかかかっっってててておおおりりますぅぅぅ」


「ちっ!全く・・・何しやがんだよっ!」


ユウナギに激しく揺らされた『コナギ』は、

まだ地面が揺れているような感覚に襲われながらも、

『急ぎませんと・・・』と進言した。


「・・・わ~ってるよっ!」


そう言うと・・・。

唖然とその光景を見て言葉を失っている『チャダ子』へと視線を移すと・・・。


「つー事はだ・・・。

 この森の入り口から出たとしても、

 元の場所に戻る事は出来ね~ってこったな?」


「・・・はい。

 と、言いますか・・・

 その森とここが繋がっていた事に驚いている訳で・・・」


「なるほどな~・・・ったくよ~・・・。

 つ~事はしつまり『TV』がありゃ~いいんだな?」


そう確認を取ると『チャダ子』は静かに頷いて見せ、

ユウナギは何やら『ブツブツ』と言いながら思案し始めたのだった。


すると突然・・・。


『ブブッー、ブブッー』とユウナギの手に持っていた『通信用の魔石』が振動した。


「・・・アスティナかっ!?」


{・・・いえ、ユウナギ様。

 私です・・・リアンダーです}


咄嗟に応答し魔石から聞こえて来た声は『勇者』のメイドでもある、

『リアンダー』だった・・・。


ユウナギは『リアンダー』に状況を説明すると、

『そうですね・・・』と言い何やら考え始めた・・・。


{ユウナギ様?}


「・・・何かいい方法でもあるのか?」


{・・・『TV』があれば良いのですね?}


ユウナギは『あぁ』と答えながら、

確認の為に『チャダ子』を見ると、無言で頷いていた。


{・・・衛兵達の宿舎や監視施設ならば『TV』があるのでは?}


「・・・なるほどっ!確かにそうだな・・・

 助かったぜっ!リアンダーっ!」


{・・・実は今、私達はで・・・}


『ブツン』


リアンダーの話が途中なのにも関らず、

急いでいたユウナギはその通信を途中で切ってしまつた・・・。


この時それを見ていた者達は『・・・あっ』と声を挙げのは言うまでもない。


通信相手の心配を他所にユウナギは『チャダ子』へと指示を出して行った。


「『チャダ子』お前の力を貸してくれっ!」


その真っ直ぐな眼差しに『チャダ子』は何故か『きゅん』としつつも、

集中し『時空間結合』を発動した。


その間ユウナギは擬体である『コナギ』の中に戻ると、

関節部の可動部に問題がないかをチェックしていった・・・。


そしてそのチェックが終わる頃・・・。


『ユウナギ様っ!繋がりましたっ!』と、

『チャダ子』から発せられた声に反応すると、

『行くぜっ!野郎共っ!』と、その眼光を光らせるのだが、

現実的な話をすると今、ここには・・・

ユウナギを除けば全員・・・『女』しかいなかったが、

突っ込むつもりもなかったみんなは、

『お、おう~』と微妙な声を挙げながら向かって行くのだった・・・。



『チャダ子』を先頭にゲートが開くと、

ユウナギはその言葉を失い唖然と1点だけを見つめ固まっていた。


「ユウナギ様・・・どうされました?

 ゲートは繋がり開きましたよ?」


「い、いや・・・えっと~その~・・・チャダ子さんや?」


「は、はい・・・。何で御座いましょう?」


「・・・ここ~・・・通るの?」


「はい・・・そうですが?」


ユウナギの目の前には『TV』の画面を内側から見るような視点になっており、

内心・・・『ここ、通れるのか?』と不安な気持ちで一杯だった・・・。


「・・・こ、この入り口ってさ?

 通る時に広がったりは~・・・?」


「・・・しませんけど?」


「で、ですよね~?あはは・・・ははは・・・ま、まじか~・・・?」


意を決したユウナギは『い、行きますか』と言うと、

まずは最初に『チャダ子』が出た・・・。


その時出口からは『出たぁぁぁぁっ!?』や『こ、殺されるーっ!?』など、

叫び声やらなんやらとまぁ~賑やか敷く聞こえて来たのだが、

ユウナギ的に今はそんな事など・・・『どうでも良かった』のだ。


「あはは・・・や、やっぱり・・・は、這いつくばって出るんだね?

 ま、まじか~・・・まじでか~?

 お、俺が通るには・・・せ、狭くねーかい?

 つーかこれって『TV』の画面なんだよね?

 も、も~少しでかい『TV』ってあるんじゃねーのかっ!?」


心の中で呟いていたはずが、その不安からか声に出てしまっていた。


そんなユウナギに『チャダ子』もまた引き攣った笑みを浮かべながらも、

狭い出口の先からユウナギに手招いて見せた。


「おいで~・・・おいで~・・・」


「こ、怖ぇーんだよっ!いちいちよっ!

 わ、わかってるからっ!わかってるからさっ!せかせんなよっ!」


ユウナギは不安顔をしながらも深呼吸し覚悟を決めた・


「よ、よしっ!い、行くかっ!」


不安が過ぎりながらもユウナギは這いつくばりながら出口を目指す。

しかし・・・いや、予想通りではあったが、

『TV』の出口から無理矢理上半身を出してはみたが・・・。


「・・・ほ、ほら~・・・だ、だから言ったじゃんよ~・・・。

 狭過ぎて俺・・・無理だって言ったよな~?

 どーすんのコレ・・・まじでどうすんのさ~?

 俺・・・完全にコレ・・・挟まっちゃったよ?

 どうしようもないくらいコレ・・・挟まっちゃったんですけど~?」


『ガクッ!』と項垂れるように力が抜けたユウナギに、

出口の外で待っていた『チャダ子』の声が聞こえて来た・・・

と、言うか・・・物凄く応援されていた。


「ユ、ユウナギ様~・・・ふぁ、ふぁいとですぞ~?

 そ、そこまで来たら後はもう・・・貴方の気力次第ですぞ~♪」


「・・・・・」


その力が逆に抜けてしまうような『チャダ子』の応援に顔を上げると、

部屋の隅では恐ろしさの余り口から泡を吹いている衛士が2名居た・・・。


(ま、まぁ~・・・普通そうなるわな?

 生きてるだけでラッキーだったと思うしかねーよな~?

 衛兵諸君・・・『乙』でしたっ!)


そう思いながら覚悟を決めると、

ユウナギは狭い『TV』の出口からの脱出を試みた。


「・・・ふぅ~・・・ではではっとぉぉぉっ!

 うおぉぉぉっ!ふっ、ふんっぬっ!?

 うぉりゃぁぁぁぁぁっ!」


「がっ、がーんばれっ!がーんばれっ!

 ゆ・う・な・ぎ・ふぁいとぉ~♪」


「・・・・・」


何故かユウナギの目の前では『チアガールのコスプレ』をした『チャダ子』と、

いつの間にかその『チャダ子』の肩に乗っている『らぶりん』が応援していた。


「ふんぬぅぅぅぅぅぅっ!

 まっ・・・まだまだぁぁぁぁっ!」


必死の形相で15インチの『TV』画面からの脱出を試みたが、

当然と言えば当然・・・。

脱出など夢のまた夢・・・だった・・・。


「だぁぁぁぁぁっ!もういっその事っ!」


そう声を荒げながら魔力を解放しようとした時だった・・・。

突然『チャダ子』が『ダメーッ!』と声を張り上げた・・・。


「な、何でだよ?もうこうなったら『TV』を破壊するきゃねーだろ?」


「ダ、ダメですっ!

 もしこの時点で画面を破壊しますと、

 ユウナギ様の上半身だけがこちら側に残り、

 か、下半身は・・・」


そう言いながら『チャダ子』が目を逸らし、

ユウナギはそれを想像してしまったのだった・・・。


「ま、まじか・・・」


『くたっ』となったユウナギだったが、

『・・・出る事されえ出来ればいいんだよな?』と、

『チャダ子』に確認するように呟くと、静かに頷いて見せたのだった・・・。


「・・・なるほどね~。

 つー事は・・・だ・・・」


ニヤりと笑みを浮かべたユウナギは、

凝縮した魔力を『TV』画面から出ている頭上に出現させると、

『リトリーノ』と言う魔法を使用した・・・。


すると・・・。


『何という事でしょう~♪

 小さな『TV』画面に挟まっていたあの・・・

 ユウナギが・・・。

 見る見るうちに小さくなり・・・

 わずか5cmほどになったではありませんか~♪

 流石は『匠』と言われたユウナギ・・・(そんな事言われた事もありませんが)

 世にも珍しい魔法をこんなどーでもいい場所で披露したのです♪』


by 加藤み○り風・・・。

   香坂 三津葉のモノマネでした♪てへぺろっ♪



小さくなったユウナギはとっとこと『TV』画面から飛び降りると、

1分ほど経過すると自然に元の大きさに戻ったのだった・・・。


そして一言・・・。


「『リトリーノ』の魔法ってさ~?

 ゴロが浄水器の『トレビ○ノ』に似てね?」


そう呟きながら『ニヤニヤ』するユウナギに、

『チャダ子』と『らぶりん』が首を傾げる中、

ユウナギは『衛兵監視塔』のドアノブに手をかけた・・・。


すると突然『ドカーン』と轟音とともに、

少し開けたドアから土煙りが入って来た・・・。


「行くぜ・・・みんな・・・」


「はいっ!」


「キューッ!」


気合いの入った声にユウナギは薄く口角を上げると、

土煙りが舞う戦場へと足を踏み入れたのだった・・・。

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